241Dead『彼女達は動き始める』
瑛代はいつもの通り授業を受けつつ町のあちこちに仕掛けたカメラや音声をチェックしていた。
授業は聞いており何を答えればいいかなども事前に把握し、抜かりなく動いていた。
そんな中
「!?」
と瑛代の表情は明らかに変わった。
それを見て京は何かを察した。
京自身声を掛けることなく、瑛代の行動を見守った。
そして、瑛代は持っていた機器をすぐにカバンにしまった。
いつもとは違う行動であった。
授業中にトイレに行く事は普段から無い、自分の体調も女の子特有のあれもかなり周到に用意している為、不測の事態に陥ることは決してなかった。
しかし、その日に限って瑛代は慌てた様子でいた。
それでも、京は瑛代を観察して自分も外に出る為の用意を一応しておく。
すると瑛代は
「すっすみません……ちょっと……そのなんて言えばいいですか……女の子のアレが」
と気まずそうに言った。
それを聞いて教師は二ヤツきながら
「おお? どうした希咲? 何かあったのか? ちゃんと答えて見ろ」
と厭らしく言った。
それを聞いて京は
「先生セクハラです! ちょっと止めてください! 瑛代ちゃん! 先生に言う必要ないよ! 私が一緒に行くから」
と言って瑛代に近づき背中に手を当てる。
それを聞いて教師は
「おいおいおい! 俺の授業中に外に出るのか? そんなこと許されるはずが」
「待てよ! なんでお前がそんなこと決めるんだ! 緊急の時だってあるだろ! そういう時に融通の利かないこと言いやがって! 先生は俺等の命が危ない時も教室に縛り付けるつもりか!」
と一人の生徒がキレる。
それを聞いて教師は
「な! 何を大袈裟な! そんなことが早々起こるわけないだろ! それにそういう時が起きれば教師がちゃんと誘導するんだ! 馬鹿なこと言ってないで座っていろ!」
と教師は生徒に言い聞かせて瑛代に睨みながら言った。
それを聞いて瑛代は
「そうですかわかりました……ならこっちも先程の言葉を録音したので先生の教師生命を絶たせて貰います……それが私が授業を受け続ける条件です」
と言った。
それを聞いて教師は
「な! お前! いつの間に!」
と言うと瑛代は
「皆ああ! 聞いたよねえ! 先生が私にセクハラをしてその上調子の悪い生徒を縛り付けるところを! 現代の親やPTAが見たらどうなるでしょう! きっと私達が勝てます! 確かに調子に乗って教師の立場を危うくするのはとても悪い事なのでしょう! しかし今回は明らかに先生に非があります! そういう時は存分に生徒の権利を執行しましょう!」
と言った。
それを聞いて他の生徒は
「そうだそうだ!」
「何でもかんでも言う事を聞かせるのはどうかと思うぞ!」
「前に体の弱い多田君を縛り付けて今日までお休み取ってるじゃないですか!」
「横暴も大概にしろよ!」
と不評が飛ぶ。
それを聞いて教師は
「ク! わっ分かった! 今回は認める!」
と言って瑛代と京が教室を出る事が許可された。
瑛代は
「では……また」
と言って京と一緒に教室を出た。
「瑛代ちゃん……廊下に出たよ……あの発言もあの先生だからこそ言ったんでしょ? 私も一緒に出られるように……瑛代ちゃんならあの場で別の理由で教室から出れたろうし……」
と聞いた。
瑛代は
「……かなりまずい事になった……兄貴を助けたいけど……寧ろ兄貴の場合……この場合……私が助けようとすれば兄貴を救えない……私は兄貴と過ごした経験を信じる……だから私は私の経験を信じてこの状況を乗り切るよ……京……貴方はどうする? 私と一緒に来る? 他の皆にも聞くことだけど……どうする?」
と聞いた。
京は
「付いて行く……絶対に……裏切られても捨てられても……経験上……私の知っている経験上では貴方と一緒にいる方が幸せだから」
と言って手を繋いだ。
瑛代は
「そう……分かった」
と言って瑛代は京の手を引っ張り
「じゃすぐに行動する……ゾンビが町を攻めてる……こんなフィクション……なかなか無い……でも失うものが多くても私はこの状況を必ず乗り越えて自分の夢を……寧ろこの状況こそが叶える時だと私は信じている……だから」
と言って手に力を入れながら廊下を進み続ける。
そして、自分と一緒に来てくれる仲間を迎えに教室まで向かった。
奈々子は瑛代の姿が見えたのか教師の静止も聞かずに廊下に出た。
加奈の教室の近くに行き瑛代は手を使って音を鳴らす。
すると加奈は
「……先生……トイレ」
と言った。
それを聞いて教師は
「おいおい……お前なあ……まあいいさっさと行け」
とそのまま廊下に出た。
誠子の教室からすでに出ていた。
瑛代は
「さすがに知っていたのね」
と言った。
誠子は
「雲行きが怪しかったからね……私の好きな者も好きな物もすでに近くにある……だから行ける」
と言って瑛代に笑って言った。
「じゃあ……日本脱出するよ……まずは準備だね」
そして、皆はすぐに行動した。
全てを手に入れる。
自分達の夢を叶える為にと彼女達は考えて動き始めた。




