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中年天国1



 あれから一週間が経った。


「姫さま」

「なあに、ザバイカリエ?」

「恐れながら、少々申し上げても宜しいでしょうか」

「いいに決まってるじゃない」


 私はザバイカリエと寒々しい夜空の下を歩きながら、二人で同時にため息をついた。

 いつもは温和なザバイカリエが、とても珍しいことに不安そうな表情をあらわにしている。遥か後方をのろのろと歩く先輩方を心配そうに見やると、


「ベイリアル卿たち、本当に来られましたね」

「ええ、一生懸命足を動かしているわね、進んでないけど」

「大丈夫でしょうか」

「なんとも言えないわね」


 私はかなり泣きたい気持ちになっていた。ザバイカリエも似たような思いでいるのに違いなかった。


 ここはセンチュリアの繁華街近くの裏通り。

 今は新年会の一次会が終わって、二次会の会場に移動中なのだけど。


 え、二次会ってどこでやるのかって?


 考えたくもないけどね、実は『マロ食』なのよ、誰かさんのせいで!


 私は前方で能天気に手を振るアンウォーゼル捜査官を、視線で縛りあげるかのように睨みつけた。




 時間は約三十分前にさかのぼる。


 私と重臣たち、そしてアンウォーゼル捜査官は、センチュリア随一の高級レストラン(唯一と言ってもいい)『ラフデンフィア』で、それはそれはお上品に本日の厳選ロイヤルディナーをいただいていた。


 ひと通りコース料理をいただいた後、本日のデザートプレートとコーヒーを優雅に味わいながら、やれ今月のオーリカルクの採掘量はどうなるだの、やれ今年の冬は例年より雪が多いから道路の除雪が大変だの、(私以外は)知的な会話を楽しんでいたところに。


「ところで、二次会はどちらに行かれるのですか?」


 ワインをしこたま飲んで赤い顔をしたアンウォーゼル捜査官が、今回の新年会の幹事ザバイカリエにからんできた。


 そもそも、どうしてこの人が新年会に混じってるのか。

 私は納得いかないのだけど、重臣たちの総意で決定したらしいから、個人的な意見を挟むわけにもいかなくて見て見ぬふりをしていた。


 どうやらアンウォーゼル捜査官、私的には疑惑てんこ盛りなんだけど、重臣たちには好かれているらしかった。

 納得いかないわ、みんなどうしてあの人を信用できるのかしら……って話し始めると長くなるから、今はやめとくけど。


 それはさておき、これまで重臣たちと二次会なんてしたことがなかったし、最初はみんなも耳を貸さなかったのだけど、


「いいところを知っているんですよー」


 アンウォーゼル捜査官の誘うような声に、ホルバンの大きなひげがぴくっと動いた。


「料理も種類が豊富で、肉魚から野菜、海草までなんでも揃っています。

 ボリューミーかつ肉汁ジューシーなものあり、あっさり淡白、健康志向のものありで、よりどりみどりです!」


 胃の弱りつつあるベイリアルの長い眉毛が上がった。

 肉好きのカルガートが目をを見開いた。


「酒も安くてうまい! 珍しい北方地域の氷酒も置いてあるんですよ!」


 お酒に眼のないトゥリンクス将軍が、アンウォーゼル捜査官に右手の親指を立ててみせた。


 ここでザバイカリエが、


「ですがアンウォーゼル捜査官、そこは姫さまが以前勤めておられたところですよね……」


 と割って入ったのだけど、


「そう! それだけに給仕の女性たちのレベルが高い! 私の捜査によれば平均年齢十八歳、全員花の独身です!」


 アンウォーゼル捜査官はとどめの一撃とでもいうように、拳を天井に向けて力説した。


 すると。


「行こうか、アンウォーゼル捜査官」


 私の予想では、一番あの手の食堂に行かなさそうなホルバンが、残っていたコーヒーを一気に飲み干すと、大きな身体をゆすって元気に立ち上がった。


 それを見た他の重臣たちも、ホルバンに勇気みたいなものをもらったみたいに、慌しくデザートとコーヒーを胃に流し込むと、そそくさと席を立って出口に向かい始めた。


「何をやっとるザバイカリエ。早く会計を済まさぬか」


 トゥリンクス将軍が呆然としているザバイカリエに声をかけた。他の重臣たちも、私たちを促すように見つめ……


 あのときの、みんなの顔のこう……なんというか、わざとらしいというか、白々しいというか、すっとぼけたというか。

 どこからどう見ても、明らかに女の子目当てなのに、


『いや、わしたちは若いおなごに興味はないぞ。姫さまのかつての勤務先を拝見しに行くだけじゃ。は、早く行かねば、席が埋まってしまうかもしれぬからのう』


 みたいな顔してたのは、当分忘れないと思う。


 いつもなら『マロ食』みたいなとこ絶対行かない面子なのに、今日に限ってどうしてこんなに行くモード全開なのよ。

 酔っ払ってるにしてもおかしいし、アンウォーゼル捜査官に気を遣っているとも思えない、この……おっさん根性丸出しのしらっこい態度ったら。


 もしかしてこれが重臣たちの本性なのかしら、と思うと少なからずショックだったけど、こんなくだらないことで言い争うのもいやじゃない?


 だから、何かあったら全部アンウォーゼル捜査官の責任にすることにして、私とザバイカリエは腹をくくって二次会について行くことにした。


「食堂とは一体どんなところですかのう、実はわしは、行くのが始めてなんですじゃ」

「そうですなあ、きっと若い者の熱気に溢れ返っておるに違いありません。若い……女性は見ているだけで元気になりますからなあ」


 なんて浮かれ騒ぐ重臣たちの、完全に保護者として。


 おっさん……男って、年とか身分に関係なく、つくづく若い女の子が好きなのね。

 これから先、みんながどんなにまじめくさった顔して執務してても、あのしらっこい顔を思い出しちゃうだろうから、その度に吹き出すのをこらえなきゃいけないんだわ。


 ああやだやだ、男って、さっぱりわかんない!




 というわけで、私の足なら『ラフデンフィア』から『マロ食』まで十分くらいで着くところを、二倍近い時間をかけて無事全員到着すると、私たちは急遽用意してもらった大きな個室に通してもらった。

 (足元が怪しくなってきたおじさまたちが、凍った道に足を取られたりしなくて、ほんとよかった!)


 あんのじょう『マロ食』の給仕娘たちは困った顔をしたけど、そこは商売、おかみさんが、


「偉い人たちだからね、高いものたんまり注文してもらっておいで。ボーナスはずむよ!」


 と給仕娘たちを励ますと、まずは場慣れしているお局クラスの給仕娘たちが、意気揚々と高貴な珍客のもとへ注文を取りに向かった。


 一度個室に通されたものの落ち着かない私は、こっそり個室を抜け出していた。

 おかみさんに突然の訪問を謝ってから、そのまま『マロ食』のみんなの様子をうかがっていたのだけど、お局クラス筆頭のチェーリアが注文に向かわず残ったままだったので、不思議に思って声をかけた。


「チェーリア、あんたは行かないの?」

「ああ、そういえばこの前会ったときは、まだ決まってなかったからね」

「?」

「あたし、結婚することになったんだ。だからここも今月で辞めるの」



**



「えええええええ!?」


 突然のチェーリアの告白に、私は最高位の淑女らしからぬおたけびをあげた。


「そ、それって、前からつきあってる、あの先輩のこと!?」

「うん」


 はにかんで頷いたチェーリアは、とても幸せそうに見えた。

 その姿を見ていたら、こっちまで幸せになったような気分になって、私は人目も忘れてわめき散らした。


「きゃああああ、よかったじゃない、おめでとーーー!!

 あんた本当にあの人のこと好きだったもんね! で? いつ、どこで、なんて言われたの!?」


 うっすら頬を赤くして答えに困っているチェーリアを、にやにやして見守っていると厨房から、


「アレク、あんた相変わらず恋話好きだねえ! でもね、こっちは仕事中なんだから、ほどほどにしといてくれよ!」


 というおかみさんの声が聞こえてきて、私はようやくわれに帰った。


「ごめんなさーい!」


 おかみさんに謝ると、私はチェーリアにもう一回、今度は静かに、心を込めて『おめでとう、本当によかったね』と言った。

 チェーリアは瞳を少し潤ませながら黙って頷いた。


 いつも明るくて積極的なチェーリアなんだけど、恋愛の方面ではすっごくオクテで。

 学生の頃からずっとある先輩が好きだったんだけど、思いをなかなか打ち明けられなくて。

 私が女王になった頃は、その人とまだほとんど話したこともなかったの。

 この私が話すきっかけを作ってあげたりしてたくらいだから、男に関しては相当オクテなのよ。

 だから、王宮に上がるとき心配で心配で。さんざんアタックするように言い残していったっけ。


 そうしたら、一年後に会ったときには、もうおつきあいしてたのよね。

 玉砕覚悟でチェーリアから告白したらしいんだけど、なんて言って先輩の心をつかんだのかしら。照れちゃって教えてくれないのよね。


 あああ、告白するところ、木の陰からでもこっそり見たかったわ……


「ちょっとアレク、誰に向かってあたしのことぺらぺらしゃべってんのよ」

「へ? あらやだ、あたくし何か言ってまして? 気のせいよスタールイ夫人、オホホホホホホホ…」


 私がそう言うと、チェーリアはまた顔を赤くして黙り込んでしまった。


 スタールイっていうのは、先輩の苗字よ。結婚したら姓も変わるもんね。

 いいわねえ、なんかその人のものになるって感じで。私の名前なんて、これ以上変わりようがないからなあ。


 一市民の頃は、結婚するだけで自分の名前が変わるなんて、いろいろ不便だしいやだなあって思ってたけど、女王になって絶対に名前を変えられない立場になると、それが妙に寂しかったりもする。


 ……私、結婚できるのかな。


 やめやめ、そんな恐ろしくてしゃれにならないこと、考えちゃだめよ。


「それにしても、今月中でいなくなっちゃうなんて急な話ね。そんなに早く式を挙げるの? それとも先輩のお仕事の都合?」

「ううん、あたしの都合……っていっても、もちろんあたしだけのものじゃないけどね」


 顔をほころばせながら、うつむいたチェーリアを見たら、どうして式を早く挙げるのかすぐにわかってしまった。


「そっか、赤ちゃん、いるんだね」

「うん」


 愛する人と新しい生命に、惜しげもなく愛を注いでいること。

 そして、愛する人からもたくさんの愛をもらっていること……それがわかるような表情だった。

 新しい生命に心を躍らせながらも、心はとても穏やかで、人生の中で大切なものを確かに手にしているように思えた。


「おめでとう」


 何度言っても足りない言葉だった。今は親友の門出を心から祝いたかった。


「ありがとう……あ、式にはあんたも来てよ! 招待状もう書いたから、これ強制。

 来月の二十三日、必ず空けとくのよ、いいわね!

 あたしの式に、あたしの親友がいないなんてばかな話ないんだから」

「うん、ありがとう。必ず出席するから!」


 チェーリアの遠慮ない言葉が、かえってとても温かくて嬉しかった。

 親友の晴れ姿、絶対拝ませてもらわなくちゃ。


 来月の二十三日は、ユートレクトが『世界機構』に拘束される猶予期間の最終日だけど、こうなったら、ますますこの件を早くどうにかしなくちゃいけない。そして、笑ってチェーリアの結婚式に出席するのよ!


「親友の結婚式くらい、あの宰相さんでも休ませてくれるでしょ。そうだ、いいこと思いついた!」

「?」

「んっふっふっふっふ……」


 チェーリアはあからさまに何か企んでいる顔をして笑ってるけど、なに考えてるのかしら。


「な、なに考えてるの?」

「いいことよ、楽しみにしてなさい。ところであんた、あの人とは仲良くやってるの?」


 あの人って誰ですか。

 やっぱりあの人のことですか、あの……


 せっかく! 今の今までかなり忘れてたっていうのに、あんたって人は!


 いいわよねえ幸せ満開な人は。ええ、どうせ私なんてやることなすこと、ことごとく裏目なダークオーラ満載の人生送ってるわよ。

 こんなちんけな頭、どんなにひねったってねえ、わかんないのよ、あの人が考えてることなんて……


「ごめん、聞いちゃまずかった?」

「うん、すっごくまずかった。そりゃもう、かつてないくらいの、絶賛好評発売中売切ご免の最凶人生驀進中で……」


 一気に怪しい落ち込みモードに入った私を、チェーリアはわけのわからない顔つきで見てるけど。

 こんなくだんないことでも言ってなかったらねえ、立ち直れないのよ。


 あんなに落ち込んでいる人に、何一つ力になれなくて。

 力になりたいって思うことすら、悪いことのような気がして。

 それでも心配でたまらなくて。


 ユートレクトは今晩にはセンチュリアに戻ってるはずだった。

 明日、明後日は休日だからいいとして、月曜日にはまた王宮で顔を合わせなきゃいけないのに、まだ心の整理がついていなかった。

 何もなかったことにしようとは決めているのだけど、今回は、本当にそれでいいの? と思う自分もいたりして……


 私はあの日の夜あったことをチェーリアに説明した。

 通達のこととか、アンウォーゼル捜査官のことは言えなかったけど。


 休憩中でもないのに、いつの間にかしゃべりこんでしまっていたけど、おかみさんは見て見ぬふりをしてくれているみたいだった。


「……なによそれ」


 私のまとまりのない話を聞き終えると、チェーリアは、


「あんた、なにのろけてるのよ」

「え?」

「ああ心配して損した!」


 そう言って、この前みたいに人差し指を私の顔の前ににずいっと伸ばしてきた。


「大丈夫、あんたも彼もあと少しよ。二人とも素直じゃないのね。どちらかが心を全開にしなくちゃ、前には進めないわよ」

「……」


 気持ちは嬉しかったけど、私が心を……思いを開くなんて、そんなことできないのに。


 チェーリアには、女王としての私の思いは打ち明けていなかった。

 これだけは私が一人で考えなくちゃいけない問題だと思っている。

 身分とか、立場とか、何も考えなくていいなら、本当にどれだけ楽なんだろう。


「今度彼が落ち込んだときには、黙って抱きしめてあげなさいよ」

「なっ……できるわけないでしょ、そんなこと!」


 私は純粋に恥ずかしくなって、小さな叫び声をあげた。


 抱きしめても、拒まれるならまだいい、二人だけの問題で済む。

 でも、そんなことないと思うけど、もし拒まれなかったら。

 同じ気持ちを返してくれたら、今の私は、きっとそのまま受け入れてしまう。そんないらないところの自信だけは強かった。それだけは許しちゃいけないことなのに。


 ここで、重臣たちに注文を取りに行っていた後輩たちが、微妙な顔つきで戻ってきた。

 不毛な考えが途切れたことに、少し救われたような気持ちになった。


 私とチェーリアは、気品ある(はずの)紳士たちがどんな無理難題をふっかけてきたのか、彼女たちに聞くことにした。


「いえ、触られたとかはないんですけど……」

「あたしたちー、ある意味勘違いされてたっぽいよねー」

「うん、確かにそのくらい年違う人もいる感じだもんね」

「なんかー、おじいちゃんを相手にしてるって感じ? でしたあ!」


 戻ってきたチェーリアの妹分、アーニャとフランシスカが、かわいらしく報告するのを受けて、私はそろそろ席に戻る覚悟を決めた。


 それにしても、おじいちゃんって……

 一体みんな、この娘たちにどんな接し方したのかしら。


 見たくないけど、主君としては臣下の行動を見守らなくちゃいけないわよね。痴漢行為をしてないのが唯一の救いだわ。その分別はさすがにあるみたいでよかった。


「あー、すっごく素敵なおじさまもいましたけどー! アレクさん、あの人アレクさんの愛人だったりしませんよねー?」


 おじさまって誰のことよ。該当者が多すぎて、誰のことかわかりゃしないったら。

 おまけに愛人て。

 もっと他に言い方ないわけ? 恋人とか彼氏とかせめて許婚とか……どれも本当は困るんだけど。


 まったく今どきの娘は……なんて年寄りくさいことを考えながら、私は自他共に認めるおっさんキラーのフランシスカに答えた。


「間違いなく全員違うけど、どのおじさまのこと?」

「えっとねー、なんとかカリエさん!」


 はいはいザバイカリエね。


「ザバイカリエは王宮でも競争率高いから、頑張ってね」

「そうなんですかあ? いやん、フランシスカ、絶対頑張りまーす!」


 ザバイカリエの好みは知らないけど、フランシスカのアタックはかなり激しい。

 この小動物的かつ小悪魔の微笑みに、どれだけのおっさんが貢がされたことか。

 頑張って耐えて(もしくは落ちて)ね、ザバイカリエ。


「フランシスカ、あんたホントにおじさん好きねー! もっと若い人もいたじゃない!

 あたしだったら、銀髪のアンなんとかさんがいいわー。この前も来てくれましたよね、あの人?」

「ええ一緒に来たわ、アンウォーゼルさんね。あの人結構遊んでそうだから、気をつけなさいよ」

「はーい! そうだアレクさん、この前来てくれたもう一人の……えっと、黒髪で目つきの怖そうな人」


 全然気をつけなさそうな返事を一つすると、しっかり者のアーニャは、突如余計な人物を話に出してきた。

 ここの給仕娘たちは、どうして私の心をこうもえぐり倒してくれるのかしら。


「ユートレクトのこと?」

「名前は知りませんけど、その人来てますよ」


 はい?


「あたしがさっき、メニューを深夜バージョンに変えに表に出たら、ちょうどその人に会ったんです。それで皆さんの個室にお通ししときました」


 なんですと?

 それじゃあ、奴は今あの個室にいるっていうの?


「どうしたんですかアレクさん、頭抱えて?」


 どうしてあんたが『マロ食』に来るのよ、しかも今日!


 今頃絶対、酔いどれた他の重臣たちを恐ろしく冷めた目で眺めながら、一人不機嫌に黙々と飲み食べしてるに違いないわ。

 奴から会費は徴収してないから、後で二次会分だけでも取り立てなくちゃ。


 でもって、私が戻ったらこう言うに違いないのよ。


『おまえがいながら、なんだこのていたらくは。

 おまえの臣下であること自体が恥だというのに、その主君たるもの自ら、センチュリア閣僚の名を辱め、貶めてどうするのだ』


 私が悪いんじゃないのに。悪いのは全部アンウォーゼル捜査官なのに。


「じゃあね、チェーリア、みんな。

 私、これから戦場に戻るわ。お幸せに……」


 心配そうに私を見守るチェーリアたちをよそに、私はふらふらと自分のいるべき場所……重臣たちのいる個室へ歩き始めた。


「え、あたし、あの人お通しちゃだめだったんですか?」

「それは大丈夫よ、アレクが勝手に落ち込んでるだけだから」

「あー、フランシスカ、あの怖そうな人は落とせないかもー」


 などというかしましい声たちを背景音にして。

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