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聖剣を宿す者

「つまりお前はとんでもなくすごい聖剣で、なんの因果か偶然俺の股間に封印されちまって、俺がこの異世界オルタナに来た事でその封印の一部が解けて今に至るって事か?」


 俺は辟易しながら自分の股間がこんなになってしまった経緯を簡単に纏めた。


『概ね正解だ相棒。だが俺が相棒の股間を依り代として選んだのは偶然じゃなくて必然だぜ? なんせ俺くらいの聖剣になると相棒みたいな立派すぎる依り代じゃないと釣り合わないんでな。長さは勿論、太さ、硬さ、どれをとっても相棒の股間は世界一だぜ俺が保証する』

「全然嬉しくねぇよ! てかなんで股間前提⁉ もっと色々あるだろうが!」

『何言ってんだ相棒。股間は益荒男たる男の、いや漢の象徴だろ。むしろ股間以外ありえなくないか?』

「ありえるよ! 何当たり前みたいな雰囲気出してんの⁉ 一番最低の場所だろうがああ!」


 聖剣様に世界一の股間認定されちまった俺はさっきからこんな感じでこいつとやり取りをしている。

 どうやらこの聖剣には俺の常識は通用しないらしい……。


「はぁ……何かもうどうでもいいや……。んで? すごい聖剣のお前をどう使えばいいんだ? 流石に柄じゃどうしようもないと思うんだが、もしかしてさらにカッチカッチにしてそれで殴るとかじゃなよな?」

『相棒の発想も中々酷いな……。聖剣なんだぜ? そんなもん抜くに決まってんだろ?』

「抜く⁉ えっ? それ変な意味の抜くじゃなくて物理的な抜く⁉ なにそのシュールな絵⁉」


 聖剣になるだけじゃ足りずに取り外し可能になっちまったのか俺の股間……。


「いやでも逆に考えれば、つまりそれなら俺も聖剣であるお前を使えるって事だよな? ははっ何だ、一応まだ主人公成分の欠片くらいは残ってるじゃないか安心したわマジ」

『いや? 聖剣を振れるのは『聖剣使いブレイブイクシード』を持った勇者だけだぜ相棒』

「何でだああああ⁉ どうして俺の股間なのに持ち主の俺が使えないんだよ⁉ マジでくそげー過ぎだろ。なんならオブザイヤーにも余裕で輝くレベルだぞ⁉」


 どうやらこの異世界はデフォルトでヘルモードの難易度らしい。それもバグが多すぎてクリアが絶望的なタイプの理不尽な奴である。

 とそこで俺はもっと絶望的な事に気が付いてしまった。


「ん? ちょっと待て。ということは……」

『このままだと相棒はあのイケメンに股間を使われる事になるな』

「あああああああああああああ!」


 俺の魂の叫び(本日二度目)は異世界を飛び越えて俺達の元の世界の池袋の乙女ロードまで響き渡った。

 女子との接触を避けたり興奮を抑えたりしている俺だが、普通に女の子が好きであり性欲も人並み以上にあると自負している為間違ってもそっちの趣味はない。


『相棒……今時BLNGなんて売れる気あんのかよ?』

「誰目線⁉ プロデューサーなのお前? 聖剣Pなの?」

『はははっ相棒をいじるのは楽しいな。まぁ安心しろ8割冗談だ。思い出せ勇者はもう1人いるだろ?』

「⁉」


 そこで俺はハッと王様の言葉を思い出す。

 性格に若干難があるらしく魔王軍の四天王に敗北してしまった『女』の勇者がこの世界にはいる。

 異世界の女勇者と言うからにはあのイブリーナ姫に負けず劣らずの美少女なんだろうか? そしてそんな女勇者に俺の股間の聖剣を使われる? さっき触って確認したがこんなナリになっても感覚は生きていた。つまりは美少女に俺の…………。


「……ゴクリ」

『理解したみたいだな。流石は俺の相棒だぜ』

「ばっ、ばっかお前違うからな? 俺はべっ、別にそんな事どうでも……」


 口では一応否定の言葉を紡ぐが、俺の頭や体には少し前に自分の異世界での活躍を夢想している時と同等以上のそれでいて別種の歓喜の熱が渦巻いちまってる。

 くっそ俺って奴は……何て単純な男なんだ。

 しかし聖剣はそんな俺にすべてお見通しと言わんばかりに全てを包むこむように言った。

 

『いいんだ分かってるさ相棒。なんたって俺は相棒の一部なんだから。無粋な言葉はいらねぇよ』

「聖剣……お前……」

『俺の名前はアルファブレード。アルって呼んでくれ相棒。これからよろしく頼むぜ』

「ああ! これからよろしくなアル!」


 そして心の深い所にある何か(変態的コミュニティー)で通じ合った俺達はがっちりと握手をかわす。

 こうして俺、馬並天馬と、聖剣アルファブレードのアルは互いを相棒として認め合ったのだった。

 まぁはたから見れば俺が意味の分からない事を呟きながら自分のアホみたいにでかい金色のナニを握り締めている様にしか見えない点へのツッコミは無しの方向で頼みたい……


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