表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/8

おや? 股間の様子が……

 キタアアってなった時~キタアアってなった時~。

 自分の小説がブクマされたり評価されたりした時~。

 キタアアってなった時~キタアアってなった時~。

 ソシャゲで一発でUR引いた時~。

 キタアアってなった時~キタアアってなった時~。


「クラスメイトがチートを持つ中、自分が何も持ってなくて主人公ポジが確定した時いいい!」

「いや~めでたいでござる! ささっ天馬殿グイッといってくだされ。あと古いでござる」

「おおさんきゅうさんきゅう。ゴクゴク……プハ~。うんめえええ! なんつーのかな~アレだなアレ、世界って実は俺のために回ってたりするんだな。いや俺もさ? もしかしたらな~って思ってたんだよね~」

「とんでもない増長ぶりでござるな⁉ うざいを通り越してもはや可愛く感じるでござるよ」


 俺と清純は宮廷料理人が腕によりをかけて作ったと言われる異世界の料理や酒(この世界では15歳が成人とされ飲酒ができるらしい)をテンションをこれでもかと上げながら飲み食いしている。

 今日は勇者召喚をした歴史的にも大きな意味のある日らしく、これからのエルレイン王国の未来を祝い王様が宴を開いたのだ。

 その宴は沢山の貴族や有力者達が集められ、500人と言うとんでもない規模の物になってしまっている。もはや宴というより祭りに近い賑わいだな。

 そしてその宴の主役は勿論俺達異世界から来た勇者御一行であり、クラスメイト達の周りにはすごい人だかりが出来ている。聖守君なんかはほかの生徒の3倍は人が集まっており、しかもその半分以上が女性と言うモテっぷりである。

 そして俺達はと言うと。


「というか納得いかないでござる! 何故小生達には誰も来ないのでござるか⁉」

「お前の見た目が原因だと……まぁあれだろ? 俺達みたいな雑魚はお呼びじゃないって事じゃないか?」

「本当に分かってないでござるよ! 聖剣が使えるとか、無限の魔力とかそんなテンプレの中のテンプレ能力なんかより小生の『人形創造フィギアクリエイト』の方が使い方次第では絶対とんでもない事になるはずでござるのに!」


 俺達の周りには閑古鳥が鳴いた様に誰も来ず、それどころか見向きもされていない。なんなら時々侮蔑のこもった視線をおくられるまである。

 俺の無能力が露呈したあの鑑定イベントの後、謁見の間は騒ぎとなった。なにせとんでもない力を持つ勇者達の中にポツンと歴史上類を見ないハズレが混じっていたのだから当然だろう。イブリーナ姫は自分に責任を感じ、王様は酷く落胆し、クラスメイトは唖然としていた。

 聖守君がサラッとフォローしてくなかったらもしかしたら戦力外の俺など王宮からつまみだされていたかもしれない。本当にあのイケメンは何から何まで完璧である。

 まぁしかし追い出されはしなかったが人の口に戸は立てられぬとはよく言ったもので、俺が何の力もない事は瞬く間に王宮中に知れ渡り、将来性のある勇者と知り合いになりたいと思う貴族達にはこんな扱いをされていると言うわけだ。

 ちなみに清純は全てのステタースが最低値のCランクであり、ユニークスキルも人形を生み出す事のできる『人形創造フィギアクリエイト』と言うなんとも微妙すぎる能力だったので、見た目も相まってこの状況になっている。

 

「まぁどうせ今だけの事だしいいじゃないか。てかこういう扱いをされるのもお約束だし喜ばないとだろ? 惜しいのは俺達のクラスにイジメがない事だな。これで能力がらみでイジメられれば完璧だったのに」

「イジメ希望と言うのもそれもどうなのでござるか? まぁ聖守殿のおかげでそういうものから無縁なのは小生達の様な者からすれば救いであったでござるが」

「わりぃんだけど達をつけないでくんない? お前と同じとかないわ……」

「ちょ⁉ 何でそこで裏切るのでござるか⁉」


 俺はそんなこんなで清純との馬鹿話に花を咲かせていると、飲みすぎたのか尿意を感じたのでトイレに向かうことにした。

 アホみたいに広い王宮のトイレへの道すがら考える事は勿論自分の能力の事である。


「あ~食った飲んだ~。やっぱ異世界って最高だわ。てか何で俺の能力は水晶に鑑定されなかったんだ? まさかガチの無能力ってわけじゃないだろうから、一番濃厚なのは神器にすら鑑定不可の能力ってとこか?それだとかなり激熱な展開で嬉しいんだが、俺にもどんな能力かまだ分からないってのはちょっと親切じゃないよな。まぁ時間なんて腐るほどあるだろうしピンチになったら目覚めるタイプの能力かもしれないからそんな考えなくていいか。あ~明日からマジ楽しみだぜ!」


 自分が最強能力を持っていると疑っていない俺は、さらにテンションを上げスキップしながら目的地に向かう。途中で花畑や貴族達から変な目で見られた気がするがそんな事はどうでもいい。

 そして大理石でできた豪華すぎるトイレに到着し、個室に入りドアを閉めズボンを下げパンツをおろす。

 

「……ん?」


 数秒の間俺の中で時が止まる。

 そして時が動き出すとさっとパンツを上げ、トイレに座り考える人のポーズをとり、ひたすらに思考をクルクルと回し始める。


「あっれおかしいな~! 見間違いかな? 見間違いだよな? もしそうじゃなかったら酔ってるんだわきっと。俺って酒弱い体質だったか~。これは大学デビューしたら100%飲み会でやらかす奴だわ絶対。というわけで大学デビューは無しの方向でいこう。うん。…………ふぅ、本当に見間違いだよな?」


 俺は異常にもっこりとしたボクサーパンツに目をやる。異常にもっこりしているのは別に通常運転だから気にしてないのだが、問題はその中身である。

 意を決した俺は恐る恐る再びパンツを下げた。

 そして


「ファ⁉ おいいいいいいい! おまっ、これっ、ちょ、おま!」


 そこにはあるはずのモノがなかった。

 いやそれじゃ適切じゃないな。

 正確にはあるはずのモノが別の何かに入れ替わっていただ。


「えっ⁉ これ何だよ⁉ 俺の16年間連れ添った相棒どこ行った⁉ てかおまっ、これ剣のつか? なんで俺の股間が剣の柄になってんの? whyほわい? 」


 俺の相棒がいた場所には何故か眩い黄金の光を放つ剣の柄がかわりに居座っていやがった。

 しかもなんか色々と宝玉っぽいのがデコレーションされており、神聖な雰囲気すら感じてしまう。


「これまさか聖剣的なアレか? ていうかえ? 俺の能力ってガチでマジで何もなくて、代わりにこの股間が聖剣になる(笑)的なやつ⁉ ちょ、ないないない! マジでそれはないって! 大体股間が聖剣ってなんだよ⁉ 小学校低学年の考える事だぞこんなん! ワットアファ〇ク!」


 さっきまで薔薇色の異世界生活を想像していたご機嫌な俺は影も形も無く、唯々この頭の悪すぎる現状にツッコミを叫び続ける機械になっている。俺の魂の叫びはおそらく異世界中に慟哭したんじゃなかろうか?

 そして俺は半ばヤケクソになりながら股間に手を伸ばす。


「カッチカッチじゃねぇかああああああ! 何これ? え? フニャフニャモードなのに表面カッチカッチなんだけど? しかもこれガチで剣だったとしても刀身なくね? 普通逆じゃね? こんなん無理じゃん。完全に無能確定じゃねぇかよ……」


 カッチカッチでフニャフニャな剣の柄にになってしまった股間を見て俺は脱力する。

 

「もうおしまいだ……せっかく念願の異世界に来て主人公っぽいポジションになったって言うのにこんなのあんまりだろ……こんな状況から成り上がるなんてどんなご都合主義でも流石に無理だ……死にたい」



『諦めるのはまだ早いぜ相棒!』



 はははは幻聴まで聞こえて来やがった。

 なんだよ相棒って? 無印なのか? 俺も好きだったよあの頃。

 はぁ……もうマジで色々ダメなのかもしれない。


『相棒まだ俺のバトルフェイズは終わってないぜ?』

「ひょ? って違うわあああ! 何だこれ? 声が頭に直接……えっお前まさか?」

『その通り、今俺は直接相棒の頭に話しかけてる股間の聖剣だ。正確にはこの聖剣に宿る意志。つまりは相棒、俺は相棒で相棒は俺。俺はもう一人の相棒ってわけさ』


 完全に絶望して色彩を失いかけていた俺の眼にかすかだが力が宿り、そしてなけなしの力で今の状況を分析する。

 俺の股間はどうやら聖剣らしく、この声の主はもう一人の俺らしい。そして俺は、この俺を相棒とか呼ぶもう一人の俺(股間の聖剣)と大冒険でもするのであろう。

 言っていい?


「もうやだああああああ! おうちかえりたいいいいい!」


 この日から『チ〇コがでかすぎる』と言う俺の唯一の長所は『チ〇コが聖剣』と言う長所に書き換えられた。

長かったお約束のチュートリアルは終了だぜ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ