表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者: まぐろん
9/10

影の頭

「おーい。君。おーい。おーい」

誰かの声が聞こえる。聞いたことがない声だ。声が低い。男だろうか。目を開けると、男の人の顔が見えた。男の顔は、頬は餅を焼いた時のように膨らみ、その頬に押されて、目が細くなっていた。髪を眉毛あたりで、切り揃えている。

面白い顔だな。

「あ、起きたかい。君。ここがどこだかわかるかい?」

わかるわけないじゃないか。

「わからないです」

頭がひどく痛く、頭を押さえながら、体を起こす。

「頭が痛いのかい?」

「はい。すこし」

「とりあえず、僕の町まで行こう」

餅男に右腕を持ち上げられ、仕方なく立ち上がる。

「歩ける?」

「歩くくらいなら」

立ち上がり、周りを見るとそこは森だった。

「これ君の刀かい?」

そう言って、餅男は火産霊を渡してきた。

「はい、そうです。ありがとうございます」

『ふぅー。ここ、どこだ?』

どこだろうね。わかんないや。

「すいません。ここはどこですか?」

「わからないのかい?記憶喪失かな??」

そうじゃないんだけどな…

「えーと。ここは“水”の国だよ」

「そうですか。わかりました」

そう答えつつ、頭の中に地図を展開する。

適当だな。

『あぁ、この辺か』

知ってるの?

『まぁ、知ってなくもない』

じゃあ、色々教えてね。

「僕の町に来るかい?記憶喪失なら、ちゃんとした医者に診てもらったほうがいいんじゃないかな?」

違うんだけどな。

「それじゃ。お言葉に甘えて」

「じゃ、ついてきて」

そう言って、餅男はのしのしと歩き出した。森の中だと迷いやすいので、しっかり餅男の後をついていく。

『こいつ信用していいのか?』

う、うん。たぶん。大丈夫。

『不安要素がたっぷりだな』

しばらくして、森が開けた。道らしいところにでると、次はその道の上を歩き始めた。

「あと、どのくらいで着きますか?」

「んんーと、あとちょっとかな?」

ちょっとってどのくらいだよ。

『同感だ』

またしばらく歩いた頃に、左右にある木々の中から何かの気配を感じた。

狼とかかな?

『いや、人間だ』

人間?こんなところに?

『大方、盗賊か何かだろう』

今の僕でもやれるかな?

『わからんが、あのデブを守りながらだったら厳しいな』

できれば逃げたいな。

「君。そういえば名前は?」

こんな時に。

「柊 燈火です」

「燈火くんか。じゃあ、燈火くん。これから、少し荒れるけど、頑張ってね。燈火くんならいけると思うけど」

この人。気づいてるのか!?

『驚きだな』

急に餅男が立ち止まると、さっと餅男の前に影が3つほど現れた。

「俺らは盗賊団、水の妖精‼︎ここを通りたけりゃ、金目の物を全部置いて行け‼︎」

ドスが効いた声で、真ん中の影が、盗賊感溢れるセリフを叫ぶ。

水の妖精って、、、可愛いな。

『そうだな』

「すいませーん。僕たち、金目の物なんて持ってないんですけど、どうしたらいいですか?」

これは事実だ。島まで肩にかけていた風呂敷はどこかに消えたし、餅男も手ぶらにしか見えない。何を渡せというのだろう。

あ、刀があった。

「刀があるだろう‼︎それを渡せ‼︎羽織と袴は勘弁してやる‼︎」

しょうがないなぁ。

『おいっ‼︎渡すつもりか??』

どうしようかなぁ?

『あいつらの手に渡ったら、どこの誰だかわからない人間に売られるんだぞ?お前には人間の心がないのか‼︎』

そう言われてもなぁ。

まぁ渡さないけど。

『ありがとう‼︎』

さっきから、餅男が全く喋ってない。

こいつ、役立たずか?

と思った瞬間、餅男の姿が消えた。影たちも戸惑っている。

『焦るな。影の後ろだ』

影の後ろを見ると、そこにはドッシリと餅男が立っていた。餅男はガシッと影の頭を掴むと、ぐりっと捻って自分の顔を見させた。すると、影が

「うぁぁあ‼︎」

と情けない声を上げる。

「俺が誰だかわかるか?」

と餅男

「は、はい。餅米様でいらっしゃいます…よね?」

餅米??

まんまじゃないか‼︎

『まんまだな』

餅米が、影の頭から手を離すと、影は尻餅をついた。目以外は黒い布で覆われているが、目だけでもその驚きようがわかった。

恐る恐る聞いてみる。

「何者ですか?」

すると、餅米は笑って

「水の妖精だよ」

かわいい。

「盗賊?」

「うん。盗賊団、水の妖精の団長。餅米だ」

『燈火、どういうことだ?理解しきれないんだが』

この餅男が襲ってきた盗賊のお頭ってことじゃないの?

『…燈火、どういうことだ?理解しきれないんだが』

もういい、自分で考えてよ。

「よし、行こうか。燈火くん。オイコラァ、行くぞてめえら‼︎」

いつの間に出てきたのか、道には10人ほどの影が正座していた。その影は、餅米の声にビクッと体を震えさせたが、サッと立ち上がって、餅米のあとに続いた。ボクもそれに続いた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ