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  作者: まぐろん
10/10

盗賊のアジト

「つきましたよ。ここが僕のアジトです」

盗賊集団に襲われた後、その盗賊のリーダーである餅男に盗賊のアジトに案内された。

襲われた地点から、30分ほど歩いた所だ。

流石は盗賊のアジトで、滝の裏や洞穴の中を通り抜けてやっと辿り着いた。

「すごく広いですね。どのくらいの人がいるんですか?」

「24人ですね。僕も含めて」

この広い土地に24人⁉︎

『ずるいな』

すごくと言えるだけあって、アジトは広かった。貿易で大成功した街くらいの大きさだった。きちんと道が整備されているわけではなかったが、しっかりと踏み固められたいい道だった。

「これだけの土地に、24人は少なくないですか?」

「そう思うよね。もともとは103人居たんだよ」

それくらいいてもおかしくないな。

「だけど、敵対する盗賊団に殺されてね。24人まで減っちゃったんだよ」

敵対する盗賊団だってさ。火の妖精とかかな?

『水の悪魔とかだと思うぞ』

「そんなに強いんですか?その盗賊団は」

「強いよ。少数だけどね。10人くらいだったかな?」

「盗賊団の名前とかあるんですか?」

「あぁ、あるよ。盗賊団・斬」

「ザン?それだけですか?」

「うん。それだけだよ」

微妙だよ。

『そうか?かっこいいと思うぞ』

頭おかしいんじゃないの?

『あぁ?』

なんでもないよ。


その後、餅おと、じゃなくて、餅米さんはボクが泊まる部屋に案内してくれた。

最後まで医者に診てもらわなくてもいいか、と心配されたが、丁重に断った。

「ふぅー。疲れた」

そう言いながら、仰向けに部屋の床に倒れる。

しばらくの間、寝泊まりすることになるであろうこの部屋は、床は畳になっていて、窓は1つというとても質素な造りとなっている。

『燈火、あんまり気を抜くなよ。助けてくれたと言っても盗賊だ。なんで、助けてくれたかもわからん。しかもお前は、疲労が抜けきってねぇ。下手したら刺されるぞ』

わかってるよそれぐらい。

でもまぁ、今日のところは寝るよ。

おやすみ。

『おい。待て、待てってば、お…』

火産霊の声が遠のいて……そうやってボクは眠りに落ちていった。


「ふわぁぁあ」

朝起きて、正確には昼起きて部屋を出ると、部屋の前には1人の少女が座っていた。あぐらをかいて目をつぶっている。

年は15歳くらいで、それほど長くない黒髪を後ろで結んでいる。座っているので、身長はわからないがボクより低いくらいだろう。

『誰だこいつ?』

ボクにもさっぱり。

起こしてみる?

『早くしろ』

少女の両肩を掴んで、大きく揺らす。

「おーい。おーい君。おーい」

なんだか、前にもこんなことあった気がする。

『気のせいだろ』

しばらく続けると、突如少女の目が見開かれた。ばっと立ち上がって、ボクの足先から頭の先までを舐めるように見る。見る。見る。見る。見る。見る。

『しつこい』

ボクが?

『どっちもだ』

わかったよ。

「き、君だれ?」

「…………」

「聞いてる?」

「え?わたし?」

「君以外に誰がいるの?」

そう聞くと、少女は不思議そうに辺りを見ると、

「いないみたいですね」

当たり前のことを呟いた。

「で、君だれ?」

「わたしは夜」

「夜?それだけ?」

「はい。それだけですが、だめですか?」

「だめではないけど、なんというか…」

『微妙』

うん。正解。

「いい名前だね」

取り敢えず褒める。

「よく言われます」

ほとんどお世辞だろうな。

『そうでもないかもしれないぞ』

なんで?

『なんとなく』

あてにならないね。

「何か用があるの?」

「あ、はい。わたしのお姉ちゃんを助けて欲しいんです」

「お姉ちゃん?拉致でもされたの?」

「拉致ではないんですけど、とらわれの身というか、操り人形というか…」

「とにかく助けて欲しいと」

「はい」

ここにいるってことは、盗賊団の団員。生き残ってるってことは、かなりの手練れかな。で、餅米さんじゃなくてボクを頼ってきたところを見ると、姉の存在はバレると困る。

「とにかく中で話をしよう」


要約するとこうだ。

夜の姉は斬の一員。しかし斬の団員に水の妖精の団員とのつながり、つまり、夜と姉妹であるということがばれ、処刑されそうになっているらしい。なぜそのことを夜が知っているのか、と聞くと、姉妹ですから、と笑顔で答えられた。火産霊は意味がはわからないと嘆いていた。

「それでボクたちはどうすればいいの?」

「ボクたち?お仲間がいるのですか?」

あ、しまった。

『何やってんだバカ』

何がバカだ。お前がいるせいだろ‼︎

『なんで俺のせいだ』

「あ、ごめんごめん。前に仲間が居たんだよ。もういなくなったけどね」

「そうだったんですか」

なんとか信じてもらえたみたいだった。

「話がそれた。それでボクはどうすればいいの?」

「さっき言った通りです。姉を救出してください」

『わかりやすい、しかしだ』

「それをしたとして、ボクに利益はあるの?」

これでいい?

『大方はあってるよ』

夜は少し困った顔をして、

「わたしはあなたを助けることができる」

と、答えた。その目はあまりにまっすぐで、嘘をついているようには見えない。

「なにから?」

「この盗賊団から」

「この盗賊団はボクの敵?」

「少なくとも味方ではないと思います」

信じるかい?

『好きにしろ』

じゃあ信じようかな。

「ボクは盗賊に襲われるわけかな?」

「おそらく」

「それから君が守ってくれると」

「はい。わたしまぁまぁ強いですよ」

「じゃ、よろしく頼みます」

だが、しかしだ。わざわざなんの利益も生まぬであろうこのボクを、アジトに連れてきたからには、それ相応の理由があるだろう。なかったとしたら、それはそれは良い人たちだったというだけの話。でも、今の情報によるとボクを襲うらしい。それでなんの得がある?

『考えたらわかるだろ。あいつらはお前を仲間にしたいんだよ。人数が減ったって言ってただろ?』

あーなるほどね。

『だから俺はこの女のことは信用できないが。お前が信じたんならしょうがねーな』

先に言えよ。

「では、契約成立ということで 」

夜は微笑んだ。

「斬のアジトは突き止めてあります。案内するので、3日以内には襲撃をかけて、お姉ちゃんを救出してください」

ついてきてください、そう言って立ち上がった夜についていく。

水の妖精のアジトから抜け出し、ひたすら山道を歩く。

もう、帰りたい。

質素な部屋が恋しくなるほど歩いた頃。

夜が伏せた。ボクもそれにならう。

目の前は崖になっていた。

「あれを見てください」

指を差されて見てみると、森の中に少し変色した部分があった。森の中でその部分だけ木がないのである。

『さっきのより小さいな』

うん。

「あそこが斬のアジト?」

「そうです」

「あそこに殴り込めばいいと」

「はい」

「じゃあ行ってくるね」

「はい。え⁉︎ちょっと、なに言って」

立ち上がって、崖から飛び降りる。

このまま着地してはさすがにまずいので火産霊を抜き放ち、岩肌にぶっさす。

ガリガリガリッと音を立てながら、岩肌が切れていく。

『酷使しすぎだボケ‼︎』

これくらい切れるでしょ?

神様の技より、硬くないよ。

無事に着地を済ませると、アジトがあった方へ走る。無数に生えている木を当たらないように避けて進む。

「前方に木の柵発見‼︎排除します‼︎」

『勝手にどうぞ』

木の柵を切り倒して中に入る。

広場のようなところに出ると、あからさまに処刑されそうな人がいた。

丸太に磔にされているのだ。たぶん女。あれが、夜の姉だろう。

近寄って話しかけてみる。

「ごめんください。夜さんのお姉さんでいらっしゃいますか?」

たぶん夜の姉である女は戸惑いつつも、

「あぁそうだ」

と答えた。

「では、お助けいたしまーす」

縄をほどいて、解放してやる。

では、逃げようか。

しかし、夜の姉が見当たらない。どこだろう。あ、いた。

『あ、いた。じゃねーだろ。お前おそわれてんぞ?』

嘘?

『ほんと』

気づけば、ボクはこかされて夜の姉に馬乗りになられていた。首元にはクナイのようなものがあてられている。ひんやりと冷たい。

どうしたらいい?

『動くな』

それだけ?

『それだけ』

「お前、斬の一味のものか?」

迫力のある声で聞かれる。

「いいえ。ちがいます」

そうか。俺を処刑しに来た人だと思っているんだな。誤解を解かねば。

「あなたを助けに来たんです」

「ふっ。自分から自白するとはな。お前が斬の一員だということはよくわかった」

なにその解釈‼︎

『なるほど騙されたわけか』

え?ボクが?

『そうだ』

「親分、捕まえました‼︎」

夜の姉(仮)がどこへともなく叫ぶ。すると2、3人ほどの気配がボクに近づいてくる。ジャリッジャリッと砂を踏み鳴らす音が止んだ時、ボクの顔を誰かが見下げていた。逆光でよく見えないが、ボクを凝視している。

「よくやった」

そう言って、誰かは視線を夜の姉(仮)に移した。誰かの顔が太陽の光にあたり、さっきまでは影でしかなかった部分に肌が見え始める。ようやく顔の全体像がつかめた時、ボクは思わず叫んだ。

「餅米さん⁉︎」

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