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9話

 今日はついにコミット様とササカマボコさんがデートをする日です。

 どんな結果になるのか、私も楽しみです。

 


『と、いう訳で私たちもコミット様に尾行していきますわよ』

『姉上、良いのですか? 貴重な外出の機会をコミット様のために使うだなんて。僕も人の事言えませんが』

『良いんですわ。その方が楽しそうですし。……あ、ササカマボコさんが来たみたいですわね』


「ごめんなさいコミット王子! ちょっとお待たせしちゃいましたでしょうか!?」

「ひ、ひ……」

「ひ?」

「……ヒャッハーっ! 僕ササカマボコ! ササカマボコちゃんが来てくれてとっても嬉しいササ~!!!」


『よしよし、ちゃんとアドバイス通りにつかみはばっちりですわね』

『いや、全然ばっちりじゃないと思いますよ!? 明らかにハイテンションすぎるでしょう!?』


「……は、はぁ。そうですか」


『ほらー! 完全にササカマボコさんドン引きしちゃってるじゃないですかー! 姉上、何アドバイスしてるんですかっ!』

『おかしいですわね……。前世ではデートでこれをやらない男はゴミ以下だって、友達皆が言っていたんですが……』

『前世ってなんですか!? あとその友達、全員嘘吐きすぎでしょうっ!?』


「今日はいい天気で○○○日和ササ~! 今日はササカマボコちゃんと○○○して○○したいサッサ~!!」

「……」


『よしよし、ちゃんと下ネタも用意してますわね』

『王子に何言わせてんのあんた!? 王子がどんどん穢れた生き物になってますよ!?』

『あら、おかしいですわね。前世では出会い頭に下ネタを言うのが一大ブームだって雑誌に書いてましたのに……』

『だから前世ってなんですか!? あとそんな雑誌明らかにどうかしてますよっ!』


「あの、コミット王子。よく分からないですけど、落ち着いてください。普通にしててください。普通に」

「……死にたい」


『ほら~、無理させ過ぎちゃってコミット王子がミイラみたいにげっそりした表情になっちゃったじゃないですか! 姉上のせいですよ!』

『大丈夫ですわ。いまどきの男子はミイラっぽい見た目の方がいいと、前世のテレビで言ってましたわ』

『前世ってよく分からないですけど、少なくとも姉上の前世はろくでもない物だと思いますよ……!?』


「さ、まずどこから行きますか?」

「あ、あぁ。じゃあまずはかまぼこ工場へ行こうか……」

「やったー! かまぼこ工場って人気で、予約取らないと入れないんですよねー」

「え、そうなの!? かまぼこどこまで好きなのこの国!?」


『あ、なんとか普通の流れになりましたね』

『これも全部私のおかげですわね』

『いやどこにも姉上のアドバイスが役に立った要素ありませんでしたよ!?』



「見てください王子! かまぼこの赤ちゃんが生まれてますよ!」

「え、赤ちゃん!? かまぼこって成長するの!?」


『……いい雰囲気ですわね』

『……そうですか?』



「昼食はやっぱりかまぼこ専門店ですよねー。ささかまぼこ、美味しいですね!」

「……どっちがお前でどっちが食べ物なのか見分けがつかない……」


『うんうん、いい感じ』

『そうでしょうか……』



「やっぱ博物館ってすごいですねー。あ、見てください、かまぼこの進化系図が展示してありますよー」

「かまぼこって進化してきたの!?」

「そうですよー。ほら、ここで猿と分岐したんです」

「え、かまぼこって元々猿だったの!? 新事実過ぎるんですけど!?」


『最高のボケとツッコミですわ』

『え、いい感じってお笑い面での評価!?』



「早く来てください王子ー! じゃないとエビフライ定食・クリティカル・パレードが始まっちゃいますよー!」

「何そのパレード!? 名前だけじゃ何が行進するのかわからないんですけど!?」


『エビフライ定食・クリティカル・パレード……通称【エビクリティカルパレード~ドリームライス~】はデートの定番ですわね。スラー王国の悪役令嬢・ファンタジック・パレードと並んで世界3大パレードと言われてますわ』

『その通称、なんか聞き覚えがあるんですが……。あともう一つはどこのパレードなんですか』



「良い眺めですねー! やっぱ観覧車は納豆観覧車が一番ですね!」

「……なんかねばねばする」


『そろそろムードも高まってきましたわね』

『気になったんですが、僕たちいったいどこから彼らを観察してるんですか……?』



「あー、楽しかったです! 王子、私を外に誘ってくれてありがとうございました!」

「う、うむ……」


『さ、いよいよとどめの一言ですわよ……』

『姉上、そこはきちんとコミット様に正しい知識教えてますよね……?』


「さ、ササカマボコくん!」

「はい? 何ですかコミット王子」

「実は……ずっと君に言おうと思っていたことがあるんだ!」

「言おうとしていた……? 一体なんですか?」

「……わ、私は君が好きだ! 結婚を前提に付き合ってほしい!」


『よっし! ばっちり完璧ですわね!』

『よかった、ここはまともだ……』


「王子……」

「り、理由は分からないが一目見た時からきゅんと来た! どうか、引き受けてくれないだろうか……」

「……」

「……」

「……ごめんなさいっ!」


「え」

『え』

『え』


「私、さつま揚げくんの事が好きなんです! ですから王子のお願い、聞けません……」


『姉上、さつま揚げさんって誰ですか?』

『私達の同級生ですわ。ゲーム時代では幼馴染キャラでしたわね』

『げ、ゲーム時代?』

『抜かりましたわ。ゲーム世界とは言えど、ヒロインがメイン攻略対象に夢中とは限らない、と言う事も視野に入れるべきでした』


「今日はお誘い、ありがとうございました。でも私、初めてそういうお誘いしてもらったからそういう意図だと知らなくて……」

「……」

「そ、そういう訳ですから今日の事はなかった事にしてくださいませんか? ごめんなさい!」

 そう言って、ササカマボコさんは学園へと帰っていきました。

 


 その場にはコミット様が一人ポツンと取り残されました。

 

「……すじかまぼこ。あなたは先に学園に帰ってなさい」

「え? 姉上はどうするんです?」

「あの振られた王子様を回収して帰りますわ。じゃあ、あとはよろしく」

 私はすじかまぼこにそう言い残すと、テクテクと王子の元へと向かいました。

次回で一旦完結です。

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