第一話 生まれ落ちる命
目を覆ったのは輝かしいほどの光だった、
天国とは、ここまで明るいのかと思ったほどだ。
しかし、それとは別に自分が赤ん坊のように泣く声と女性が抱きかかえる優しい温かみを感じた。
そうして目を開けると、そこには見知らぬ綺麗な銀髪の女性が俺を抱きかかえていたのだ。
そこで感じたのは、この体がかなり小さいことと声が上手く出せないことだ。
彼女は目を細め大事そうにこちらを見ている。
仲間にするかどうか聞かれれば恐らく仲間にするを確実に押すといってもいいほど優しい微笑みだった。
「どうだ?この子は元気か?」
「ええ、元気よ。とってもこうやってしっかり泣いてるでしょ?」
「あぁ、良かった、、、本当に良かった」
渋い黒髪で片目が無い男性が安堵の声を出す、俺はどうやら生まれ変わってここにいるようだ。
こういった状況になれば、普通は動揺のひとつもしそうだけれど
銀髪女性の優しさに包まれているせいか、不安も動揺もまったく起きない。
恐らくだが、この黒髪で片目が無い男性と銀髪女性との子供になったらしい。
することもないので、その優しさを堪能しながらその日はずっと泣き続けた。
ただ、ひとつ気になったのが親父のほうがどう考えても普通ではないことだけだ
そして、産まれてから数日が経ちこの世界に生まれ落ちてようやくわかった事が色々あった。
まず自分の名前だ。
ギュスターヴというらしい。
両親からはギュスくんとか、ギュスと呼ばれている。
ニックネーム、可愛いぜ!ニックネーム
そして両親の名前。
銀髪で綺麗な母親の名は、アニエス
渋い黒髪で片目が無い父親の名は、ダリウス
苗字はバシュロというらしい。
フルネームは、ギュスターヴ=バシュロということか
最後のひとつは、
この世界の言葉だ。
聞き取る分には、ほとんどが日本語に近いものだった。
ただ、単語なんかは全然分からないものもあったけど
ゴドリスってなんだよ、木って言ってよ、、、
ただ問題もあった。読む分には全然分からないのだ。
意味不明な象形文字のようななんだか分からない記号が羅列してあるだけだ。
これは覚えないとだめなようだ。
もう少し、体が成長したら字は頑張って覚えるとしよう。
この3つのことが分かったことで、ひとつ確実に言えることは
ここは、地球ではないということだけだ。
聞く分には日本語で書く時は象形文字っていうのは恐らく地球のどこを探してもないだろう。
そしてこの家についても、少しだけ分かってきた。
とにかくこの家にはお金が無いらしい。
普段のご飯を見てもそうだ。
硬そうなパンに、薄味のスープを二人で食べている。
俺には、おいしいミルクを作ってくれたり母親謹製だったりするのだけど。
二人の仕事のほうは、
父が必死に、畑仕事をしているようだがうまくいかないようだ。
まぁ、元々畑仕事なんてやってなさそうだもんね、、、お金貸したりして稼いでたのかな?
母も服なんかを内職で作ってるようだけど、あまり売れ行きが良くないみたいだ。
なぜ、あんなに優しい母さんの服が売れないんだ、おかしい、、、
しかし、なんとか暮らしている状態だし俺が成長したら二人には恩返ししないとな。
そういう考え事をしていると、一日一日がすぐに過ぎていき1年と半年が過ぎた。