高校入学の心得
今、俺は春の陽気に包まれて心地の良い風にあたっている。ついでながらに桜のトンネルもついている。まぁ、俗に言う入学シーズンってやつだろう。それで俺、奈垣雅樹はその入学シーズンの主人公である。端的に言おう。今日は俺が通うことになった魔術師育成機関附属高等学校、通称魔術高校の入学式である。それでさっきから俺の横をピョコピョコしてる、どっかのファーストフード店のオマケみたいな奴がいる。こいつは、西方奈津。まぁ、なんだ、いわゆる阿呆だな。うん、阿呆だ。「さっきからまー君の思考、駄々漏れだよ?って酷くない!?私ただの阿呆じゃないし!まー君の幼馴染だし!」
「あー、腐れ縁ってやつな。腐れ縁な、腐れ縁。」「三回もいわれたし!!」ついでにいうと世界でもトップクラスの面倒臭がりの俺がこの高校に入学することになったのはこの阿呆のせいだ。奈津は俺が知らないうちにこの高校の俺の入学申込みを勝手にすませやがった。普通の高校と比べて入試が12月にあり、1月には合格者発表されるので、ついでながらに受けたら受かってしまった。ちきしょうめ!。まぁ、実際のところこの高校は魔術師育成ってだけあってかなりの魔術能力がないと入れない特殊な高校だ。俺が入れたのは奇跡というものだな。うん。「まー君は自覚が足りないんだよ。まー君の魔術能力の高さは日本でもトップクラスなんだよ?それなのに特待生クラスが家柄とかがあって面倒くさいってだけで入試を適当にやるなんて。」「あー分かった分かった。分かったからもうやめてください。奈津さん、お願いします。」「もう!高校生なんだからちゃんとしてよ?一人暮らしなんだしね?」あんたは俺の母さんか!!っと面倒くさいツッコミを心の中だけでいれつつ、なんだかんだしていると高校の正門についた。
「こんにちは。一年生の方ですか?クラスを教えて下さい。入学会場まで案内します。」この人はきっと生徒会か風紀委員会の人だろう。「あっはい。俺は一般クラスです。」「あっ、私は特待生クラスです!」あっ、そういえば奈津は特待生クラス、しかもかなり上位入学だっっけ。こいつこう見えて意外とやるなー。「特待生クラスは会場の一階です。一般クラスは二階です。」「あっ、はーい分かりましたー」俺はとっとと返事すると、とっとと会場に向かった。とにかく座りたかったんだ!
この魔術師育成機関附属高等学校は物凄い実力主義な学校である。一般クラスと特待生クラスではもはや別物。まぁ、一般クラスからは超有名な魔術師は排出されたりはしないが、ここまで徹底した実力主義でやんなくてもなぁ、と俺が思うほどである。そしてその影響は入学式でさえも巻き込むのである。特待生クラスは一階の良い席、一般クラスは二階の席。魔術能力っていうのはかなり遺伝的なものであり、努力次第でどうにかできるものではない。それなのに魔術能力に長けている者は魔術能力が無いものを馬鹿にする。この高校で言うのなら特待生クラスが一般クラスの人間を馬鹿にするということだ。まぁ、俺は全然気にしない派の人間だがな!うん、俺心広い!
「あのーすいません。隣って空いていますか?」と、急に声をかけられ、俺はかなりキョドってしまった。うわ、俺ダサい…「あのー…?」「あっ、すいません。はい、空いていますよ。どうぞ。」「ありがとうございます。あのーお名前を伺ってもよろしいですか?」へぇー随分と礼儀の正しい人だ。あの阿呆もこのぐらいだったらいいのになー。いかん、あいつに期待しても無駄か。「あっ、俺は奈垣雅樹です。宜しくお願いします。」「私は里美紫乃です。こちらこそ宜しくお願いします。」俺は彼女が里美家の人であることに少し驚いた。里美家は武道の名家。日本古来の魔術である武道魔術の本家である。かなりの名家だが、何で一般クラス?「私、実は昔事故で魔術技術が落ちてしまったんです。だから里美家の落ちこぼれって呼ばれてます。」「俺も実はそんな感じです。俺、本当は奈垣家、中木家なんですよ。剣舞の総本家の。」「えっ!?あの中木家ですか?今は落ちぶれたが、江戸時代まで最強と言われたあの?」へー、この子よく知ってるな。中木家なんて知らない人のほうが普通なのに。まぁ、補足するなら中木家は忍者の家でもあるがな。しかも裏の仕事を担当する忍者の中でもさらに、裏の仕事を担当する裏忍術の家、知らなくて当然かな。「はい。家の決まりで偽の苗字を語っています。なのであまり言わないでもらえると嬉しいです。」「分かりました。隠密にしときます。」うーん、やっぱいいこだ。隠密っていうのが気になるけど、俺は心が広いから気にしない。「騒がしくなってきましたね。そろそろ入学式、始まるんでしょうかね?」
入学式。それは新入生の期待をのせた儀式。首席の人が新入生の挨拶をする。今年の首席は神上厳。世界最強の名家の一つ、神上家の長男だっけ。彼は確か特異魔術師、SPだ。この世界の魔術というのは、神話や童話、中世の黒魔術などを現代の数式に置き換えて、それを現実にするもの。そのためには魔術師の技術と魔術量が必要である。技術は努力で改善できるが、魔術量は遺伝的なものである。そのため、差別が生まれているのだが…
あと魔術を使うには魔術媒体と呼ばれるものが必要となる。それは魔術師の技術や魔術量を補うための道具。これの形状は様々で、杖や宝石、剣だったりする。それでさっきの話にもどるが、SPというのは、簡単に言うとその魔術媒体無しでも魔術を行使できる人のこと。細かく説明すると神話上の天使や賢者の石のような神の力の一部を体内に蓄えている人たちのこと。彼らはその力故に人間の力よりも遥かに強い力を使うことができる。SPになるかどうかは生まれるまで分からないが、やはりこれも魔術量が深く関係し、魔術量が少ない人は持てない力なのである。あー実力主義ぱねぇー。
入学式は特に何も無くあっけなく終わり、これから部活勧誘!一年生はどんな部活に入るかを迷っている最中。沢山の部員が欲しい部活たちによる熱い対決でもある部活勧誘。
そして俺はこの部活勧誘の期間が、まさか将来に起こる面倒くさいことの火種ここだとは気づきもしないで、とある部活に入部してしまう。あー俺の灰色の高校生活がー(泣)まぁ、そんなことは微塵も思ってないけどねw