謎の人影を目撃
今回、別人視点です。
~とある冒険者達の困惑~
デスゲームと化して、初日から俺達はパーティを組んでレベル上げをしてきた。
【ラビの平原】でレベルを5まで上げ、他のプレイヤー達が倒した後だったが、ボスも討伐した。
続いて【ウルフの森】に狩場を移し、レベル上げを行った。
平原と違って森は視界が悪く、連携を取るのが難しく、よく奇襲に遭っていた。
ウルフの素早い動きについていけず、最初の内は危ない目に何度もあった。
お互いがお互いを助け合い、何とか乗り切る事が出来ている。
パーティは、剣士が二人、僧侶が一人、魔法使いが一人の四人組だ。
ウルフ達が楽に倒せるようになり、レベルも15に上がったので、【ベアの森】に行ってみようと話し合いで決め、しっかり準備をしてから出発した。
【ベアの森】に出掛けたのはデスゲームと化して、五日目の事だ。
俺達のパーティは俗に言う攻略組で、レベルも高い方だと思っている。
街にいるプレイヤー達の平均レベルは10前後で、15になっている人は少ない。
皆、死なない様に慎重にレベル上げを行っている。勿論、俺達も慎重にしている。
一度、レベルが16あった剣士が街中で暴れ、低レベルの僧侶が犠牲になった事件があった。
街にいたレベル13の剣士達が集まり、レベル16の剣士を取り押さえてくれた。
剣士達は見ず知らずの集まりだったらしく、お互いに自己紹介をしていた。
この時集まった剣士達が、街の治安部隊となり、街を護ってくれている。
警邏と見張りとレベル上げを、交代で行っているらしい。
【ベアの森】に入って、結構な時間が経った。
かなり森の中を歩いているが、まだ一頭もベアと遭遇していない。
「何で、ベアと遭遇しないんだ?」
「そうよね。一頭くらい、遭遇してもいいはずなのに。」
「油断するなよ?何時跳びだしてくるか判らないからな。」
仲間と会話しながら、辺りを警戒しながら進んで行く。
どごんっと、何か重い物がぶつかった音が聞こえてきた。
俺達は顔を見合わせて頷き、音が聞こえた来た方に移動を始めた。
「止まれ!」
俺が声を掛けるまでもなく、仲間の足は止まっていた。
前方に大量のベアの背中が見え、何かを囲んでいる様だ。
「何で、こんな事になってるの?」
「あ!」
仲間の剣士が声を上げたので、僧侶が慌てて剣士の口を手で塞いだ。
「し、静かにしないと、気付かれます。」
口を抑えられた剣士は、こくこくと頷き手を放してもらった。
「それで?どうしたの?」
「あ、ああ。ベア達の中心の辺りに、人影が見えたような気がしたんだ。」
小声で魔法使いが聞き、剣士が答えた。
「え?」「ウソだろ?」「本当に?」
剣士の言葉を聞いて、それぞれ声を出しながらベアの方に視線を移した。
そして、俺達は驚愕の光景を目にした。
人影?がベアを振り回し始め、集まっていたベア達が次々と吹き飛ばされていく。
『………ジャイアントスイング』
俺達四人は、異口同音に呟いた。
集まっていたベア達が片付き、人影は持っていたベアを地面に叩きつけた。
パンパンと手を叩いてから、人影は俺達とは違う方向に歩いて行った。
「え?いやいやいやいや…え?」
「な、何だったんでしょう?!」
「滅茶苦茶じゃない…。」
剣士が首を振りながら言い、僧侶がおろおろして言い、魔法使いが頭を抱えている。
俺も信じられない光景を見て、困惑している。
あんなに簡単に、ベア達を討伐するプレイヤーなんて居たか?
居たら噂の一つくらい絶対に聞くはずなのに…。
レベル18のプレイヤーが、居ると言う噂は聞いた事があるが…。
俺達は顔を見合わせて頷いて、出口に向かって歩き出した。
俺達は疲れてるんだ。ずっと、レベル上げばかりしてたしな。
そう、疲れてるから幻覚なんて見てしまったんだ。
森を出た所で日が沈んでしまい、テントを張って一晩過ごした。
翌日、街に戻るだけなので、ゆっくりと俺達は歩いていた。
すると、俺達を物凄い勢いで追い抜いて何かが通って行った。
暫くの間、俺達はその場で固まって何かが通って行った方を見ていた。
本格的に休息が必要だな。
俺達が街に戻ると、血塗れの亡霊が現れたと噂されていた。
冒険者達は疲れてしまった。