彼は何者?
別人視点です。
~助けられた僧侶と仲間~
剣士二人に脅されて、怖くて恐くて泣きそうになっていた。
そんな所に現れた、黒い騎士服を着た剣士。
あっという間に、剣士二人を倒して追い払ってくれた。
彼が無表情になった時は、少し怖かったけど…。
思い切って彼を誘ってみると、二つ返事で頷いてくれた。
【ラビの平原】に初めて行く、と言っていたのには驚いた。
仲間の剣士と魔法使いは、待ち合わせの場所に既に集まっていた。
「カピス!遅いよ!」
紅く長い髪に紅い瞳の魔法使い、マゼンダが私に気付いて言った。
茶色い短い髪に青い瞳の剣士、オルクも私の方を見てきた。
二人の視線は直ぐに、私の後ろにいる彼に移り、二人は彼を睨んだ。
「カピスは私達の仲間よ!手を出すなら許さないわよ!」
マゼンダが杖を彼に向けながら言い、オルクも剣を抜けるように構えた。
あああ、違うのに、彼は私を助けてくれた人なのに!
「良い仲間だな。」
私が慌てていると、彼は笑顔で言った。
「大切な仲間だと言うのなら、僧侶を一人にさせる事は控えた方がいい。聞いた話だと、結構な人達が僧侶を欲しがっているらしいから。さっきも剣士二人に絡まれてたしね。俺が通り掛からなければ、最悪の場合、連れ去られていたかもな。しっかり護ってあげてね。剣士さんに魔法使いさん?」
『は、はい。』
彼の言葉を聞いて、二人は素直に返事をした。
「…ええと、カピスが絡まれて困ってる所を、アンタが助けてくれたのか?」
オルクが構えを解いて聞いた。
「え?はい。困っていたようなので。」
彼は頷きながら答え、オルクが私を見たので頷いた。
「すまない。カピスを助けてくれて、ありがとう。」
オルクが頭を下げながら言った。
「ごめんなさい!」
マゼンダも構えを解いて頭を下げて言った。
「いえ、気にしないで良いですよ。」
彼が笑顔で言うと、二人は頭を上げた。
「えと、それで、何で一緒に?」
オルクが首を傾げて聞いた。
「私が一緒に【ラビの平原】に行きませんか?って誘ったの。」
私が言うと、オルクは納得したのか頷いた。
「そうなのか。じゃあ、えと、今日は宜しく。俺はオルクだ。」
「私はマゼンダ、宜しくね。」
「あ、私は、カピスです。宜しくお願いします。」
私達が名乗ると、彼は少し困ったように頬をかいた。
「俺は、といれっとぺーぱーだ。今日は宜しく。」
私、オルク、マゼンダンの視線が彼の頭上に移動する。
「といれっとぺーぱー……ぶふぅっ」
マゼンダが後ろを向きながら噴きだし、肩が揺れているので笑っている様だ。
「…えと、何でそんな名前に?」
オルクが呆れながら聞いた。
「いや、ちょっと、姉と妹に悪戯されたみたいで。」
「……そうか。取りあえず、パーティ申請送るぞ。」
オルクが手を動かしながら言い、少し遅れて彼が手を動かした。
【といれっとぺーぱーさんが、パーティーに参加しました。】
目の前に文字が浮かび、パーティに彼が入った。
「じゃあ、行くか。マゼンダ、何時まで笑ってんだ。」
まだ笑っていたマゼンダに、オルクが文句を言った。
「あの、ごめんなさい。」
「ん?何が?」
私は隣にいる彼に謝るが、彼は首を傾げてしまった。
私達四人は、【ラビの平原】に移動した。
ラビは、大体腰くらいの大きさのウサギで、噛付きとジャンプ力を生かした体当たりと蹴りをしてくる。
「ファイア!」
マゼンダの放った炎がラビに当たり、ラビが怯む。
「おらっ」
怯んだ所にオルクが剣で切り付け、ラビが倒される。
私はちまちまと、持っている杖でラビを突いて倒している。
平原で大変な事は、見通しが良くてラビが集まりすぎる事だ。
何時もは囲まれて大変な事になるのですが……。
私の周りのラビが片付いたので、振り返って彼の方を見た。
彼は集まって来た大量のラビに囲まれている。
最初の時は焦って助けようとしたけれど……。
彼は襲い掛かってくるラビ達の攻撃を、全て避け続けている。
前は解るけど、後ろはどうやって避けてるんだろう?
「なあ、アイツ何者なんだ?」
私が首を傾げていると、隣に来たオルクが聞いてきた。
何者も何も、今日会ったばかりだし、知らないので首を横に振った。
あ、チラッと彼がこっちを見て来た。
「あ、次が来るわね。」
マゼンダが呟いて構え、私とオルクも武器を構えた。
彼がラビを三匹、こちらに蹴り飛ばしたので、私達は一匹ずつ相手をする。
夕方になるまで、彼はずっとラビ達の攻撃を避け続け、私達にラビを一匹ずつ渡してくれた。
帰る時になって初めて彼は剣を抜き、集まっていたラビ達を一気に片づけた。
「今日は有難う。避ける訓練が出来て、助かったよ。」
彼は笑顔でお礼を言って、パーティを解除して去って行った。
お礼を言うのは私達の方なのに…、彼のお蔭で安全にレベル上げが出来た。
「凄い人だったね。」
マゼンダが呟き、私とオルクが頷いた。
「今日は、ラッキーだったんだ。明日からまた大変だぞ?」
「うん。また、明日も頑張ろうね。」
「そうね。あ~、疲れたわ。宿に戻りましょう。」
私達は宿屋に向かって歩き始めた。




