血の契り
ある組織に伝えられている本には、こう書かれている。
「我が力を望む者は、我が望みを叶えよ」
別名、血の契りとして知られているその方法は、その文章に続いて、どうすべきなのかを書かれていた。
必要な物は、唐辛子、新鮮な卵二つ、清酒1.8リットル、そして自らの血。
あとは魔方陣と、依り代となる人が必要となるそうだ。
特に細かく書かれているのは、血と卵と依り代で、卵は産んでから24時間いないの有精卵、血は力を望む者が、最後に注ぎ入れること。
依り代は死体でもいいが、できれば死亡直後、悪くても24時間以内に死んだ者の限る。
さらに20から25の処女でなければならないとも書かれていた。
血についても、死者と同じ血液型であることがいいとある。
私は、それらの材料を集めることにした。
卵と唐辛子については、すぐに手に入った。
また魔方陣を書くスペースも、自室に確保することができた。
清酒はチョットずつ、父親が持っている酒瓶からもらうことで、どうにかなった。
一番の問題は死体だ。
墓場に行き、組織の者に手伝ってもらい、当然力の者を呼び出すことは黙っておいて、掘り出すことに成功した。
準備は整った。
魔方陣を書き上げて、月と太陽が交わる瞬間を待つ。
つまり、日食だ。
死んでから13時間後に日食が来ることになっているため、その間にすべてに準備を整える。
清酒で死体を清め、残ったものを私がすべてかぶる。
次に唐辛子の実を、へその上に置く。
卵は溶いて、コシもしっかりと切り、死体へとかける。
その体を魔方陣の中央に安置し、私はそのすぐ外で呪文を唱える。
徐々に窓の外が薄暗くなってきた。
日食が始まった。
私は呪文のスピードを早め、自分でも何を言っているかわからなくなってきた。
外から歓声が聞こえて来る。
皆既食が始まったのだ。
いよいよ、クライマックスを迎える。
急に明るくなったと思うと、電球がきれる瞬間のように、一瞬だけ光が弾けた。
死体がゆっくりと動き出していた。
「我が力を欲しているのは、お前か」
私はその声に聞き覚えがあった。
「私です」
「ならば血を与えよ。さすれば、我が力を与えよう」
最後の段階だ。
私は、右手人差し指に針をさし、死体に私の血をふりかける。
「おお、久しぶりや。ここまできた者は」
死体は立ち上がり、私を見た。
「契約は済んだ。お主に我が全ての力を与えよう。お主の体では耐えきれぬだろうから、こやつの体を使いて与えよう」
そう言って、その者は、私に跪いて告げた。
「我が主よ、主にすべてを委ねよう」
この時、ようやく私たちは契約を結んだ。