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チート部隊は魔法がなくても無双します  作者: ui
第一章 最恐の部隊

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指名手配

重い。湿っているというより、澱んでいる。

鼻腔の奥に、血と腐葉土を混ぜたような匂いが残る。

六人は足を止めず、間隔を保ったまま進んだ。


視界の先で、何かが動いた。


人影ではない。

四足。体躯は猪ほど。皮膚は岩のように硬く、口元から不揃いな牙が覗いている。


狙撃手が一瞬、隊長を見る。


小さく、頷いた。


音は一発だけだった。

乾いた破裂音と同時に、魔物の脚が崩れる。

倒れたところへ突入役が入り、動きを完全に止める。

血が噴き、土に染み込む。


間を置かず、二体目。三体目。


どれも連携らしい動きはない。ただ、数が多い。

ただ、彼らにとってそれは問題にならなかった。


「なんですかね、ここの動物。日本と違って異常に好戦的だ。」


衛星隊が周囲を見回しながら呟く。

隊長は答えない。だが視線は、一定の規則性に気づいていた。


「おい、金城。この動物を見たことがあるか?」

隊長が質問を投げかけた。


「ないですね。この地域に来てから新しく発見された動物、植物併せて29種類。地球のすべてを人間が把握しているとは思わないですけど、ここまでとは…。」


最後の一体を処理した後、六人は死骸から距離を取った。

金城が、牙と爪を一瞥する。


「この牙、通常のイノシシのものの3倍はするぜ。

今までのものを全部拾ったら結構な額になるな。」


「イノシシの牙がそんなにするのか。用途が見えてこないんだが。」


「いや普通は、アクセサリーで1000円前後ですよ。

でもこの大きさはすごいレアだ。そういうのを集めるもの好きがいるんですよ。」


なるほど、と全員が理解する。


その瞬間、甲高い鳴き声が全員の耳を貫いた。

黒い影が、木から木へと乗り移る。


「なんだ…あれ。チンパンジー?」

金城が興奮気味に声を上げる。


「はっ、あんなでけぇの見たことあるか?これで30種類目だ。」


金城は陣形を保ちながらチンパンジーの群れに突っ込んでいく。

他の五人は、よく短刀だけで戦闘をこなせるものだと感心しながら後援に回る。


金城は一瞬で一匹の背後を取り、首を切断した…

ように思われたが致命傷は追わせられていない。


「もうガタが来たのか。佐藤、お前はライフルあれば十分だろ。短刀よこせ。」

金城が、巨大チンパンジーの攻撃をかわしながら佐藤に近ずく。


「そうはいかない。持ってる48(よんぱち)でどうにかするんだな。」


「俺の刃が通らねぇんだぞ。48(よんぱち)でいけるわけねぇだろうが。」

彬は、普通は逆だろと思いながら淡々と猿を打ち落としていく。


「総員、いったん引くぞっ!。」

隊長の言葉と同時に6人がばらばらの方角に逃げだした。



しばらくして、隊長が巨大な水たまりの前に姿を現した。

そこには既にほかの5人が集結している。


「どうやったら奴らを攻略できますかね。他のルートをたどりますか?」


「それは論外だな。こういうのは相手に勝てるって思わせたらだめだ。

野営をしているときにまた襲ってくるぞ。」


「そもそも、脅威は奴らだけなのか?他の痕跡を見るに1週間以内に200人前後の人間がこの森に滞在している。道具を持つやつらはもっと危険だ。」


全員の意見を聞き終えた後、隊長が口を開いた。


「たしかに、我らはフィジカル面ではあのサルには及ばない。玉にも限界がある。しかし、ここは金城の案を採用する。そして人間の文化圏に入り込むぞ。まあそれも、ここが元居る世界ならの話だがな。」


「隊長、またそれですか。」

彬は、あきれたようにため息をつく。


「いや、あながち100%ノーとはいえねぇぜ、現に2m以上のサルに追われてここに逃げてきたんだからよぉ。」


「確かに、…そろそろですかね。」


森の影から石の塊が飛んでくる。

即座に六人は戦闘態勢に入った。


佐藤が投石が得意な奴の頭打ち落とし、金城が大きい奴の関節をつぶす。

後藤は彼らを援護しながら常に退路を確保する。

そして、隊長、彬、広瀬が弱体化したものの心臓を打ち抜く。


結果は火を見るより明らかだった。


戦争において30%の戦力を損耗されることは全滅と定義されるが、

サルの数は最初の3分の2以下になっていた。


彼らも勝てないと踏んだのかリーダー格の奴の掛け声に合わせて颯爽と森の中に消えていく。


「ここまで苦戦したのは、ソ連軍との戦闘以来ですかね。」

後藤がつぶやく。


「それより手ごわいさ。あん時奴らは完全に殲滅(せんめつ)状態だったからな。」


そのまま、六人は足跡をたどりながら森を歩いた。

そしてついに人間の文化圏と思われる場所に到着した。


人の往来。木造と石造りが混ざった建物。


――街だ。


高い柵を飛び越え、街道の方へ歩いていく。


しばらくして、隊員全員が驚愕した。

「これで、隊長の説が立証されるな。」


街にいるのはほとんど動物の頭をした人間?だったのだ。



全員があっけにとられている瞬間、四人の人間に足止めをされた。

正確には、人間の姿をした者たちだ。

耳や角の有無はまちまちだが、服装は揃っている。

革鎧に短槍、腰には縄。背中には大剣を背負っている者もいる。


統制された配置。

街の入口。

通行を遮る立ち位置。


治安維持部隊――そう判断するのに時間は要らなかった。


先頭の男が一歩前に出る。

胸当てに刻まれた紋章を指で叩き、次に六人を指差す。

早口の言葉が投げつけられた。


意味は分からない。

だが語調は、命令だった。


「……検問か」


広瀬が低く言う。

隊長は小さく頷き、両手を軽く上げた。敵意がないことを示す、最低限の動作。


治安兵の視線が、六人の装備に集まる。

黒い布。金属の留め具。形状の分からない道具。

武器として認識されているかどうかは分からないが、異様なのは確かだった。


その時、兵隊の一人が金城の胸ポケットを指さして騒ぎ立てた。


「なんで持ってきてんだよ。」

彬が苛立ちながら金城を睨みつける。

入っていたのは、巨大猿の爪だった。

「珍しかったもんで。」


兵隊長らしき男の口調がだんだんと荒々しくなっていく。


隊長は一歩、後ろへ下がった。

従う意思は示すが、距離は保つ。

その判断が――決定打になった。


治安兵の空気が変わる。

兵隊たちが殺気を漏らした瞬間、


「っ。」

金城が大きく踏み込み、兵隊長の懐に飛び込んだ。

手首を抑え、角度を変える。

関節が外れる鈍い音。悲鳴。


他の兵隊が戦闘態勢に入った瞬間、佐藤が治安兵の一人の肩を撃ち抜いた。

致命ではない。腕が使えなくなる角度だけを選んだ一発。


混乱が連鎖する。


槍が振るわれ、金城がそれを弾く。

彬が背後から一人を組み伏せ、首筋を圧迫する。

数秒で意識が落ちた。


「ɣenḓ-ɣenḓ-ʔra-ʔra-ẕḳ-ḽāṋuχ-」

(魔力探知が作動しない…?)


治安兵の一人が、震える声で呟く。


最後に残った治安兵が後退る。

合図と同時に、仲間を引きずりながら路地へ消えた。


数秒の沈黙。


「すまん。」

隊長が呟いた。


「俺には彬の睨みが一番効いたように見えましたけどね。」


「一番の原因はお前だろうが。」


 隊長は街の奥を一瞥し、短く言った。


「散る。表には出るな。合流地点は変えない」


六人は、何事もなかったかのように街に溶け込んだ。



その夜、掲示板に紙が貼られる。


rk-ʂāṭ-ɣen-ṭuχ-ṭuχ

(管理区域における不審者。)

ɣenḓ-ɣenḓ-ʔra-ʔra-ẕḳ-ḽāṋuχ

(魔力反応なし。)

rūnḓ-χrūnḓ-ḽāṋuχ-ẕḳ-ẕ

(治安部隊と衝突。)


-no-n

(罪状)


n-un-ʂēḓ-ʔḽēχ-ẕḳ

(国有財産侵害罪)


ḓ-ʂēḓ-ʔḽēχ-no-no-no-ɣaṭ-ɣa

(治安維持行為妨害罪)


ɣen-χrūnḓ-χrūnḓ-ḽ

(よって上記の者たちを)


uχ-ʔeṭaḽ-ẕḳ-ẕḳ-ɣaṭ-ɣaṭ-ṭuχ-ṭu

(国際指名手配犯とする。)



 

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