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第2話 モチベーション

本作は第48回小説推理新人賞に投稿した広義のミステリ作品です。

「何が『実働はお父さんに頼みたいねん』や。なんで父ちゃんが、お前の宿題やらなあかんねん。」

僕はアホらしくて、読みかけの小説を本棚から取り出して、ソファに寝そべった。

エアコンの冷気が直撃して、まとわりついた熱気を吹き飛ばす。

「ちょ、ちょっと待ってや、お父さん。」

康太が慌ててテキストを放り出してやってきた。

「僕、自由研究が好きやねん。いろんなことを教えてもらって、へーって思うのも好きやけど、自分でテーマを決めて、研究したり調べたりするのって、おもろいやんけ。」

康太の目は輝いていた。

僕は、自分が子供の頃に、こんなふうに学ぶことに対して面白みを感じたり、積極的に取り組むことがなかったことを思うと、康太の自由研究に協力してやりたいような気もする。

僕はごろついたまま、

「研究するテーマ、決まってんのか?」

そう言うと、康太はソファに飛び乗り、

「え、手伝ってくれんの?」

と、嬉しそうに僕を見た。

そんな目で見られたら、父親としても協力しないわけにはいかない。

「せや。手伝ったる。でもな、自分のためにも、お母さんのためにも、塾の勉強も頑張んねんで。それが父ちゃんが手伝う条件や。」

「ありがとう。ほんまおおきにやで。うわー、どうしよう、何を研究しよ? ちょっと待ってな。」

「何も今決めんでもええがな。ゆっくり考え。」

しかし、康太は僕の声など耳に届かない様子で、

「ねぇ、自由研究のテーマ、何がええやろか。」

と聞いてきた。

僕は本から栞を取り出し、片手で本を開いたまま康太に、

「父ちゃんが決めてええんか?」

と聞いた。

「まぁ参考意見を出すのは自由や。いい案やったら採用しないこともないで。」

「ごっつ偉そうやな。」

僕は呆れて言った。

「そら、自由研究のプロデューサーやからな。」

康太は、プロデューサーを巻き舌で格好良く言おうとしたが、下手すぎて、ろれつが回っていない酔っ払いみたいな言い方になった。

僕は苦笑して、

「せやな。定番なのは、月の観察や塩の結晶を作ったりとか、そんなもんか?」

僕の提案に、康太は明らかに不満そうな顔をした。

「そういうありきたりのじゃないねん。そんな『自由研究をしよう!』的なテキスト本にあるみたいな典型的な研究の、どこが面白いねん。」

「まぁ、そうやな。」

「そもそも、月を観察したり、塩の結晶を作ったりしたいのかっていう話やん。お父さんはどうか知らんけど、僕はしたないで。」

「いや、父ちゃんもしたないけどな。」

康太は自分の顎を右手でさすりながら思案し、

「やっぱり、自分がしたいことでないと、調べようとか研究しようっていう気にはならんやろ。モチ、モチ、モチ……何だっけ? 上がらないやつ。」

「モチモチパンか?」

僕が笑いながら言うと、康太も、

「なんでパンやねん。モチモチパンは最高にふわふわでおいしいけど、ちゃうがな。」

と笑いながら答えた。

「モチベーションか?」

「それそれ、それやがな。そのベーションが上がらんやんけ。」

言葉が見つかって嬉しそうな康太に、僕は冷静に、

「実働でやるのは父ちゃんやけどな。」

と言った。

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