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Re:note  作者: 惣山沙樹
5/15

05

 船は清崎島に到着した。

 船着き場は真新しく整備されており、無人島とはいえ人の手がしっかりと入っていることに安堵した。

 鬱蒼と草木が生い茂っている中、一本の開けた道があり、どうやらそこを進むらしい。

 見上げると、茶色い木造のコテージが見えた。そこまでは高低差がある。おそらくここからは坂道だ。

 荷下ろしを終え、船が去るのを見送ると、拓真さんが道の入り口まで歩いて行ったので、全員でついて行った。


「これが慰霊碑。小さくてよくわからないけどな」


 拓真さんがポンポンと叩いたのは、拓真さんの膝の辺りまでの高さしかない石碑だった。何やら文字が刻まれているがよく読めない。拓真さんに言われなければ確実に見落としていたと思えるくらい、その存在感は小さかった。美咲さんが咎めるように言った。


「もう、無闇に触らないでよ。祟られたらどうするの?」

「平気だって。美咲はこわがりすぎ」


 拓真さんを先頭に、道を歩いて行った。途中から傾斜がかかり、膝に負担がきた。楽器を持っているメンバーはさらにしんどいだろう。

 五分ほど歩いたところで、道が二股に別れた。一つはこのまま登り続ける道、もう一つは下り坂だ。拓真さんが足を止めて言った。


「あっちを下るとビーチな。さっ、もう少し登るとコテージだ」


 額に汗がにじみ、じりじりと肌が焦がされているのを感じた頃。コテージに到着した。


「わっ、すっごい綺麗!」


 叫んだのは亜里沙さんだった。確かに綺麗だ。数段の階段を登ると入れるウッドデッキがあり、そこはピカピカに磨かれていた。ウッドデッキの奥が出入り口だ。壁面は丸太。ログハウスというやつ。二階建てで、屋根は赤色に塗られていた。

 拓真さんが言った。

 

「一階がリビングとキッチンとダイニング。二階がそれぞれの部屋な。まずはリビングに行こうか」


 拓真さんが鍵を開けた。中は圧巻だった。入ってすぐ置かれてあったのは、大人数が座れる赤いソファとローテーブル。奥にアイランド式のキッチンも見えた。その奥はダイニングテーブル。どれも展示場かと思わされるくらい新しい。

 拓真さんが、ファスナーのついたトートバッグを取り出した。


「はい、ここでスマホ回収! 電源を切ってここに入れてくれ。緊急時は返却するし、中も見ないから信用してくれよ」


 八つのスマホがトートバッグの中に入った。拓真さんはしっかりとファスナーを閉めた。


「で、部屋割なんだが……俺と美咲は固定電話がある一番手前の部屋な。他は話し合って決めてくれ。どれもツインで、構造はほとんど同じだ」


 二階に上がり、まずは二年生から部屋を決めてもらった。部屋は六つ。奥から埋まり、俺と瑛太は拓真さんと美咲さんの隣の部屋になった。


「わぁっ!」


 部屋に入るなり、瑛太が手前のベッドにダイブした。


「そうにぃ、ふかふかー!」

「どれどれ……」


 俺は奥のベッドに腰をおろした。なるほど、マットレスの沈み具合がちょうどいい。ピンと張られていた白いシーツはとても清潔感があり、無人島なのに一流のホテルに来たかのような錯覚に陥った。

 ベッドを確かめたところで、次はクローゼットを開けた。二人分の荷物なら楽に入る大きさだ。備え付けのハンガーが四つほど。下段に小さな引き出しがあり、小物はここに置いておけそうだ。


「そうにぃ、もう自由時間だよね?」

「うん。夕食は六時。今は……三時過ぎだから、たっぷり時間があるよ」

「ボク、この島ぐるっと回りたい!」

「了解。虫よけスプレーしてから行こう」


 支度を整えてリビングにおりると、キッチンには美咲さんと蓮さんの姿があった。美咲さんが声をかけてきた。


「二人はどうするの? 海?」

「いえ、俺と瑛太は島を回ります。お二人は?」

「夕飯のカレーを作るね!」

「あっ……すみません、気が回らなくて」

「いいのいいの。わたし、料理好きだから」


 蓮さんも口を出した。


「オレも料理は好きだ。大人数だと作りがいがある。颯太くんたちは気にせずに行ってくるといい」

「はい! ところで、拓真さんは?」


 その問いには美咲さんが答えた。


「スタジオ行ってくるって。別棟にあるらしいの。そこで機材の調整だっけ、そういうのしたいからってもう行っちゃった」


 夕食後はサークルメンバーで音合わせの予定だ。その準備をしてくれるというわけだ。

 階段がきしむ音がして、俺はそちらを見上げたのだが……。


「綾音ちゃん!」


 白いパーカーを羽織っているが、前のファスナーは開かれていた。そこから覗くのは、大人っぽい黒一色のビキニだ!


「わたし、亜里沙さんと優花さんと一緒にビーチに行ってくるね!」

「う、うん! 俺は瑛太と島を巡るよ!」


 ああ、綺麗だ。黒の布地が肌の白さを際立てていた。普段は絶対に見ることのできないお腹、太もも……これじゃ下着とほぼ同じだというのに、水着だからというだけでさらけ出してしまえるなんて。合宿に来て良かった。

 亜里沙さんと優花さんも合流し、俺と瑛太はひとまずビーチまでは行ってみることにした。


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