第8話:前振りのうた
来てしまった、また来てしまったよ、王城の謁見の間。
もう二度とゴメンだと思ってたのに、来てしまった。
大丈夫。片膝ついて顔を伏せてるから大丈夫。
あの顔を見る必要なんてない。
あの玉座の主、なんだかな王国の王様の顔を。
「面をあげよ」
厳かに、重臣の声が響く。
(え、ヤダし。あの顔を見たくないし)
心の中では本音を言えても、現実は無常だ。
抵抗できるはずないんだよ。
だって国王様だよ?
一声で、首、なくなっちゃうよ?
さすがに、首を犠牲にしてまで抵抗するほどの事じゃないもんね。
仕方なく、顔をあげて、国王様を視界に捉える。
(ぐっ、いつ見てもキモイ。見た目の問題じゃないのよね。なんか、性格の悪さが表情に滲み出てるのよ。なんで、家臣の皆様はそんなに平気な顔してんの?)
「よくぞ来てくれた、勇者フリス。それと、無名の月の面々よ。此度は、世の頼み事があって、来てもらったのだ」
(いや、用でもなきゃ、あたしらなんか呼ばないでしょうよ。そんな前振りはどうでもいいから、さっさと帰らせてよ)
正直、この場に居るだけで、目の前の王の意地汚さが漂ってきて、マジで気分が悪くなる。
なぜ、みんなは平気なのか……。
「フリスよ、息災か。ムリなどしてはおらぬか?健康は大事であるゆえにな、フリスも十分に気をつけるのだぞ」
(いや、勇者にムリするなって、そりゃムリでしょ。何言ってくれちゃってんの、このオヤジ)
心の中でなら、なんでも言えるね。
間違っても、口から出さないように、気をつけなきゃね(笑)。
「最近、ほとんど城に遊びに来ぬではないか、世はつまらぬぞ、フリス」
「いやー、モンスター討伐が忙しくてねー。あ、そだ、今度王様も討伐に一緒に来ればいいじゃん?そしたら、一緒に遊べるよ」
(どひゃーっ!!フリスタメ口だよ!?ヤバくね?これは、首がどこかに行ってしまうかもしれん)
「む?そんなに仕事を入れるとは、けしからん。誰がそんなに仕事をさせておるのだ?」
「それはねー、そこのギルマスとリーダー?」
(おいーっ!!マジでこれいったぞ。さよならあたしの首ちゃん_| ̄|○ il||li)
走馬灯が、走馬灯が見える……。
「では、ギルドには世から伝えておこう。リーダーにはフリスから頼むと良い」
「うん、そうだね。ありがとう、王様。うちのリーダーは優しいから、きっと大丈夫だよ」
(ふぅー。死んだなと思ったわ)
なんとか、首はまだあたしの胴体と繋がっているらしい。
……よかった。
2人の会話が、ようやく途切れる頃なのか?
家臣の1人が咳払いを1つ。
「……、こほん」
「む?世もな、いろいろ大変なのだ。分かってくれるか、フリス?」
「うんっ、よく分かるよ。でも皆さんも王様の為に言ってくれてるんだから、みんなを大事にしないとね」
「そうだな。世も感謝を忘れぬようにすべきだな」
(え?なんか阿呆がキモを納得させてる?アイツ、実はめっちゃ大物ぢゃね?)
こうして、前振りだけで、今回は終焉なのだった。
(勘弁してくゎーさい……(白目))
ギルマスとのコントではなく、王様とのコントになりました(笑)
あ、それでもギルマスとの……、くどい(笑)
では、また次で