第6話:マシンガントークのうた
「いやー、さすが王国ナンバーワンの実力を持つと噂の、無名の月さんたちですね。俺たちが、あんなに苦労して、一体も倒せなかったのに、皆さんが来て瞬殺ですもんね」
そう、あたしたちのパーティの名前は、『無名の月』。いつか、無名のパーティから、有名になってやろう、それを目標に掲げた名だ。
その目標は、今やなんとか達成したと言ってもいいんじゃないかな?
あたしは、確信している。
「おい、あたしたちはナンバーワンなんかじゃないよ。勘違いしてるわよ」
「いえ、ギルドにいる冒険者連中の間じゃ、無名の月さんたちが、事実上トップだって噂になってますよ?」
「やめてよ。勇者カスのパーティがトップってことになってるんだから。そんな噂が立っちゃ、面倒なことになる未来しか見えないんだから」
そんな話、まったく知らなかった。
一体、どんな尾ひれがついて、広まってんだ。
とてつもなく大きな不安が襲ってくる。
「いや、そんなのはどうでもいいからさ、何があったかを教えてもらえるかな」
「そうでした。俺たちもあのダンジョンは何回も潜ってて、あんなのが出てきたのは、今回が初めてだったんですよ。潜ってすぐはなんともなかったんですけど、進んでいくうちにゴブリンが少なくなってきて.........。それで、なんか変だなってなって.........。そしたら急にヤツらが、あの超強いモンスター攻撃してきたんですよ。ホント、唐突に」
「攻撃を受けた時、なにか異変は感じなかったの?異常な魔力量を感じたとか」
「俺たちは駆け出しで、まどまだ全員が態度だけ大きい、弱小パーティですよ。そんなの気配だかなんだか知らないっすけど、俺たちの中でそんなの探知できるヤツは居ないですよ」
彼は、一拍おいて続ける。
「あー、でもそういや、あのモンスターが襲ってきたとき、誰だったか、『そこにいるのは誰だっ』とか、叫んでたな」
「そいつは、誰だ!?」
「いやー、声を思い出せないからなあ。みんなが目を覚ませば聞けると思うんだけどなあ.........」
「分かった。その報告はギルドにしてやってくれ。きっと喜ぶ」
あたしたちは、やっとマシンガントークから解放された。
だが、話を聞いていたのは間違いなく、『あたし一人だ』と、断言できる。
他のメンバー全員、5秒で熟睡してたからな。
あたしたちは、ホームに戻ることにした.........、つもりだったのだが、ギルド職員が治療院まであたしたちを呼びに来ていた。
(なんてこった。今度は、なにをやらされるんだろう?)
まったく、イヤな予感しかしない、呼び出しだったわけ。
裏でナンバーワンとウワサされてたんですね、無名の月
すっかり無名ではなくなってました
あなたも、有名になりたいですか?