第65話:ユレノの認識(絶望)のうた
ユレノの……
いや、ユレノだけの活躍で、アタシ達は精製が必要なく、加工するだけの、良質な鉄素材を、大量に手に入れることが出来た、出来てしまった。
思い出すだけで、恐ろしさが蘇ってくる。
(考えちゃ……、ダメよ。あたし……)
何度も。自分に言い聞かせる。
みな、同じなのか、言葉数が少なめだった。
そんな空気感を壊すため、あたしは敢えて声を出す。
「それで、次は、えーと、クリスタル……、なんだっけ?」
「お姉様。次は『クリスタルスネイクの湖』、ですの」
「そ、そうだったわね。それで、そこは遠いの?どんなところなのかしら?」
「とても、澄んだ湖だと、文献には残ってますの。わたくし、とても期待していますの。ああ、それはそれは、お美しいのでしょう……」
(あ、焦点が合わなくなってる。あっちの世界に行ってしまったようね。それより、もっと不穏な単語があったわよ。『クリスタルスネイク』?綺麗な名前と恐ろしい名称が相まってるわね。ヤバい雰囲気しかないわよ、これ)
あたし達は、ユレノが戻ってくるのを、静かに待つのでした。
ユレノの解説が再開する。
「その湖の主も、とても美しい大蛇だそうですの。全身がクリスタル。その美しさは、想像することも出来ませんの。ああ、早くその湖にたどり着きたいものですの」
1人だけ、目がハートになっていらっしゃる。
あたしは、澄みきった湖だけならともかく、そんな恐ろしげな大蛇には、会いに行きたくもないのだけど。
周囲に視線を回せば、全員の白い視線がユレノに集中している。
(みんな、考えることは同じみたいね)
あたしだけじゃなかったことに、一安心するも、イヤな予感は拭えない。
(またきっと、その大蛇に遭遇して、歓迎されず、攻撃される、いつものパターンよね)
再びあっちの世界に飛んだユレノは、まだ戻ってきていない。
仕方なく、ユレノを揺さぶり、現実世界に引き戻す。
「それで、その、クリスタルスネイク、とやらにも、なにか策はあるのかしら?」
「いえ?」
「は?」
「策なんて、なにもありませんの」
「……。それじゃ、どうやって先に進むのよ。蛇が何もせずに、あたし達を通らせてくれるわけ?」
「文献によると、確率は2分の1、だそうですの」
「2分の1って、どういうこと?」
「攻撃される確率ですの。2回に1回は、素通り出来るようですの」
「……。その確率でさ、あたし達は素通り出来るかしら?」
「それはー、多分無理ですの!お姉様達と同行してて、大切な事に気づきましたの!!それは、こういうイベントは、避けて通らない、というとても素晴らしい、特性ですのっ!!」
(………………。)
あたしの頭は真っ白に……、なっていった。
次のターゲットは、クリスタルスネイク
美しいと噂される主に、ご期待ください
では、また(っ'~')っ