第61話:崖の上のうた
本格的な活動を開始します
何も起きませんが、お楽しみください(っ'~')っ
上り坂を全員で登る。
月光草のお守り確保が優先。戦利品、素材回収は、その後よ。生きて帰れなければ、戦利品がいくらあっても、意味はないからね。
「それにしても、よくこんな坂に気づきますのね。流石、マリネ様ですの」
「普通に考えれば分かるでしょう。あのリザード達が、全部あんな崖を登れるわけないじゃない。こういう坂があるから、昇り降り出来てたのよ」
「ええっ、テイマーのわたくしより、よく理解されてますの。わたくし、自信なくしそうですの」
そんな会話を挟みながら、崖の上に立つあたし達。
そこには、確かに美しく優しい光を放っている、月光草の景色が広がっていた。
そして、その一角には、また違う美しさで淡く光る、主の亡骸が彫像を飾られているかのように、佇んでいる。
その両者による光景は、とても、この世のものとは思えない……。
暫く、誰も声を発することが、出来なかった。
「きれい……」
「きれいですの……」
カルラとユレノが、か細い声で、そっと呟く。
(そうね、綺麗だけど、いつまでも見つめているわけには、いかないわね)
頃合を見計らって、みんなに再度指示を出す。
「はあ、綺麗よね。でーも、いつまでも、このまま見とれている場合じゃないって事は、分かってるわよね?そろそろ、作業を始めるわよ。
カルラとユレノは、あたしと月光草の採取。溜まってきたところで、ユレノはお守りの作成にかかってちょうだい。それから、あんた達3人で、あの主から採取できる素材がないか確認。あれば、そのまま、お礼を言って、その素材を頂きましょう。なにか、質問は?」
みんなは、この場の雰囲気に気圧されているのか、無言で頷いていた。
……。
月光草に近づいたあたし達は、光っているのが花だけなのだということに、やっと気づいた。
茎、葉は、光らないらしい。
まあ、全体で光っていたら、それも美しそうだけど、謎だらけだ。
(いや、花だけ光るのも、謎か……)
あたしは1人でツッコミを入れてしまう。
3人で手分けをして、月光草を摘み取り始める。
お守りには、花だけでいいそうなので、花の部分だけを、茎から切り離していく。
が、この茎が、硬い。
あたしは、双剣遣いだから、片方の剣でなんとか摘み取っていけるが、カルラとユレノはかなり苦戦していた。
仕方なく、カルラにあたしの剣を貸し、それで摘み取らせる。
ユレノにはあたしが摘み取った月光草で、お守り作りを始めさせた。
こうして、あたし達3人は、お守りを40個無事、作り上げた。
(作ったのは、ユレノ1人だけどね……)
……。
マリネ達がお守りを作っている頃、僕たちは主の亡骸の傍で、頭を抱えていた。
光る身体の一部を切り離すと、それは光を失ってしまう。
「ねえ、このまま運ぶしかないの?そんなの、無理だよお」
「そうだな。光が重要で、それを持ち帰りたいなら、そういうことになるよな」
「え?どういうこと?」
「あのさ、確かにこいつの輝く体躯は、素晴らしいよ。だがな、その光には、芸術品としての価値はしらんが、素材としては光なんて、なんの価値もないんだよ。結局、なにかに利用できるか、が、問題なんだからな。それくらい、分かってるだろうが」
「あ、そうか。この光る美しい姿を再現できないといけないって、思っちゃってた」
「まあ、相対したお前が、こいつに敬意を払ってんのは……、理解するけどな」
「……、うん、こいつは凄いやつだった……、よ」
「だけど、悪いけど、割り切ってもらうしかないな。実際、こいつの鱗なんて、強度、大きさヤバい値段つくぜ」
「そうだな、悪いがまずは鱗から回収させてもらおう。あと、眼球も最優先だ。これも価値がありそうだからな」
「……、分かった。それなら、始める前に、黙祷したい。ダメかな?」
「それくらいならいいだろ、一緒にやってやるよ」
「そうだな、敬意を示すことは重要だ。やっておこう」
僕たちは、主に黙祷した後、眼球や歯、鱗など、採れるものは、有難く回収しました。
(ありがとう。残さず全部、有難く活用させて貰うよ)
最後に、ライバルだった彼に、そっとお礼を言った。