第58話:主との対話のうた
勇者フリスが、パーティーを離れ、一人で主に立ち向かいます
フリスの戦闘を、お楽しみください(っ'~')っ
崖の上で、僕は森の主と対峙する。
立ち上がる主の咆哮が、森全体を震わせる。
そして、四つ足で大地を掴むその姿は、まるで小さな山のようだ。
先に動いたのは、主だ。
地を揺るがす突進から、その瞬間だけ立ち上がり上段から放たれる、巨大な爪の一撃。
僕は、それを大剣で受け止める。ゴオオオン!と、重い衝撃音が響き渡り、僕の足元の岩盤が砕け散る。
「くっ…!」
主は、力押しだけではなかった。僕が大剣で押し返したのを見て、即座に体勢を入れ替え、その長大な尻尾を、鞭のようにしならせる!!
僕は咄嗟に後方へ飛び退き、それを避けるしかなかった。僕のいた場所は、尻尾が叩きつけられ、岩を粉砕していた。
(強い……。 これは、流石に一撃必殺なんて言ってられないか……!)
僕は、ただひたすらに、剣と、技と、そして勇者としての勘の全てを総動員して、その猛攻を凌く。
主と言えど、いつまでも連撃を続けられる訳でもなく、反撃を加える。
しかし、うつ伏せは弱点のコアを、巧妙に隠す。
(……、攻撃が、コアに届かない)
僕は、珍しく思案していた。
(このままでは、アイツを倒すことができない。どうやって、あのコアを狙えばいいんだろう……。こんな時、マリネが居れば、なにかアドバイスくれてるのに)
しかし、今この場には、マリネは居ない。
マリネ達も、崖下で残りのロックリザード達相手に奮闘している。
(僕しか、コイツを倒せない。僕にしか、出来ないんだ。考えろ。なにか手はあるはずだ……)
戦闘でこんなに頭を使うのは、本当に久しぶりだ。
いつも、どれだけリーダー、マリネに頼っていたかを実感する。
(マリネって、本当に凄いんだな。戦闘中に、自分だけじゃなくて、チーム全体のことを考えてるんだもんな。僕なんて、自分の事でも、手一杯なのに……)
戦闘中に、そんなことを考えて、一瞬主の攻撃を受け損なってしまった。
「くっ、余計なことを考えちゃダメだ。集中しろ。そして、コアに攻撃する隙を掴むんだ」
僕は、それからいろいろ試すことにする。
(僕は、考えたっていい案なんて思いつかない。なら、試すだけ試して、有効な手を見つけるだけだ)
頭に斬りつける。
尻尾の攻撃を受け流して、背中に飛び乗る。
そして、背中に剣を突き立て……、られない。
(硬すぎる。なんて硬度なんだ……)
あまりにも硬すぎて、剣は突き刺さらなかった。
しかし、ここで光明を見つけた。
この攻撃を受けると、主は立ち上がって、僕を振り下ろし、そして前足の爪で、なぎ払いをしてきた。
初めて見せたその隙に、一度は飛び退き退けることに専念する。
(焦るな。慎重に行動するんだ。いつもマリネがそう言ってる。そうすれば、必ず道が見えるっ)
そうして、何度か石化光線を避け、舌による鞭のような恐ろしい攻撃を躱し、伏せた状態の前足のなぎ払いを剣で受け止め続けた。
尻尾による攻撃を待ち続ける。
もちろん、効果なくても剣で斬りつけ、防御させることも、忘れずに行った。
(出来ることは、何でも試す。僕にはそれしか出来ないんだから……)
どれだけ時間が経ったのだろう。
気づくと、息が少し苦しくなってきていた。
(あ、石化防止のマスクの効果が……)
主は僕のその隙を逃さなかった。
僕の虚をついた尻尾攻撃を仕掛けてきた。
僕は確かに虚を突かれたけど、これを待ってたんだ。
(落ち着け。そうすればしくじらない)
自分にそう言い聞かせ、尻尾攻撃を躱し、できたその一瞬の隙に、主の背中に飛び乗る。
そして、その大きすぎる背中に、僕は大剣を突き立てた。
主は、立ち上がり、僕をふるい落とし……、
大きな咆哮をあげながら、前足の爪によるなぎ払いを仕掛けてきた。
〈グオオオオオオ……〉
その声に、思わず気を取られそうになる。
(今だ。今しかないっ)
僕は思い切りダッシュで前進。
「ここだっ!!」
主の喉元に光る、その、美しいコアを
僕は大剣で思い切り斬りつける。
〈グギャアアアア……〉
主の大咆哮を浴びながら、僕は一瞬遅れて飛び退き、ギリギリで主の巨躯を躱した。
咆哮を終えた主と視線が合う。
激戦の後だからか、主の眼は優しく、そして、静かに閉じられた。
主の身体が動くことは、二度となかった。
そして、主の身体は美しい彫像のように輝きを放ち始めた。
「……、綺麗だ」
思わず声に出してしまった。
そして、我に返る。
(下の、マリネ達はっ!?)
慌てて崖下を覗いてみると、そこも戦闘は終わっていた。
事情は後でマリネがきっと教えてくれるさ。
とにかく、みんな無事のようだった。
僕は安心からか、目を閉じその辺の木にもたれかかって、休むことにした。
(なんだか、久しぶりに酷く疲れた……)
ようやく、ロックリザードとの戦闘が終わりました
お疲れ様でした
では、また(っ'~')っ