第56話:初めての共同作業のうた
月光草からお守りを作るため、ロックリザードの巣に襲撃をかける一行
彼らの戦闘をお楽しみください(っ'~')っ
(なによ、このタイトル。あたし達、結婚でもするの?……、じゃなくて、ここは、ケーキ入刀でしょ!!)
あたしが、目の前で繰り広げられているものから、目を少しばかり外していると、あまりにも規格外な「戦術」を、ただ呆然と見つめていると、指揮を執るユレノの、凛とした声が響いた。
「マリネ様!」
彼女は、こちらを振り向きもせず、戦場を睨んだまま続ける。
「わたくしの『軍』が、敵の陣形を乱し、動きを鈍らせます! ですが、個々の戦闘力では、上位種のロックリザードを仕留めきるには決定打を欠きますの!」
「…どういうこと?」
「お願いですわ! わたくしが作り出したこの混乱に乗じて、敵のリーダー格と、特に頑丈な個体を、皆様の力で叩いてくださいませ!」
(なるほど、そういうことね!)
ユレノの作戦は、彼女一人で完結するものじゃない。
彼女が作り出すのは、あくまで、あたしたちが動きやすくなるための「舞台」。主役は、あたしたち『無名の月』というわけだ。
(自分だけで突っ走るかと思ってたけど、意外と戦場全域も、見えているのね)
「OK! あんた、なかなか面白いこと考えるじゃない!」
「ルエリ、カルラ、シビル! 聞いたわね! ザコはトレントとスライムに任せるわ! あたしたちは、大物だけを狙うわよ!」
「「「応っ!!」」」
あたしの号令で、パーティが再び動き出す。
崖の下では、トレントが巨大な腕を振り回し、ロックリザードたちを薙ぎ払っている。その幹をよじ登ったプラントスライムたちが、次々と崖の岩肌に取り付き、緑色の津波となって、敵の群れを飲み込んでいく。
「ルエリ、崖の中腹、右から三番目! あいつ、他の奴らに指示を出してるわ!」
「もらった!」
ルエリの放った矢が、寸分違わず、指揮官らしき個体の黄金の瞳を射抜いた。
統率を失い、さらに混乱に陥るロックリザードたち。
「カルラ、あのデカいの、お願い!」
「はいですぅ! 『闇の拘束』!」
カルラの魔法が、ひときわ巨大な一体の動きを、黒い鎖となって完全に封じ込める。
そこへ、あたしが突撃した。
「シビル、支援魔法!」
「言われる前にやってる!」
シビルの強化魔法を受けたあたしの双剣が、身動きの取れないロックリザードの、硬い鱗をバターのように切り裂いていく!
戦況は、完全にこちらに傾いた。
このまま、一気に…!
そう思った、その時だった。
「グオオオオオオオオッ!!」
崖の中腹、洞窟の入り口の暗闇から、これまでとは比較にならない、凄まじい咆哮が響き渡った。
そして、姿を現したのは、あたしたちが倒してきた個体の、倍はあろうかという、巨大なロックリザード。その喉元には、禍々しいほどに輝く、巨大な青いコアが脈打っている。あれが、ここの主ね!
「フリス、復活したんでしょ! あんたの獲物よ!」
あたしが叫ぶと、後方でうずくまっていたフリスが、ゆっくりと顔を上げた。
彼の目には、もう怯えの色はない。
「うん…。あれは、僕がやる」
彼は、トレントの差し出した枝を足がかりに、崖の上へと駆け上がる。
そして、主の登場に沸き立つロックリザードたちを薙ぎ払いながら、ただ一体、崖の上の主だけを見据えて、突撃していくのだった。
遂に、主が姿を現しました
フリス一人で、はたして……
では、また(っ'~')っ