第55話:真のテイマーの実力、のうた
職業:テイマー
この世界にあって、その職業は不遇である
しかし、それも極めることが出来たなら
正しく使役できたなら……
とりあえず、読んでみてください
では、お楽しみください(っ'~')っ
あたしたちは、ロックリザードの巣となっている、切り立った崖の前に呆然と立ち尽くしていた。
崖の中腹に空いた洞窟の入り口。そこを護るように、岩肌の至る所に、黄金の瞳が爛々と輝いている。
「…冗談でしょ。あんなの、どうやって攻略するのよ」
あたしの呟きに、誰も答えることはできない。まともに登ろうとすれば、蜂の巣にされるのがオチだ。
(うーん、これはまいっわね。どうしたものかしらね……)
あたしが打開策もないまま、思考をめぐらせていると、ユレノから提案がありましたわ。
「マリネ様。この場は、わたくしにおまかせくださいませんこと?」
「えーと、なにか作戦でもあるわけ?」
「もしかしたら、なんとかできる、かも、知れません」
自信はなさそうだった。
でも、ユレノの瞳に、覚悟のような、そんな光が点っているのを、あたしは気づいてしまった。
「……。そう、ならやってみて。ダメでも、また次を考えればいい事だしね。とにかく、挑戦してみなさいよ」
そう答えると、ユレノは深々と一礼し、一歩前に出た。
彼女は、どこからか取り出した小さな角笛を、空に向かって高らかに吹き鳴らす。
すると、森の木々の間から、数羽、数十羽の、青く輝く鳥たちが一斉に飛び立った。カワセミに似た、美しい流線形の鳥だ。
「あれは、『スプラッシュバード』。高圧の水流を、槍のように放つことができる鳥ですの」
ユレノの言葉通り、鳥たちは編隊を組むと、崖に向かって急降下を開始した。
そして、岩肌に潜むロックリザードたちめがけて、口から無数の「水槍」を放ち始める!
ビシュッ!バシュッ!
水の槍は、ロックリザードの硬い鱗に弾かれるが、その衝撃で何体かは崖から剥がれ落ちていく。
それだけじゃない。鳥たちの放った水は、ロックリザードの鱗から溶け出した鉱物の養分を含み、キラキラと輝きながら、崖の下へと降り注いでいった。
「な、何をしてるの…?」
あたしが呆然と見ていると、ユレノは今度は地面に手を触れ、静かに呪文を唱え始めた。
すると、あたしたちの背後で、ただの巨木だと思っていた一本の木が、ゴゴゴゴゴ……と、地響きを立てて動き出したのだ。
「トレントですの!そして、あれに宿らせておいた、わたくしのプラントスライムたちも!」
見れば、トレントの枝葉の間に、無数の緑色のスライムが、まるで果実のように実っている。
崖から降り注いだ、鉱物入りの「聖水」を浴びたトレントは、その幹をさらに硬質化させ、スライムたちは、みるみるうちに数を増やし、増殖していく。
「スプラッシュバードで上空の敵を牽制し、その攻撃で生まれた養分で、地上部隊を強化する……。これが、わたくしの戦略ですの」
巨大なトレントが、スライム軍団をその身に宿したまま、崖に向かって、ゆっくりと、しかし確実に歩を進めていく。
それは、まるで、一つの意志を持った、歩く森の要塞だった。
(な、何なのよ、これ……。これって、あたしたちの出番、あるの…?)
あたしは、目の前で繰り広げられる、あまりにも規格外な「戦術」を、ただ呆然と見つめることしかできなかった。
まだまだ、これからです
ここから、本領発揮となりますので、待っていてください
では、また(っ'~')っ