第51話:森の入口は皆楽しいのうた
えー、ただいまアースドラゴンの森に到着しました。
あたしの隣には、何故かしら?
テイマーのユレノが居ます。
なにやら、とても嬉しそうです。
これは、一体どういう事なのでしょうか……。
実は、初対面の翌日、ギルマスと一緒に、ユレノがホームにやって来たのよ。
ユレノは、この痛い性格のせいで、他の冒険者達とも、あまり上手くいってなかったらしいのだけども、あたしほどに完璧に論破されたことはなかったそうだ。
それがきっかけで、どうしても無名の月と、今回のクエストを達成したくなったのだって。
正直、意味分からんわ。
しかし、まあ、誠心誠意謝罪されたあたしは、別に恨みでもある訳でもなく、謝罪を受け入れた……、訳なんだけど、なにか妙に懐かれてしまった気配がするのよね。
というわけで、いつものメンバー+αという構成で、目的の森までやって来ましたとも。
やっと、スタート地点までやって来ました。
—
森に一歩足を踏み入れると、ひんやりとした湿った空気が肌を撫でる。木々の間から差し込む光が、地面にまだら模様を描いていたわ。
「ここが、アースドラゴンの森…。今のところは、普通の森と変わらないわね」
「はい、文献によりますと、アースドラゴンの影響が色濃く出るのは、もっと森の深奥部ですの。序盤は一般的なモンスターの生息域のはずですの」
得意げに解説するユレノ。あたしは生返事をしながら、周囲への警戒を怠らない。
(まあ、専門家(自称)がいると、こういう情報は助かるわね。ホントかどうかは、まだ分からないけど)
しばらく進むと、さっそくお出ましだ。前方の茂みから、緑色のスライムが三体、ぷるぷると震えながら現れた。
「スライムですの! 皆さん、物理攻撃は効果が薄いですわ! 火の魔法が有効ですのよ!」
「言われなくても知ってるわよ。カルラ、お願い」
「はいですぅ!」
あたしが指示するより早く、カルラの手のひらに小さな火球が生まれる。それが三つに分かれ、スライムたちを正確に撃ち抜いた。ジュッという音と共に、敵は一瞬で蒸発していく。
「お見事ですの!」
「まあ、この程度は準備運動にもならないわね」
さらに奥へ進むと、今度はゴブリンの小隊に遭遇した。数は五体。いつも通りの雑魚ね。
「フリス、手加減は要らないわよ。さっさと終わらせて」
「うん、任せて!」
フリスが嬉々として大剣を振るい、一撃で二体を薙ぎ払う。残りをあたしとルエリで危なげなく片付けていく。戦闘は、数分もかからずに終わった。
「素晴らしい連携ですの…。文献で読んだ通り、いえ、それ以上ですわ…!」
目をキラキラさせながら感嘆の声を上げるユレノ。
(この娘、本当に戦えるのかしら。あたしたちの戦闘を見てるだけなんて、そんなベタなこと……、ないわよね)
あたしが内心で毒づいていると、森の雰囲気が少しずつ変わってきたことに気づいた。木々の密度が増し、昼間なのに薄暗い。そして、前方にはぽっかりと口を開けた、不気味なトンネルが見えてきた。
「ユレノ、このトンネルは?」
「はい、これこそが、アースドラゴンの聖域への入り口ですの。文献によれば、この先は、わたくしたちの知る世界とは全く違う、異質な生態系が広がっていると…」
ゴクリ、と誰かが唾を飲む音が聞こえた。
トンネルの奥からは、ひんやりとした、金属のような匂いが漂ってくる気がする。
(あー、なんかイヤな予感しかしないわね)
「……、ねえ、もうよくない?戻りましょうよ。なんだか、面倒事の匂いしかしないもの」
「ええっ、ここから本番でしょ?ちゃんとクエスト達成しようよ。アースドラゴンに逢いたいよ、僕っ!!」
子供のような、フリスに引き摺られて、あたし達はトンネルへと、向かったのよ。
(誰か、あたしを助けてえ……(合掌))
予想通り、ユレノさんもクエストに同行してました
誠心誠意の謝罪に勝るものはありませんね
では、また(っ'~')っ