第43話:討伐報告のうた
「マリネさんたち、大丈夫かな。やっぱりついて行くべきだったかな。でも、足でまといになるだけか……。はあ、結局押し付けてしまった……」
私は事務所で、不安な時間を過ごしていた。
ケンタウロスを追いかけ始めたマリネさんに
『ヒロシたちは、事務所で待機よっ!!あなた達が来たら、邪魔にしかならないわ。あなた達を守りながら、ケンタウロスの巣なんか襲撃できないもの!!』
と、完全に追い返されてしまったのだ。
頭を抱えて、ウロウロするしかない私と同調するように、他の牛頭族の面々も心配そうな表情を隠すことが出来ずにいた。
静かな時間だけが過ぎていく。
……。
「き、きたっ!!来ました!!」
バタンっと急に扉が開け放たれ、係員が飛び込んでくる。
「何が、来たんだ!?」
「簡易転送陣で、マリネさん達が戻ってきました!!」
「「「……!!」」」
待ちに待った報告だった。
待機命令を受けた際、「これだけは」と簡易転送陣だけは、残していくと伝えていたのだ。
それを、ちゃんと使ってくれたのだ。
「そ、それで、マリネさん達は無事なのかっ!?」
「はい、皆さん全員無事に戻ってこられました」
私は、その答えを聞き終える前に、部屋から飛び出していた。
(帰ってきた。帰って来てくれた。よかった。ホントによかった、帰って来てくれて)
喜びを心の中で噛み締めながら、私はマリネさんたちが休む、休憩室に飛び込むのだった。
「マリネさんっ!!」
声を荒らげながら室内に飛び込んだ私の目に映ったのは……。
空になった魔力回復薬の瓶を並べるシビルさんとカルラさんの姿が
酷使したであろう、蒼穹の手入れに余念のないルエリさんの姿が
ソファにグッタリともたれ、崩れそうな勇者フリスさんの姿が、確認できた。
だが、マリネさんの姿がない。
『……、遅かったわね』
突然背後から、マリネさんの低い声が響いて、私は思わず飛び退いてしまった。
もちろん、無名の月のメンバーさんも全員、背すじが伸びている。
あのグッタリとしていた、勇者フリスさんまでもが。
……。
「報告するわ。ヤツらの巣を確認したわ。場所はこの辺りよ」
広げられた地図の山岳地帯を、指し示すマリネさん。
「すげー、さすがリーダー。僕なんて、自分のいる場所が、どこかなんて、さっぱり分からなかったよ」
「分からなかったら、戻って来れないでしょう、このおバカ!!」
勇者フリスさんは、いつまでもマイペースのようだ。
「そこに居たケンタウロスは、とりあえず全滅させたわよ。ざっと、200は居たわね。残りはあなた達にお任せしても大丈夫かしら?」
「は、はい。それだけ倒していただければ、残りはこちらで、なんとか……」
正直、我々の戦力はマリネさん達はおろか、ケンタウロスにさえ、太刀打ちできるレベルではなかったが、これ以上、マリネさん達に頼ることはできない。
自分達で、どうにかするしかないのだ。
そんな私の表情を、マリネさんはじっと見つめていた。
マリネ姉さんから、ケンタウロス討伐の報告を受けたヒロシさん
存在を、わ、忘れていた訳では、あ、ありませんよ
この場で登場してもらう為に、敢えてです
あ、え、て
では、また(っ'~')っ