第23話:領主就任のうた
「今までも、領主が居なくても、この領地はなんとかなってきたのよね?」
「はい、その通りでございます。問題なども、その都度解決してま知りました」
「それねら、今さらあたしが何かをしなくても大丈夫ね?逆に領民に、変な気を遣わせることになるわね?」
「その可能性も有り得るかと存じます」
「じゃあ、あたしは名目だけ領主を演じます。領地の民たちはこれまで通りで生活するように伝えてちょうだい」
「いいえ、それはダメでございます」
「なんで?今までと同じなんだから、問題ないでしょ?」
「いいえ、領民はみな、貴方様を待ち望んでございました。マリネ様を歓迎しております。ここは是非、民衆の前で、マリネ様直々にお言葉を差し向けて頂きとうございます」
セバスチャンが恭しく、一礼する。
(えー、そんな領主様みたいなこと、あたしに出来るわけないじゃん。あたしなんて、超絶平民出身なのよ?)
ここは、拒否一択よね。
「いやムリ。そんなこと、絶対ムリだから。いくら頼まれても、お金積まれても、絶対に引き受けないからね!!」
あたしの全力拒否作戦。
これなら、あたしの泣き落としも通じるはず?
……なのに、……。
「申し訳ございません。既にお舘のテラスの前に民衆を集めてございます」
セバスチャンだけでなく、メアリーも、
「さあさあ、そんな駄々っ子みたいなことを仰ってないで、さっさとお着替えを致しましょう」
どこか嬉しそうに、あたしの肩を掴み、さっさと衣類を脱がし始める。
「ちょっと、勝手に脱がさないで、自分で脱げるから!!」
「って、セバスチャンは、なんで残ってるの?」
「はい、領主様ともなれば、家来の前でのお着替えなど、当たり前にございます。どうかお気になさらず、お召し替えを……」
(え?出ていく気なし?そんなこと聞いてないんだけど?)
あたしの気持ちを無視して、メアリーたちメイド数人で、あたしを裸にしてドレスを纏わせる。
挙句にあれよ、お化粧なのよ。
冒険者には、まったくの不用品の化け技術なのよ。
裸のまま鏡の前に固定され、顔だけでなく体中に何かをされ、ドレスを着せられ、あたしは人間ではなかったのか、ちょっと不安になったわよ。
メアリーたちの作業が終わって、身体の自由が戻ってきた時の感動ったら、あなたたちに、この気持ちなんて、永遠に分からないでしょうね?
でもね、姿見の中のあたしは、あたしではなかったわ。
あたしから見ても、もう完全に別人だったのよ。
思わず見蕩れてしまったわね。
あたしって、実は美人だったのね?(うっとり)
こうして、民衆の前に立ったあたしの演説は功を奏し、とても熱狂的に迎えられたのよ。
これで、一安心とホッと肩の力を抜くと、メアリーが
「領主様、大変ご立派でございました。これで、領民も安心して生活できましょう」
セバスチャンも続けて
「そうでございますな。マリネ様のお姿を拝謁できた領民たちも、マリネ様の就任をとても喜んでいます。どうぞ、末永くこの地をよろしくお願い申し上げます」
再び、2人はあたしに恭しく一礼してくれた。
あたしは実感する、この地の領主になってしまつまたことを。
いろいろあったようななかったような、領地編
これにて、一旦休憩ですね
今頃、王都の様子は大丈夫なのでしょうか?
では、また(っ'~')っ