第22話:あたしこそが領主様のうた
あたしは、ついに核心をついた問いかけをする、決意を固めたの。
今までは、ここの領民の心を抉るわけにはいかないと、必死に抑えてきたあの問いかけを!!
「ねえ、ちょっと聞きたいんだけど、この『貧弱』領って、超絶貧乏な領地じゃなかったの?」
そうこれ。みんな気になってたでしょ?
あたしだってそうよ?
貧乏な領地を押し付けられたと思ってたから、憤慨してたのだものね。
それが、なんか違う雰囲気じゃない?
ちょっと得した気分も、そりゃあるわよね。
「ええ、では早速領内の産業、収支から、課題などにつきまして、順にご説明させて頂いても、よろしいでしょうか?」
「え?ああ、はい。分かりました。じゃ、聞きます」
と、答えているこちらとは逆に、部屋から抜け出そうとするメンバーたち。
「ちょっと、あんたたちも聞きなさいよ。あたしにばかり、押し付けてないで、しっかりしなさいよ!!」
「いやー、やっぱりこういうのは、マリネが最適だと、みんな認めているわけさ。なにしろ、ご立派な領主様だしな」
「そおそお、私たちみんな、マリネならこの領地をきっとすごいところにしてくれると、信じてるわけ」
「つまり、この大役を任せられるのは、『マリネ』お前しかいないっ!!てことさ」
シビルから、カルラ、ルリエまで、さらっと押し付けてくるとは。
「だって、僕にはそんな話なんて無理だよ。直ぐに寝てしまうだけだもん。マリネなら、僕と違ってちゃんと理解してくれて、なんとかしてくれるでしょ?」
なにこの、おバカの自覚全開の言い逃れは!!
「もお、分かったわよ。あたしが聞いて、あんたたちに、簡単に説明してあげるから、それくらいはちゃんと聞きなさいよ」
こうして、あたしの味方は、あたしだけになってしまった。
「で、では始めさせていただいても?」
セバスチャンが、間髪入れずに聞いてくる。
あたしは、また覚悟を決めて答えるしかないのね。
「ええ、聞くわ。説明してちょうだい」
……。
まとめると、この領土にはむかし、それはできた地主さんが、居たのだそうだ。
その地主さんは、王都とは関係なく私財を投入して、土地開発をしたらしいのね?
そうして、次第に土地は裕福になっていくの。
農地はおろか、狩猟場も整備されていて、衣食住の何一つ不自由を感じさせないレベルだったそうなの。
ここの領地の凄いところは、衣食住の全てをこの領地だけで、賄ってしまっていること。
だから、特に他所と取引を行なう必要もなく、領地から出ていく領民も極わずかだってんですって。
セバスチャンたちが、なぜこんなに詳しいのかと思ったら、ここの召使いさんたち全員、この領地の出身なんですって。
幼少のころから、ずっと刷り込まれているらしいの。
だから、王都でもこの地について、詳しく知るものもなく、『貧弱』領という名前のイメージのまま、貧乏に違いないって刷り込まれてしまったみたいね。
これ、王様に教えたら、直ぐに取り返されるんじゃないかしら。
そしたら、あたしも重責から開放されるってものよね?
……と、思ったのに、それをつい口にしてしまったら、セバスチャンとメアリーに、全力で泣きつかれてしまった。
「お願いでございます、マリネ様。それだけは、それだけはご勘弁を」
「ええ、それで王都直轄にでもなってしまえば、領民の今までの生活も成り立たなくなってしまいます。きっと、今より重い税率を課せられるでしょう。マリネ様、どうかどうかお願いでございます。このまま、マリネ様の領地となさってください」
「えーと、なんであたしならいいわけ?あたしだって、他の領主様より酷いかもしれないわよ?」
「いいえ、ギルドマスター様は、あなたなら、この領地を守ってくださると、約束して頂きました」
「それに、先程の一言。あの言葉から、この領地を任せられるのは、貴方様しか居ないと確信致しました」
2人に懇願され、あたしは頷くことしかできないわよね。
あー、結局こうなるのね(遠い目)
やっと、覚悟を決めましたねマリネ姉さん
もともと、拒否できる環境ではなかったですよね
これからは、領主として、冒険者として、頑張って頂きましょう
では、また(っ'~')っ