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臆病勇者の憂鬱  作者: さらん
第1部:ケンタウロス生け捕り編
2/9

第1話:ゴブリンダンジョンのうた


あたしたちは、この前の定点観測の報告と、次の依頼の確認のため、ギルドにやって来ていた。


この、『なにもなかった』を原稿用紙1枚に引き伸ばして書かされる拷問.........。

誰だよ、こんな報告書作りやがったのはっ!!


とにかく、あったようななかったようなことをでっち上げた報告書を、受付のリリアに手渡しつつ.........。


「ね、次なんかいいのないの?このゴブリンダンジョンみたいのは、もうコリゴリだわ」

「そうね、今はかなり平和なのよね。だから、マリネが喜びそうな依頼は、特にないわね」

「そっかぁ.........」

「て、ことでこの報告書は確かに預かりました。今回もお疲れ様でした。しばしの休暇をゆっくり休んでね」

「ありがとう、リリア」


そう受け答えて、受付のカウンターから離れた直後のことだった。

新米パーティのメンバーらしき冒険者が、ギルドハウスに飛び込んできた。


「た、助けてくれっ。ゴ、ゴゴゴ、ゴブリンダン.........、(ゲホゲホ)」


よほど慌てて駆けつけてきたのか、息が上がっていて、まともに喋ることが出来ないようだった。


近くにいた冒険者の1人が、彼に水を渡してやる


「これ飲んで、落ち着いてから喋るんだ」

(コクコク)


(意外と素直だな、あいつ)

少しだけ感心しながら、彼が落ち着くのを待つ。


彼は受け取った水を、一気に飲み干して.........、案の定むせていた。


(ウケる。予想通りすぎるんだけど(笑))

あたしは、心の中で大笑いした。さすがに、ここで本気で大笑いできるほど、あたしは大物じゃないからね。


彼は少し落ち着き、深呼吸してから


「大変なんだっ!!ゴブリンダンジョンで、見たこともないモンスターが暴れているんだっ!!しかも、五体もいたっ!!アイツらの強さは、ゴブリンどもの比じゃない。頼む、まだ俺の仲間たちが、応援を待ちながら戦ってるんだっ!!」


彼は一息に喋りきった。

その場にいた全員の表情が、一気に青ざめた。

そして、彼は続けるの。


「このままじゃ、みんながやられちまう。みんな、俺に応援を連れてくるように、託して頑張ってるんだ!お願いだ、誰か助けてくれっ!!」


必死の形相で、彼はその場の全員に向かってお辞儀をするのだった。


(いやっ、ムリ。ムリだから。誰が自殺しにそんなとこ行くのっ!?)

多分、この場の冒険者たち全員の心が、この瞬間にひとつになったに違いない。

あたしは、そう信じている。



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