第13話:生け捕り作戦のうた
姿を現したわね、ケンタウロスっ!!
全員の目の色が変わる。
(コイツを生け捕る!!そして……、報酬がっぽり)
とか、考えていたらなんとお!!
「うぉぉ!!」
て、誰か岩陰から飛び出していかれたわ。
ガンバレ、誰かさん!!
て、フリスじゃない!?
なにしてんのよ、アイツは。
「シビル、カルラ、ルエリ!!フリスの支援お願い。あたしは、フリスのところに行くわ!!」
あたしは、フリスの横に並ぶ。
「フリス、あんた分かってんでしょうね。生け捕りよ。い、け、ど、り!!」
「ああ、マリネ。そんなこと言われなくても分かってるさ」
「あのね、生け捕るのよ。一撃で仕留められないからって、落ち込まれちゃ困るわけ。逆に一撃ですやっちゃダメなの。いいわね?」
「分かってるさ。手加減すればいいんだろ?」
……。
ホントに大丈夫かしら?
そして案の定……。
「うわああ、ダメだ。やっぱりダメなんだ。僕なんて、生きてる価値ないんだ」
やはり、何事か落ち込んだ。
手加減した挙句に、当たり前に倒せなかったことが原因らしい。
(だから、倒しちゃいけないんだから、それでいいんだって)
何度も突っ込むが、どうせ聞こえてないわよね。
もうヤツは放置することが確定しましたとも。
さて、生け捕りとは簡単に言うけれど、大人しくなるまで、死なない程度のダメージを入れるしかないのよね。
当たり前だけどさあ、これがまた難しいのよ。
どの程度まで、持ちこたえてくれるのかしら。
向こうはこちらを殺す気で襲ってくるのだし。
仕方ないから、双剣はさやに納めたまま、ひたすらに殴る、殴る、殴る。
シビルに強化魔法を掛けてもらって、ただひたすらに、殴り続ける。
「ぐっ、なんてやっかいなのかしら。タフさが尋常じゃないわ」
怖くて、カルラの黒魔法なんて、使わせられない。一撃で、倒しかねない。
だから、足止めになる弱魔法のみ使用してもらう。
あたしは、ケンタウロスの攻撃を必死で躱しているが、それでも何発かは食らってしまう。
今度は、脇腹を掠ってしまった。
「マリネっ!!」
カルラが心配してくれるが、こちらには返答する余裕はない。
「今、回復を」
シビルがすかさず、回復魔法をかけてくれる。
万能ではなくても、止血され痛みも軽減されるのは、助かる。
これで、またケンタウロスに立ち向かうことができる。
助かるのは、ルエリで、矢を手足中心に当ててくれている。
それも、麻痺毒を縫った矢なので、少しずつだが、動きが悪くなってきている。
だが、やはりタフなモンスターの一角だけある。
もう、かなり時間が経過しているが、未だにただの一体の動きを止められないでいた。
数分後、息を切らしたあたしと、全く応えてなさそうなケンタウロスが対峙していた。
ほかのメンバーも、かなり消耗している様子が分かる。
まだまだ、時間がかかりそうだ。
あたしは、双剣遣いであって、腕力はそんなに強くないの。
だから、双剣で切れなくて、殴打の攻撃だけなんて、ほとんど効果なんて、あるはずないのよね、最初から。
さて、どうしようかしら。
そんな停滞した時間に、突如その時はやって来た。
「僕だって、ホントはやれるんだっ!!」
なにか、叫びながらそいつは戦線に復帰してきた。
「フリス、峰打ちだよ。いいわねっ!!」
聞こえてるのかどうか、分からないけど、彼は剣の腹で、ケンタウロスの頭を殴打することに成功した。
(えええ、一撃なの。あたしの苦労って……)
どうやら、落ち込み期間を終了して、戦闘に再参戦する気になったらしい。
とにかくも、その一撃で、目標はその場に倒れ込んだ。
「やった……」
こうして、ひたすらに面倒な戦闘から解放されたのだった。
落ち込んだ後でも、やる時はやる
フリスのいい所を見ることが出来たあなたは、幸せ者です
自信持って、生きていきましょう
では、また( ´ ▽ ` )ノ