第12話:うしのうた
やって来ました、ゴブリンダンジョンの朝。
あたしたちは、今、まさにダンジョンに踏み込もうとしております。
国王陛下との約束もありますので、さっさと行ってしまいましょう。
ここは、やる気に満ち溢れている勇者様を先頭に、意気揚々と順調に進んでいきます。
途中、名物ゴブリン(小物)を何体か仕留め、快調です。
勇者様も、ここまでは失敗もなく、気分上々で進んでくれています。
(いつもこうだったら、めっちゃ楽なのになあ)
こころの声も、優しくもなりますね。
しかし、次第に様子がおかしくなってきます。
段々、ゴブリンの数が減ってきました。
もう、ほとんど遭遇しません。
楽です。さくさく進みます、勇者様が。
突然なにかあっても、彼を犠牲にすれば問題ありませんね(にこ)。
さあ、段々目的の変なギミックとやらの場所に近づいてきました。
(引き返すなら今だ)
横目で窺うと、みんなも同じ想いのようだ。
だけど、あたしたちはこれでも、勇者様を擁する冒険者パーティ、逃げ帰る選択肢は初めからなかったのよね。
この瞬間が、一生来なければいいのに。
そんな時こそ、一瞬よね(苦笑)。
ついにたどり着いてしまったわ。
それは確かにある。
で?
どうしたら、なにが起こるのかしらね?
怪しげは装置の前で固まるあたしたち。
「さあ、帰りましょうかあ!!」
と言おうとした瞬間のこと。
『ピッ』
という音と共に、壁が開いたわ。
いえ、ホントに音もなく、スーッて隙間がどんどん広くなっていったのよ。
(なになに?なにが起こってるの?)
その隙間から、何かがでてきたの。
大きさは、人間くらい。
体格も似たものよね。
ただ、それには人間と大きくちがったところがあるの。
牛の頭をなさっているわ。
きっとそう、被り物よ。
と期待したのに、なんとその被り物の口が動いたわ!!
「あ、こんにちは。この辺は、危険だから近づかない方がいいよ」
爽やかに話しかけてくる。
なのに、ただひたすらに固まって、なにも反応できない、失礼なあたしたち。
でも、特に気を悪くしたわけではないらしい。
「ああ、僕は牛頭族のヒロシ。君たちは人間だろ?知ってるよ。この世界の生物だ。初めてホンモノ見るよ。嬉しいなあ」
1人で、盛り上がってたヒロシさん。
ところが、突然我に返って
「不味い、はやく隠れなきゃ。君たちも、そうだっ!!あっちに隠れよう」
彼は素早く隙間から出てきて、あたしの手を掴むと岩陰に隠れた。
メンバーも全員倣って行動する。
直後、「どしん、どしん」と大きな生物の足音が聞こえてきた。
(神様、仏様、イエスキリスト様、どうかあたしだけでも、お守りください)
あれ?なにこのセリフ?
でも、まあ、いいわ!!
助けてくれるなら、どちら様でもいいから
『あたしだけでも、たすけてーっ!!」
なにが来たのでしょうか?
怖いので、あたしは逃げたいと思います
それでは*˙︶˙*)ノ"