序章:はじまりのうた
「ダメだ。もうダメだ。ダメに決まってる」
我らがパーティの随一の実力者、『勇者フリス』が膝を抱えて座り込んでいる。
勇者様がこんなだから、あたしなんかがパーティのリーダーをやらされている。
ホント、いい迷惑なのよ……。
あたしたちのパーティは、この『なんだかな王国』で二番手の勇者パーティだ。
フリスの野郎の性格が災してトップになれないでいる。
まあ?
トップになったところで?
国王様に、厄介事を押し付けられてるだけみたいだし?
あんなのになれなくて正解みたいな?
そんなわけで、あたしたちのパーティは、こんな構成だ。
・リーダー:マリネ(あたし)、双剣使い
・前衛:フリス、戦士
・中衛:ルエリ、蒼穹
・後衛1:カルラ、黒魔道士
・後衛2:シビル、白魔道士
タンクが居れば、文句ないのだけれど、そればっかりは仕方ない。
とか言ってる場合じゃなくて、今も戦闘真っ只中なわけ!!
そんななのに、かの勇者様ときたら肝心なところで、また持病を発揮なさる(苦笑)。
ちょっとゴブリンを、一太刀でやれなかったからって、いちいち落ち込まれてもねぇ。
今回の相手は、それほど強敵でもないし、もう放っておくことにしましょう、そうしましょう。
・・・
戦闘終了後、あたしたちはホームで今日の成果について語り合っていた。
「ゴブリンども、たくさんいたなぁ、今日も。素材売っても大した金にならねーからめんどーなだけなんだけどなあ.........」
「だよな、ホブゴブリンが一体だけだもんな。くたびれ損だぜ、まったく」
愚痴るルエリにシビルが同意する。
そう、ゴブリンはこの辺りでは、最弱の部類に入るモンスター。
素材にも全く値がつかない。
『みんなひどいよぉ!!』
唐突に割り込んでくるのは、フリスだ。
「なんで、僕をおいていくんだよぉ」
あのゴブリンのダンジョンに、1人置いていかれたのだった。
なにしろ、フリスの防御力の高さなら、座り込んでいても、ゴブリンごときの攻撃は通らない。
置き去りにしようと問題ないのだ。
故に、ダンジョンで落ち込んでる勇者の面倒を見るものなど皆無なのだ。
「あら、おかえりフリス。あの後のダンジョンの報告を頼むわ」
「いや、鬼かよ!!1人だけ置いてくとか」
「1人でも帰ってこられたじゃない。さ、す、が、勇者さまよね(にこり)」
「ぐっ.........」
当然のごとく言葉に詰まる勇者。
毎度のことだ、疲れないのだろうか?
「で?なにかあったの?.........、その顔はなにもなかったわね。ギルドにもそう報告できるから助かるわぁ」
そう、あたしたちは、王都近郊のダンジョンの、定点観測の依頼を受けていたのだった。
新しい物語が始めます
勇者フリスに振り回される、リーダーマリネの苦難の旅
これから、毎日22時に更新していきます
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