二度目の喪失
あれは確か、、、、、会談でフイメ国へ向かう前に遡る。
馬車へ乗り込み出発を待機している間、窓の外から一人の近衛兵が剣を腰に携え大腕を振って歩いているのが見えた。
どこか危なげな雰囲気を兼ね備えており、そんな予感が的中したかのように彼は躓き盛大に転んだ。
周りがまたやってるあいつなんて笑みを向けているのが見て取れた。
あの子はこの前入隊したばかりの新米なので大目に見てあげてくださいと執事のゼバスに頼まれたのを思い出した。
そこで私はある一つのことに気づく、村人に切り刻まれた近衛兵の衣を着た彼は『彼であって彼で無かったもの』だったのではないだろうかと
敵は死体を自由自在に操れる?または乗っ取ることができる可能性があると私は睨んだ。
先ほど、村人達に簡単に切り刻まれたのにも、すぐに別の操り人形を入手できるが故の油断によって生じたものだったのではないかということが想定できた。
そんな考察をしていると背後から悲鳴が聞こえた。
後ろを振り向くと夫婦二人が血塗れになりながら倒れていた。そのそばには血相を変えて訪ねてきたジャウネシンが傍に立ち尽くしていた。
彼の手には小さな刃物が握られており、二人を殺傷したのだとすぐにわかった。
彼は振り向いたと思うとニヤリと不敵な笑みを思い浮かべながら、お前はどうやら勘が鋭そうだなクククと呟いた。
これで残りは王女様とそこにいるメイドだけだなと発言するや否や私に斬りかかってきた。
私はそれに対応するように防御魔法を即時に発動させたが間に合わせることができなかった。
死を覚悟し瞼を閉じた。
その時、目の前にカルロスが割り込み私を庇った。
カルロスは胸を貫かれて私の手の中に倒れこむ
自身が刺されたことなどお構いなしに、呼吸を荒くしながら、王女様、お逃げください。
私はもう長く持ちません。数秒くらいならメイドの私にも時間を稼げると思います。
やめてカルロスあなたは胸を貫かれている、これ以上の無理はやめて 私はカルロスの願いを跳ね除け 貫かれた部位の治癒を行う
もう助からないかもしれないという考えが一瞬、脳裏に浮かんだが
心の中では諦められない自分がいた。
先刻にゼバスを失い心の整理がまだ追いついていないのにここでカルロスを失えば私は二度と立ち直ることはできないだろう。
そんな焦る私を見たカルロスが
【王女様 もう充分です。メイドとしてあなた様にお仕えできたこと、とても誇りに思います。】
最後だけわがままを聞いて下さい 私の治療する手を跳ね除け彼女はあいつに一矢報いるため所持していた携帯ナイフで奴の首へ差し込むことを成功させた。
またここでも奴は油断した。そう思っていると
傀儡を一つ潰したくらいでいい気になるなよ。補充はいくらでもできる。
ニヤリと笑ったかと思えば虫の息であるカルロスを刃物で切り刻んだ。
早くお逃げくださいそれがカルロスの最後に発した言葉だった。