春三日月に、ネモフィラの宙は青く
夢見草たちが
届ける桜色の手紙
そっと風に
かざした手のひらに
ほのかなひとひらを
見つめながら
並木道を行く
人の心をやさしく
包みこむように
流れる桜南風
海を見渡す丘には
青く広がる
瑠璃唐草の花
花の一つひとつが
映し出す空を
瞳に描きながら
今を流れる時に
花びらが舞うように
夕暮れの風に
舞いゆく花びらが
空へ溶けるように
染めゆく夕映えもまた
桜色をして
やがて浮かび上がる
春三日月が
やわらかな輪郭で
見守る鳥来月の
夜空は青く
瑠璃の色に
染まりながら
宙を流れる星に
花びらが舞うように
ひとひらの花びらが
煌めきながら
宙へと
舞い上がるように
天高く描かれる
春の大三角
デネボラの黄金と
スピカの澄んだ青
そして
アークトゥルスは
花灯りのように
春三日月とともに
花は桜人の
てのひらに舞い降りて
時は巡り
風は巡って
春もまた巡るように
季節の旅人が
街から街へと
春をこめた
桜色の
手紙を届けて
そして
花のあとを彩る
葉の翠もまた
言の葉のように
その手紙を
大切にしながら
また新たに
踏み出す一歩を
花は夢抱く
その胸に舞い降りて
土をあたため
冬を越え
そして
花が咲くように
その花を見て
夢見草と呼んだ古の
ひとのこころに
想いを馳せながら
そっと風に
かざした手のひらの
その先に煌めく
春の大三角は
星の花が舞うように
そして
春三日月が見守る
宙とこころは
青く、ネモフィラのように
春の夜空に、しし座のデネボラ、おとめ座のスピカ、うしかい座のアークトゥルスの3つの星が描く「春の大三角」は、4月中旬頃から空高く上がります。
鳥来月は4月、夢見草は桜のことです。桜南風は、桜の花びらとともに舞う春の南風のことで、桜人は桜を眺める人をいう言葉です。
春に咲くネモフィラ(ギリシャ語で「小さな森を愛する」)は、空のように青い花で和名は瑠璃唐草です。森の中でも陽だまりを見つけて咲き、花言葉は「どんな場所でも成功を」です。
季節の星や花をモチーフに、詩を描かせていただきました。お読みいただき、ありがとうございます。