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8. Girls do girls things.

 まとめていたほうが面倒を見やすいと、ノーフレアーリとキヨカは一室に押し込められた。大神殿の敷地内の(はふり)たちの生活の場に紛れている。


 相部屋には対になるベッドと机と椅子、本棚が最低限の生活家具としてある。本棚には本が数冊立ててあり、以前の住人の置き土産らしかった。そのうちの一冊は教典だった。キヨカは一旦手に取って、寝る前に読んでみようとベッドの枕元に置いた。


「今日からルームメイトだね。よろしく、ノーフレアーリさん」


「こちらこそ。フレアと呼んでください」


 荷解きするほどの荷物もなく、だらける時間はすぐに訪れた。女の子が二人も集まれば、お喋りは不可避。


「ねぇねぇ、フレアはエフェルさんと付き合ってどのくらいになるの?」


 茶髪の美女はじっとキヨカを見た。


「あ、ごめんこういう話いやだった?」


「いいえ。いままで女神であったわたくしにそういった質問をしてくる方はいなかったものですから」


 恥じらいながら、質問に答えてくれる。


「……三年ほどになるかしら」


 いいね、とキヨカは羨ましげにした。


「その前に恋人は何人いたの?」


「エフェルで二人目ですわ」


「二人しかいないの? 生まれてからこれまででずっと?」


「ええ。六百年生きてきたなかで、です」


「六百って。すごいね、それだけ長い間女神さまやってたんだ。それで二人かぁ。遊びたくはならなかったの?」


 この美人さんが、とキヨカはわななく。男が放っておかず誘惑も多かっただろうに、とても身持ちが固い。


「異性とは不用意に交流を持たぬようにと教わって育ったものですから」


「お嬢さまなんだ?」


 ノーフレアーリの洗練された立ち居振る舞いは、生まれがあってこそなのか、女神になるにあたって身につけたものなのかわからなかった。


「……昔は一国の皇女だったわ」


 あまり気に入っていない肩書きなのか、名乗るのをためらうようだった。六百年前のことをほんの少し懐かしんでいる。


「あーお姫さま! っぽい!」


 キヨカの頷きにノーフレアーリはくすくす笑った。


「ごめん、普通に話してるけど、いやだったら教えてね」


「そのままでいいわ。そういうキヨカは?」


 口をへの字に曲げた。


「……いたこと、ない」


 彼氏も彼女も、好きだと告白したこともされたこともない。


「どなたかに思いを寄せたことは?」


「え? えーどうだったかな。なんとなく、覚えてないくらい小さい頃、初恋は済ませたかも」


 いいな、と思う男の子はいた。顔も思い出せないけれど。頼りない恋愛経験だ。


「かわいらしいわ」


 と、姫の仰せに今度はキヨカが照れた。


「キヨカは物怖じしないわね。女神だったわたくしにも気さくだし」


「わたしがいた国ではね、神さまって身近でいろんなところにいるって言われてるの。実際に神の力を感じたり姿を見ることはないけど、言い伝えや昔話のなかではわりと簡単に人と関わるよ。いまのフレアはほんとに人間っぽいし」


「キヨカは自由ね。よい育て方をされたのね、好きだわ」


「わたしもフレアのこと好きだよ」


 おしゃべりは消灯が過ぎてもひそひそ続く。


Girls do girls things.

(女の子たちのすること。)

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