5 オープンキャンパス
お待たせしました第5話を更新しました。
明奈ちゃんの家庭教師をしているときに先輩にオープンキャンパスに来るように言われたけど、あまり気が進まないです。本当に面倒臭い!
僕の知らないところで事は進んでいた。僕はその事にまったく気づいてなかった……
「ねえねえ響君、大学はどこを受験するの?」
来夢が突然そんな事を……
「僕は北山大学だけど」
「他には受けないの?」
「うーん、まあ、余裕だし、良いかな……」
「へぇー、凄い自信ね!」
「北山大学ってそんなに難しくないですよ」
「あっ、そう……」
来夢はそう言ってタイムマシンへ戻って行った。なんだか今日は簡単に引き下がったな。まあそれより今日は明奈ちゃんのテスト残り二教科をやらないといけない。昨日のテストの採点をしてたけど、彼女の成績は問題無いくらい優秀だと思う。城南高校なら間違いなく合格出来ると思うけど、何故家庭教師を頼まれたんだろう。まあ、僕は助かるけど。
とにかく彼女が城南高校に合格出来るようにしないと…… 僕は残りのテストをするために彼女の家へ向かった。
『ピンポン!』
僕は警戒しながらインターフォンを鳴らした。また突然抱きつかれても困るから……
「はい!」
「あっ、倉橋ですけど」
「倉橋君どうぞ! ちょっと手が離せないから上がってね」
「はい、失礼します」
はあ…… 今日は明奈ちゃんのお母さんがいたから良かった。そのお母さんからお許しが出たので勝手に上がらせてもらった。
その後二階の彼女の部屋のドアをノックをして中へ入った途端、抱きつかれた…… はあ…… 警戒していたのに…… しばらくすると彼女は満足したのか僕から離れてくれたけど、今度から毎回そうなるのかな……
「倉橋さん残りのテストをお願いします」
さっきまでの行動はなんだったのか、昨日の話ではやる気をもらったとか言ってだけど……
「それじゃ、残り二教科のテストを始めましょう」
「はい!」
でも、相変わらず返事だけは気持ちが良いくらい良いです。
「倉橋さん、北山大学のオープンキャンパスがあるんですか?」
「うん、来週の週末に」
「行くんですか」
「うん、誠司さんから頼まれたから」
「ふーん、私も行っちゃおうかな!」
「良いんじゃないですか」
「一緒に行きませんか?」
「いいから早くテストをして下さい」
「やるから一緒に行きませんか?」
はあ…… 面倒だな……
「同じクラスの奴と行くから駄目です」
そう言ったら頬を膨らませてブツブツ言いながらテストを始めた明奈ちゃん! 困ったもんだ。
私、冬野は近所のスーパーに買い物に来ました。このスーパーはあまり来た事はなかったんだけど、ここに来れば倉橋に逢えるかな、なんて、これってほぼストーカー…… やっぱり帰ろう。こんなの良くないよね今度バイトでも逢える訳だし、そう思って5kgのお米だけ買ってスーパーを出ました。はあ…… やっぱ重い…… 2kgにするべきだったかな……
「あっ、希美さん」
私が振り返るとそこには倉橋がいました。うわっ、神!……
「お買物ですか?」
「うん、お米がなかったから」
「あっ、持ちますよ!」
「うん、でもいいよ重いから」
そうだよ、ここで重たい物を持たせたら調子の良い女だと思われるかも……
「大丈夫です。それくらい」
そう言って倉橋はお米を持ってくれました。
「ありがとう……」
「希美さんのアパートってこの辺ですよね」
「うん」
それって部屋まで持って来てくれるってこと…… あっ、そうだオープンキャンパス! 忘れるとこだった。ここまで来たのはそれを伝えるためなんだから。
「ねえ倉橋、今度大学のオープンキャンパスがあるんだけど」
「はい、誠司さんから訊いてますけど」
あっ、そうだった。倉橋は鷹島先輩と親しかったんだ…… でも、ここはやっぱり。
「ねえ、オープンキャンパスに来ない? 私が色々案内するから」
「あっ、はい、クラスの友人も一緒で良いですか」
「うん、良いよ!」
やった! 倉橋とその仲間をゲット。本当は倉橋だけで良いんだけど、周りとも仲良くなった方が良いよね!
「このアパートですか!」
「うん、ここの二階なんだけど……」
「はあ、結構綺麗なアパートですね」
「うん、まあね」
あーあ、倉橋に部屋までお米を持たせてしまった。
「あっ、ありがとう。良かったらお茶でも飲んで行かない」
「あっ、はい。それじゃお邪魔します」
あっ、倉橋を部屋に入れてしまった…… って、私は何を期待してるんだろう。でも、何だか胸がドキドキする。
「あっ、ちょっ、ちょっと待ってね。コーヒーで良い?」
「はい、リビング結構広いんですね」
「うん、ここのアパートが一番リビングが広かったから…… お待たせどうぞ」
私はコーヒーを出しました。
「あの、これってドリップして淹れたんですか」
「うん、ドリップというかコーヒーメーカーだよ、ミルが付いてるから豆から挽いてるの、こっちの方が美味しいから」
「はい、風味が違います。美味しいです」
私はミルクと砂糖を入れたコーヒーを飲みますけど、倉橋はそのままブラックで飲んでます。
「えっ、ブラックなの?」
「はい、コーヒーはブラックの方が香りや味が楽しめますから」
倉橋って何から何まで大人なのね…… それに比べて私は、まだまだ子供っぽいかな、私ってどういう風に思われているんだろう……
「希美さん、ご馳走様でした。そろそろ帰ります」
「あっ、うん…… 今日はありがとう。またね」
「はい、オープンキャンパス楽しみにしてます」
「うん、バイバイ」
私は小さく手を振って彼を見送りました。何だかちょっと嬉しかったけど、もっと一緒にいたかったかな……
今日は北山大学のオープンキャンパスの日です。鷹島先輩に頼まれたので、神谷さんと龍己を誘って大学へ来ました。
「大学生になったらここのキャンパスを歩く事になるんだな」
龍己はもう大学生になった気分のようだ。
「その前に、受験に合格しないとね」
神谷さんは相変わらず手厳しいな……
「それくらい解ってるよ、でも雰囲気を味わっても良いじゃないか。なあ、響」
「まあ、そうだな」
僕は来年の春には間違いなくここを歩いているとは思うけど……
「倉橋君は大丈夫でしょうけど、私は一緒に歩けるかな……」
「神谷なら大丈夫だろう」
龍己はそう言ってるけど……
「あら、ありがとう。伊丹君も一緒だと良いわね」
言わんこっちゃ無い!
「いや、今も一緒に歩いてるじゃないか」
確かに、歩くだけなら今でも一緒なんだけど……
「倉橋、おはよう! こっちで受付をしてね」
早速、希美さんから声を掛けられた。今日の希美さんは白っぽいブラウスに膝丈くらいのピンクのスカートです。スカートの希美さんも凄く似合っていて可愛いと思います。でも、当然彼女を見た二人は僕の顔と希美さんの顔を交互に見て驚いている。
「響、この美人は誰だよ!」
「流石に美人には反応が早いわね!」
この二人は他に言う事はないのか、まったく恥ずかしい……
「こちらは僕のバイトの先輩です」
「初めまして、倉橋の友達の冬野希美です」
あっ、友達、だったんですか……
「私は、倉橋君の友達の神谷冬美です」
「伊丹龍己です」
「二人ともよろしくね!」
希美さんは満面の笑みで僕達を迎えてくれた。
「あっ、イケメン君おはよう」
この人も同じ大学だったんだ確か、三嶋さんだっけ……
「おはようございます」
「希美、スカートなんて珍しいね! どうしたの?」
「うん、ちょっとね……」
スカートとかあまり履かないんだ……?
「押忍、響!」
「おはようございます誠司さん」
「冬野が案内するのか」
「はい」
「うん、それじゃ頼む。響、また後でな」
「はい」
「希美、しっかり頑張ってね!」
「もう、そんなんじゃないから……」
僕達は希美さんの案内でまず、理系の理工学部と農学部の棟に来ました。
「ここの東側が理工学部、西側が農学部だよ」
僕の隣には希美さん、その後ろから龍己と神谷さんがついて来てますけど…… 後ろの二人は何だか僕の事を不審に思っている?
「理工学部でロボットの展示と向こうの農学部では北山産米でおにぎりの販売をしてるの! まあ、こんなとこかな農学部では新種米の研究とかもやってるんだけどね」
理系エリアをある程度見た時でした。
「あれ、こんなところに扉とかあったかな……」
そう言って希美さんが扉を開けようとしますが……
「あれ、開かない! 鍵が掛かってる?」
「ここは、何の部屋ですか?」
僕が訊いたら……
「うん、それが案内の地図に載ってないんだよね、私は文系だからこっちの事はあまり詳しくないんだよ」
「でも、不思議ね、鍵穴とか無いみたいだけど」
神谷さんがそう言ったあと龍己までが……
「そう言えば、付いてないな…… これって開かずの扉だったりして!」
「馬鹿ね、そんな訳ないでしょう。きっと地図に載せ忘れただけよ」
神谷さんっていつも冷静だよね……
「そうだよね、それじゃ、芸術デザイン学部の方へ案内するね」
そういう事で僕達は文系の棟へ戻って来ました。
「それじゃ、この辺でちょっと待っててね」
そう言って希美さんは、受付の誠司さんのところへ行って何か話しているみたいです。
「なあ響、希美さんとかなり仲が良いみたいだな」
「ああ、バイトでも色々教えてもらってるから」
「本当にそれだけ、かなり親密な感じがするんだけど」
「神谷、それって女の勘ってやつか?」
「そうね、まあ、そんなとこかしら…… はあ……」
そう言った後、神谷さんは溜息混じりに俯いているみたいだ。
しかし、あの地図に載っていなかった謎の扉、あの中には教室、若しくは研究室とかがあるんだろうけど…… ちょっと気になる。まあ、あいつとは関係ないとは思うけど……
北山大学の農学部の側に違和感のある扉が…… 鍵が掛かっているのでどうでも良いけど、あいつが関係してないことを願いたい。