4 謎の女、来夢
お待たせしました第4話を更新しました。
初めてのバイトでは希美さんの様子が可笑しかったので送りますと告げたら逃げるように帰って行きました。勉強会では神谷さんの様子が変でした。これって、僕は嫌われているのか……
数日後、朝起きたら来夢がいた。
「あっ、おはよう!」
「はあ…… また来てたんですか、しかも朝っぱらから」
「別に良いでしょう! それより朝食を作ったから一緒に食べようよ」
まあ、朝食は助かる。普段はトースト一枚と牛乳一杯というのが定番、時には朝食抜きの時もある。それに比べて目玉焼きに、アスパラのベーコン巻き、それにサラダまで……
「あれ、アスパラや野菜はどうしたんですか? 家には無いはずですけど」
「そりゃ、買いましたよ」
「えっ、買い物に行ったんですか?」
「うん」
うん! って可愛い顔して言われても……
「えっ! どこに行ったんですか?」
「あっ、未来のスーパーだよ」
「あっ、未来ですか!」
まさか、街に出たのかと……
「うん、だってこの時代で未来のカードやお金は使えないし、この辺のスーパーってかなり高いよね」
「 いや、買い物までしてもらってありがとうございます。えっ!…… この辺のスーパーって現代のスーパーにもやっぱり行ったんですか?」
「うん、市場調査にね! 三県くらい回ったけどやっぱり未来に比べると高いよ!」
「三軒も回ったんですか! って、いや、そうじゃなくて……」
「あっ、大丈夫よ、私の事を知ってる人はいないから! みんな知らない人ばかりだから」
いや、そうかもだけど……
「あんまり目立たないでください」
「大丈夫、大丈夫! もうこっちのスーパーは高いのが解ったからもう行かないから、それに昼間は両隣ともお留守みたいだし」
いや、スーパーやアパートの近くだけの問題じゃないから……
「来夢さん、なるべく家でおとなしくしててください」
「はい、はい! ねえ、それよりこの間部屋に来ていた女の子、響君に好意があるんじゃない」
この間、部屋に…… 神谷さんの事かな。
「えっ、そんな事は…… それに彼女だって受験生ですからそれは……」
「甘いわね! 彼女とあなたとの会話を訊いてたら彼女は不器用なりに伝えていたと思うけど、それに結構密着して響君のこと見つめてたんじゃない」
聞いていたのか、というか見てたの…… でも、そうなのかな……
「でも、僕はそのつもりはないですから」
「他に気になる女性でもいるの」
「他に気になる女性……」
そんな人は…… ! 希美さん…… いや、彼女は僕の手に届くような事はない。高嶺の花だから……
「別にいないと思います」
「ふーんそうか、じゃあこの間の神谷さんだっけ、考えてあげたら」
来夢はそういうけど、僕の未来の彼女の事は知っているんじゃ…… それこそ未来の僕の奥さんが誰かも知っているんじゃ…… いや、ひょっとしたら奥さんどころか彼女すらいないのか……
「来夢さんは僕の奥さんになる人とか知っているんですよね」
「うーん、調べれば判るけど、知りたい?」
「いや、その…… 未来は決まっているんだろうから間違ったら未来が変わってしまう訳だから……」
いや、本当の事ってどうなんだろう……
「別にそんなのは考えなくて良いよ。今響君がやりたい事が正解なのよ! つまり、それが未来に繋がっているんだから」
確かに来夢が言っている事は解るけど…… などと思って時計を見ると、やばい! 遅れる。
「来夢さん、学校に行くから家におとなしくいてください。お願いします」
そう言って僕は学校へ行った。それにしても来夢は普段何をしているんだろう…… こっちにはいつまでいるんだろうか。
私、冬野希美は、この間の件以来倉橋とは逢えていません。私のバイトのシフトは火木土で倉橋のシフトは月火木なんです。でも、この間、彼が送ってくれると言うのに、私は慌てて逃げるようにアパートへ戻ってしまった。変な風に思われていないかな……
「希美、今日もバイトなの?」
あっ、智ちゃんか……
「ううん、今日は金曜だからバイトは無いよ!」
「それじゃZUに付き合ってよ!」
えっ、この間行かなかったのかな……
「この間も行ったんじゃないの……」
「ううん、先週は希美がバイトだからって言ってたから智は行ってないよ」
はあ…… 智ちゃんってそういえば一人じゃ行かない人でしたね!
「仕方ない付き合ってやるか」
「ありがとう! それで、あのイケメン君とはどうなったの?」
えっ、イケメン君? えっと、あっ、倉橋のことかな……
「別に何もないよ」
「えっ、何も言ってないの?」
智ちゃんは私の事をなんだと思っているんだろう……
「おーい、冬野」
うん、この声は……
「鷹島先輩!」
「あっ、水嶋もいたのか、二人とも来週末のオープンキャンパスなんだけど」
「はい……」
多分、手伝の話だよね……
「悪いけど、ちょっと手伝って欲しいんだ! 良いかな」
「あっ、私は良いですよ」
「うん、悪いな冬野。水嶋は?」
「あっ、私は…… 大丈夫です……」
「それじゃ、よろしく! それと後輩とかにもオープンキャンパスの告知を頼むな」
「はい」
そう頼まれましたけど…… 誰か後輩にってどうしようかな……
「ねえ希美、後輩って誰かいる?」
「うーん、思いあたらないかな、智ちゃんは?」
「私も高校の時、部活とかはやってなかったからな…… あっ、イケメン君は?」
「イケメン君?」
あっ、倉橋……
「うん、でも、連絡先とか知らないから……」
「えっ、そうなの?」
「うん、今度バイトの時に訊いてみようかな……」
「えっ、バイト一緒なの?」
「うん、先週から偶々ね!」
「えっ、それは初耳なんですけど!」
いや、それは言ってないから……
「ちょっと智にも詳しく話してもらおうか」
「えっ、ちょっと智ちゃん……」
私は智ちゃんに引っ張られるように学食へ連れて行かれました。ZUに行くんじゃなかったのかな……
学校が終わり今日は明奈ちゃんの家庭教師の日だ。今日から入試の模試をやって彼女の苦手なところを見つけないと、でも二教科くらいやれるかな…… そうなると、今日二教科、明日は土曜だから三教科出来るかな…… と考えている間に明奈ちゃんの家に到着です。
『ピンポン!』
僕がインターフォンを鳴らすと、扉が開きました。
「こんにちは倉橋ですけど……」
そう言った途端、僕は抱きしめられてしまった。
「えっ、明奈ちゃん?」
えっと、これって…… しばらくすると満足したのか、僕は解放されて家の中へ入れてもらえた。
「あの……」
「倉橋さん明奈にテストをお願いします」
うーん、さっきのはなんだったんだろう、家には誰もいないのかな……
「明奈ちゃん、さっきのは……」
「あっ、気にしないで! ちょっとだけやる気をもらっただけだから」
やる気…… うーん、よく判らないけど、まあ良いか。それにしても明奈ちゃんって良い香りがした。いや、希美さんもそう言えば…… 女の子って中学生でも大学生でもそういう事なのか、でもあれってシャンプー、それともボディソープ? それなら僕も毎日やってるけど…… うーん、よく判らん。それよりテストだ!
「それじゃ、今日二教科やって、明日三教科テストをするから」
「はい、明奈がんばる!」
うーん、相変わらず返事は良いんだよな…… 僕は国語のテストを始めた時、玄関の扉が開いた音がした。誰か帰って来たのかな……
「よお響、来てたのか」
先輩だった。僕は頭をさげながら……
「あの、テスト中なので」
そう言うと部屋に来るように促された。彼女の様子をちょっと見た後、僕は誠司さんの部屋へ行った。
「誠司さん、どうかしたんですか?」
「響、おまえは北山大学へ来るんだよな」
その事は前にも話したと思いますけど……
「はい、芸術デザイン学部です」
「そうか、実は来週末にオープンキャンパスをするんだけど来ないか」
オープンキャンパス……
「はい、別に良いですけど…… 何をするんですか?」
「まあ、簡単に言えばうちの大学ではどういう事を学べるのかとか、キャンパス内はどんな感じなのか、サークルはどんなのがあるのかとかの紹介をするんだ」
「はあ、そうですか……」
なんとなく、面倒そうだな……
「おい、話を聞いただけで嫌がるなよ!」
「いえ、別に嫌がってませんけど……」
「じゃあ、来るんだな!」
「本城キャンパスですよね」
「ああ、待ってるからな!」
本当は面倒臭いけど、日頃お世話になっている先輩の頼みなので仕方ないかな……
この後、明奈ちゃんのテストは順調に進み三教科終える事が出来た。
「どう、今日のテストで解らなかったとことかない?」
「うーん、倉橋さんの好きな食べ物とか」
そんなの訊いてどうするんだ。
「明奈ちゃん、それは関係ないでしょう! テストで解らなかった事は?」
「うーん、多分大丈夫」
「それじゃ、明日二教科やって答え合わせをしていこう」
「はい」
はあ…… 何とか今日も終わった。最初明奈ちゃんに抱きつかれたときはどうなるかと思ったけど……
先輩にオープンキャンパスに来るように誘われましたが、ちょっと面倒です。別にオープンキャンパスとかは行かなくても……