21 UFO騒動
お待たせしました第21話を更新しました。
街のカフェで舞龍と圭子を目撃した響だが、その後二人を見失ってしまった。しかし、それはダミーだという事らしい……
「どうやら君は舞龍に利用されたようだね!」
そう言われ、癪ではあるが、アリバイ工作に利用されたという事に間違いはないだろう。柴咲副部長にそう言われても仕方がないことではある。
「それで、そのダミーというのは……」
「ダミー人形みたいな物よ!」
来夢がそう簡単に説明したけど、今ひとつよく判らない。ただ未来では、人間のような立体的な形をした人形を作ることが出来るらしい、しかもただ空気を入れただけの物らしいが、どういう仕組みなのか……
「響君、こんな感じなんだけどね!」
来夢が僕の背後から現れたと思ったら、僕からちょっと離れたところで……
『バーン!』
破裂した! 僕は驚いたと言うより呆気に取られた。
「えっ、来夢さんが破裂した……」
「これがダミーだよ!」
僕は、背後から再び現れた来夢に声を掛けられた。
「この来夢さんは本物、ダミー?」
叔父さんと副部長さんには笑われてしまったが、僕と希美さんは何が何だか判らなくなってしまった。
「まあ、百聞は一見に如かずって事だね」
空気を入れただけの人形だけど、姿形は本物そのものだ! それをスマホで動かして、しかもいらなくなったら破裂させて処分出来るという便利で都合の良い人形だ。
「こんなおもちゃがあるんですか!」
「いや…… おもちゃというか、一般販売はしてないんだ! 警備局員は誰でも持っているが……」
副部長はそう言うけど、警備局員はみんな持っているんだ…… まあ、警備をする上で使っているんだと思いたい。
という事は、舞龍は山田か警備部長あたりからダミーを入手して今回使ったんだと思う。そうなると、ダミーが舞龍と圭子だったことから多分操作していたのは、賢人だろうと思う。
「それじゃ、今回ダミーを操作していたのは賢人という事ですか?」
僕は改めて訊いてみた。僕が知っている組織のメンバーは、舞龍、圭子、賢人、それに山田の四人だ! 警備部長は、まだよく判らない事が多いので僕の中ではまだ組織のメンバーとは認めていない。
「まあ、舞龍と圭子が脱走の手引きをしたのは間違いないだろう。だからダミーを舞龍と圭子にして響君に会わせるために賢人が操作役をしていたんだと思う」
じゃあ、警備部長は関係なかった……? 二十一世紀に来ていたのは賢人だけだったのか……
「いや、ちょっと待って、そうとも限らないよ、もう一人いたよね、響君」
来夢にそう言われたけど、誰だっけ…… 僕が判らずに考えていると来夢が言った。
「ほら、二十世紀の東京国立博物館で黒っぽい服を着てた大男に拘束されたでしょう」
あっ、確かにそんなのがいたな! 黒っぽい服で筋肉質の大男、あれに声を掛けられたときはとても逃げられないと思った。
「そいつは多分、鬼崎という奴だ」
副部長の話では、一度捕まえた時、舞龍から邪魔をされて逃げられた男だという。
「なるほど、どうやら君達はこの件について本当に知りすぎてしまったようだね」
その言い方は、僕を暗殺でもするつもりなのか……
「仕方がない君達の事はしばらくの間、監視させてもらう」
「監視?」
確かに叔父さんがそんな事を言っていたけど、どうするつもりなんだ。僕の身体に何か埋め込むつもりか……
「心配しなくても良いよ、僕が二十一世紀に行って君達を勝手に監視するだけだから」
「副部長さんは僕のアパートに来るという事ですか?」
いや、それは困る。来夢に居座られるのも困るが、見ず知らずの男と同じ部屋に居るのはもっと無理だ!
「その副部長さんって言うのはやめてくれ! 柴咲で良いよ」
いや、いくらなんでも呼び捨ては…… 副部長は年齢的にも三十は超えているだろうし…… いや、そういう問題じゃない!
「とにかく、何かあったらタイムマシンから駆けつけるからスマホの番号とアドレスを交換しよう」
「あの、柴咲さんはタイムマシンで生活するんですか」
「ああ、君の部屋に押しかけたりしないから」
「ああ、はい、判りました」
「OK! それじゃ何かあったら連絡してくれ! 時空ネットワークサービスは使ってるんだよな」
「はい」
僕と希美さんは柴咲副部長とスマホの番号とアドレス交換をした。はあ…… 何だか知らないうちにとことん巻き込まれて行ってるな。
今回はこれで警備局から解放された。来夢はこの後、街の方へ行きたかったようだが、僕も希美さんも少しでも早く二十一世紀に戻りたかったのでタイムマシンが止めてある駐機場へJD3Sで戻った。
「来夢さんは街に行って来ても良かったのに!」
希美さんはそう言ったけど……
「一人で行っても楽しくないでしょう!」
来夢は、ちょっとつまらなそうだったけど、今回は色々とあり過ぎて疲れた。しかし、帰りのタイムマシンの操作は僕がやる事になっている。まあ、操作と行ってもスマホで設定するだけだけど……
「響君は、操作の方は大丈夫だよね」
来夢からそう言われたけど、もうすでに年号も入力して、あとはスリップボタンをタップするだけのところまで終わっていた。
「まあ、響君は問題なしだね」
来夢がそう言った時、希美さんが頬を膨らませて来夢の事を見ていた。
「でも響君、帰りはホームボタンだけでも良かったんだけどね!」
あっ、そうか…… ホーム設定をしていたんだった。
「来夢さん、そう言うのは早く言ってくださいよ」
そう言ったけど、来夢は僕の方を見て微笑むだけだった。
その後、僕の操作で二十一世紀のスキー場近くの上空に戻って来た。
「来夢さん、後はサーチを使って着地場所を探せば良いんですよね」
「そうそう、響君がタイムマシンの操作をしてくれれば私は楽で良いわ!」
操作と言ってもスマホで設定するだけだから大した事はしてないんだけどな、それにほとんどAIがやってくれる訳だから……
最近はいろんな事がありすぎて大変でした。でも、タイムマシンの操作はちょっと面白かったかな!
七月中旬、大学は夏休みになりました。倉橋も定期試験が終われば夏休みとか言っていたけど、最近は逢ってないかな……
コンビニのバイトでも、最近一緒にいる事が少ないし、鷹島先輩の妹さん、えっと…… 明奈ちゃんだっけ? 彼女の家庭教師もやってるって言ってたから、そっちの方が大変なんだろうか…… でも、少しは私の相手もして欲しいかな…… なんてそんな事を思っていた時、智ちゃんに声を掛けられました。
「希美! 知ってる?」
「何を?」
いきなり智ちゃんから信じられない事を訊きました。
「希美、最近城南市上空でUFOの目撃が増えているんだって!」
智ちゃんからとんでもない話を訊き私はびっくりしました。
「智ちゃんも見たの?」
恐る恐る私は訊きました。だって、そのUFOに私は乗っていた、いや、もっと言うと操縦していたかも知れない訳だから……
「私も見たよ! 未玖なんて最近よく見るって言ってたよ」
「よく見るって、そんな毎日飛んでる訳じゃ無いでしょう!」
私はそう言いましたけど……
「うーん、私は偶にそれらしいのを見たかな…… でも未玖は、ほぼ毎日見るって言ってたよ」
智ちゃんにそう言われてちょっと不安になったけど、まあ、大丈夫だよね! でも、倉橋には言ってた方が良いかな……
私は倉橋に電話したけど…… 出てくれなかったのでLINEをしました。見てくれれば連絡あると思うけど…… 城南市上空を毎日のようにUFOが飛んでる? それって、警備局や舞龍達のタイムマシンという事だよね……
これも柴咲さんに連絡した方が良いのかな……
やっぱり倉橋に話してからにしよう。
希美さんからLINEが来てる事に気付いていなかった僕は明奈ちゃんの家で家庭教師をしていた。
「倉橋さん知ってますか?」
「何を?」
「今、中学校で話題になっているんだけど、城南市の上空でよくUFOが目撃されているんですよ!」
「えっ、UFO?」
それは、警備局のタイムマシン? それとも……
「UFOなんて、何かの間違いじゃ」
「私も何かの見間違いだと思ったんだけど、私も見たんですよバケットハット型のを!」
バケットハット! それは、来夢のタイムマシン。最近は頻繁に過去や未来によく行っているけど、まさか頻繁に目撃されていたとは……
「倉橋さんは見たことないですか?」
「いや、僕は…… 春の星空教室の時にそれらしい光を見たかな」
そう、あれから全ては始まったんだよ! それがこんなに話が大きくなって、ここまで巻き込まれてしまうとは……
僕は頭を抱えてしまった……
「どうかしたんですか?」
まあ、彼女の前でこんな仕草をすればそう思われても仕方がないかな……
「いや、何でもないよ! 僕も受験生だからちょっとナーバスになってるのかな」
いや、受験は余裕だ! でも、困った時のこの言葉は便利な物だ。
舞龍と圭子については、僕をアリバイの道具に利用されただけだった。
しかし、舞龍達が二十一世紀に潜んでいるという事で、沢山のUFOが目撃されているとは……
 




