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来孫  作者: 赤坂秀一
第二章 闇の組織
16/52

15 エラー紙幣

お待たせしました第15話を更新しました。


なんとか謎の組織から屏風を守る事が出来た。しかし、組織に来夢の知り合いがいたとは……

 何とか風神雷神図の屏風を盗まれずに阻止する事が出来た。しかし、謎も残った。


 警備局を裏切ったと思われていた警備部長は、組織に拘束されているようだ。しかし、これも本当のところはよく判らない。


 しかも、組織にいた舞龍(まろん)という女は来夢(らいむ)が中学の頃の友達だったようなのだが……


 だからと言って舞龍と面識がない訳ではないだろうけど、このような事に首を突っ込むのは控えるべきだと思った。今回は偶々僕達が拘束されているところに警備局が来てくれたから良かったものの、下手したら僕も来夢も命がなかったかも知れないからだ……


「来夢さん、叔父さんが心配しているからもう辞めましょう」


「うーん…… でも、気になるんだよね」


「何がですか?」


「何故、舞龍があんな風になったのか」


「でも、あの時警備局が入って来なかったらどうなっていたか……」


「あっ、あれ、あれは私が呼んだんだよ」


 えっ、来夢が呼んだ? どういう事だ! まさか、口から出任せ…… 僕の顔は何か気持ち悪い物を踏んだ時のような何とも言えない顔で来夢の事を見ていた。


「呼んだって、どういう事ですか?」


 不審は募るばかりだ。あの時来夢はコソコソと何かをしてるのは判ったが、連絡する余裕はなかったはず、それにあの時代にスマホなんて物はないから電波も無いはず……


「あの時、スマホで叔父さんに電話したんだよ!」


「でも、スマホの電波なんてないですよね! それに助けも呼んでないですよね」


 僕の言った事に、来夢は慌てる事なく笑顔で答えた。


「うん、でも私達の居場所とか、あいつらの動機とかを聞き出して、そのままスマホで流していたの! あと電波は、前にも言ったけど時空電話だよ」


 あっ、確かにそんな便利な物があるとか言ってたな…… なるほど、それで警備局員が来たのか。


「そうだったんですね」


 僕は来夢が淹れてくれたコーヒーを啜りながら納得した。


「はあ、もう少しリアクションがあっても良くない」


 来夢は残念そうにそう言った。


(ひびき)君、私疲れたからタイムマシンに戻るね」


 来夢はそう言って戻って行った。ちょっと不機嫌そうだったけど…… でも流石にあのタイムトラベルはちょっと疲れているようだ。足元は覚束ないし目の下にも黒いものが…… まあ、一晩寝れば体調も機嫌も良くなるだろう。僕はそう思った。





 倉橋(くらはし)と来夢さんがそんな事になっていたとは知らない私、冬野希美(ふゆののぞみ)は、講義のノートを写させてもらうために(とも)ちゃんに連絡を取っていた。


『それで、もう熱は下がったの?』


「うん、お陰様でね! 倉橋が病院に連れて行ってくれたから」


『なに、あのイケメン君そんな事してくれたの?』


 そう言うところには食い付いて来るんだよね……


「うん、意外と優しいんだよね」


『それ、智にももっと詳しく教えなさいよ!』


「いや、それだけだよ……」


 智ちゃんは何を期待していたんだろう。それよりもノートを貸して欲しいと頼んだら持って来てくれるということだった! うん、ありがたいけど、何か企んでるような……


「智ちゃん、良かったらお買い物もお願いしたいんだけど……」


 ちょっと虫が良すぎるかな、まあ駄目元で訊いてみたらOKの返事をもらった。言ってみるもんだな、なにか良い事でもあったのかな……


 私が休んでいる間色々とあったんだろうけど、講義もちょっと休んでいるから取り戻さないと…… そう思っている時に部屋のチャイムがなった。智ちゃんが来たみたいだ。


「希美! 大丈夫?」


「智ちゃんありがとう」


 私は智ちゃんを部屋に招き入れた。


「それで、イケメン君とはどうなの?」


「どうって…… お粥を作ってくれたり、病院へ連れて行ってくれたりだけど」


「それだけ?」


 智ちゃんは物足りないようで、なんだか哀れな人でも見るような残念な顔をしている。


「うん…… だって、熱があって身体が怠くて仕方なかったんだよ」


 私がそう言うと、智ちゃんは、倉橋がそんな私を抱きしめて一緒に添い寝してくれたりしなかったのかと訊いた。


 いや、そんな事されたら私は…… 多分顔を真っ赤にして余計に熱が上がっていただろうと思う。私は両手を頬にあて、そんな妄想していたら……


「なんだ、つまらない」


 智ちゃんはつまらなそうにそう呟いた。もう、私の事を何だと思っているのか……


「それと、買い物して来たよ!」


 智ちゃんは、面白くなさそうに棒読みにそう言っている。


「あっ、ありがとう。今、お金を渡すから」


 私は、財布を取り出し智ちゃんに買い物代を渡した。それより先週末に合コンに行ったんじゃなかったかな…… 私はそれとなく訊いてみた。


「あっ、合コンね! 行ったよ。あんまりこれと言って良い人はいなかったけど、面倒臭そうなのはいたかな……」


 まあ、結果としては今ひとつだったようだ。


「でも、気を付けないと駄目だよ! 合コンって、面識の無いいろんなメンツがくるから」


 そう注意喚起だけはしておくけど……


「うん、大丈夫大丈夫」


 智ちゃんは相変わらずのノリで返事をした。楽天家だ。


「それより大学の方はいつから来るの?」


「うん、明日からは行くつもり」


 私がそう言うと智ちゃんなりにちょっとは心配してくれたようだけど、いつまでも休んでられないからね。そうして、智ちゃんは帰って行った。


 私はかなり気分が良くなったので倉橋の部屋へ行ってみる事にした。倉橋いるかな……


 私はそう思って壁を開きましたけど……


「倉橋いる?」


 私の声に応えたのは来夢さんでした。


「希美さん久しぶり! 風邪は大丈夫?」


 倉橋が喋っちゃったのかな…… もう、お喋りだな!


「私に言ってくれれば十五分で治したのに!」


 えっ、十五分……


「未来の薬かなんかですか?」


「薬? 響君に訊いてない?」


 えっ、倉橋? 多分何も訊いてないと思うけど、私も意識が朦朧としてたからな……


「いや、多分私が訊いてなかったと思います」


「そうか! でも二十世紀に行けなかったのはちょっと残念だったかな」


 えっ、二十世紀? 私はその話を詳しく来夢さんから訊きましたけど、なんと倉橋は私に黙って二十世紀に来夢さんと二人っきりでタイムトラベルしていたとは、私も行きたかったな……


「あっ、私も倉橋と一緒に……」


「まあ、またそのうちにね」


 来夢さんはそういうけど……


「二十世紀には旅行で行ったんですですか」


 私はそれとなく訊いてみたんだけど…… 東京国立博物館とか風神雷神図の屏風の事、謎の組織の事を教えてもらいました。私は行かなくて良かったのかな……


 その時、スマホが鳴った! どうやら来夢さんのスマホみたいだけど……


「あっ叔父さん、どうかしたの?」


 来夢さんの叔父さんからみたいだけど、未来からスマホで連絡ってどういう事なのか、でも何かあったのかな?


「うん、そうなの?」


「そういう事ってあるんだね……」


 来夢さんどうしたんだろう、何だか態とらしいというか、行動や態度が不自然なんだけど……


「うん、それじゃね……」


「来夢さんどうかしたんですか?」


「うん、ちょっとね……」


「ただいま」


 あっ、倉橋(くらはし)が帰って来た。


「響君大変だよ!」


 私には言えないけど、倉橋には言うんだ……


「どうかしたんですか」


「あの時使った一万円札なんだけど……」


 一万円札がどうかしたのかな?


「1985年でエラー紙幣があるって話題になってるみたい」


「えーっ! それはちょっと不味くないですか」


「うん……」


「例のあの件ですよね……」


 何があったのか来夢さんと倉橋はオロオロしてる。何だか私だけ蚊帳の外みたいで気になるんだけど……


「何があったんですか?」


 私が訊いたら、倉橋が過去の世界で現代の一万円札を使ったという事でした。


「記号番号の色が違った! それに誰かが気付いた?」


「えっ、番号の色って違うの?」


 私がそう言ったので、来夢さんから一万円札を出すように言われた。私の財布の中に一万円札は三枚ありました。同じように倉橋も二枚の一万円札を出しましたけど…… これって一体なに?


 五枚のうちの四枚は黒色の記号番号だけど、一枚は茶色ぽい色というか褐色の記号番号の一万円札がありました。


「これって偽札?」


 私が訳も判らずそんな事を言ってしまった。まあ、そんな訳ないか、倉橋が持っていたお金だもんね!


「違います! これは1993年以降に発行された紙幣で番号が一巡したから色を変えたんです」


 倉橋がちょっとムキになってそう言った。要するに1993年以降に発行された紙幣を倉橋が1985年で使って流通させたという事か……


「でも、未来から持ち込まれたとか思われていないんでしょう」


 私がそう言うと…… 来夢さんはコクッと頷いた。


「今のところはエラー紙幣という扱いになってるらしいけど……」


「それなら問題ないでしょう」


 その紙幣が本当に倉橋が使った物なのか、元々実際にエラー紙幣が数枚あったのかも知れないし、倉橋が使ったものかも知れないけど、取り敢えず問題ないでしょう。

響の軽率な行動で過去の世界に問題が起きたが、そこまで深刻な問題ではなかった。

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