14 組織と遭遇
お待たせしました第14話を更新しました。
希美を病院へ連れて行ってた時、来夢から組織の事で電話があった。何やら過去の物を盗むようだが、響は来夢と部屋で合流する事になった。
これから二十世紀へ行きます。来夢さんが組織の行動をキャッチしたらしいんだが……
「組織は何処に現れるんですか」
「えっと、1985年の今日東京国立博物館なんだけど本館から美術品を盗み出すみたいなんだよね」
今度は博物館か…… また、美術品を盗んで未来で売るつもりなんだろうけど、そんな事をしたら未来が変わってしまう。そこは絶対に阻止したい!
でも、この情報って時空管理警備局は知らないんだろうか……
「これって叔父さん達も来るんですよね」
「うん、警備局は来ると思う叔父さんは来ないけどね!」
「えっ、でも、今までだって来てたじゃないですか」
「でも、局長なんだから早々に現場には来ないよ!」
何だかよく判らないが……
「それで、博物館から何を盗むつもりなんですか?」
「狙いは風神雷神図の屏風みたいなんだけどね」
「屏風!?」
来夢の話では、未来で見た過去の犯罪記録にそう記されていたらしいんだけど屏風って結構大きいんじゃないのか、どうやって盗むつもりなんだ。
「過去の犯罪記録に犯人の名前は書いて無いんですか」
「そこが削除されてるんだよ!」
まあ、犯人にとって都合の悪いところは判らないという事か…… しかし、警備局の内通者も拘束された訳だから情報漏洩はあってないと思うんだけど……
僕達はバケットハットの形のようなシルバーのUFO、じゃなかったタイムマシンが隠されてる山中へ来た。このタイムマシンに乗るのも久しぶりだ。と言っても二度目だけど……
前に来たのは、希美さんの好奇心で未来へ行った時だったかな。
「それじゃ、響君乗るからこっちへ」
そして、オレンジ色の光に包まれてUFOの中へ。
来夢は、スマホを使ってタイムマシンを起動し、僕達は二十世紀の東京国立博物館へ向かった。取り敢えず大都会東京となるとタイムマシンをその辺に隠す事も出来ないので奥多摩の山中に隠す事にした。
「じゃ、まず上野の森に移動だね」
来夢の一声でファスナーを使って入口を作り台東区上野公園の人気の少ない場所に出て来た。もしここを人に見られたら宇宙人や知的生命体などと思われて大問題になるんだろうな……
「響君、博物館は何処にあるの?」
「僕に訊かないで下さいよ! 東京なんて滅多に来ないから……」
ようは、田舎者なのだが…… 大体この時代に僕はまだ存在していない! まあ、来夢もそうだけど……
「仕方ない、GPS電子地図を使うか」
「そういう便利なものを持ってるなら最初から使って下さい」
「だってさ…… やば!」
その時、来夢がいきなり僕の手を握り公園の隅に……
ちょっといきなりなんなんだ! 女性にこんな事をされると焦ってしまう。
「ど、どうかしたんですか?」
「静かに! あれ」
来夢が指を指す方に怪しげな黒っぽい服を着た男達がいた。
「あれって、まさか謎の組織?」
僕がそう訊くと、来夢は首を振り……
「警備局員!」
来夢は平然と答えたけど……
「警備局なら隠れる必要はないと思うけど」
「駄目だよ! 一度拘束されてから、私は局長の親戚って有名になっちゃったから」
それって、警備局にかなり出入りしてるんじゃ……
「私がここにいるのがバレたら叔父さんが飛んで来るから」
来夢はバッグの中からバケットハットと茶色っぽいお洒落なサングラスを出した。
「これだと解らないよね!」
「解らないかも知れないけど
充分怪しいです」
「取り敢えず行くよ」
僕は来夢に手を引っ張られ公園内のトイレの裏側に来た。どうやらここからファスナーを使って博物館の中に入るようだ。
というか、タイムマシンから直接博物館の中に行けば良かったんじゃ……
「もう、なんでこんなに人が多いの?」
そりゃ、大都会東京だから……
「来夢さんも意外と田舎者なんですね!」
「そうだよ!」
そこはあっさり認めるんですね…… まあ、僕も人の事は言えないけど……
そんなやり取りをしながら僕達は博物館の館内に入って来た。
「来夢さん、警備局の人に見つかったら不味いんですよね!」
「そりゃそうよ! さっきも言ったけど、叔父さんに密告られるから」
今回の事は警備局にも見つからないように犯人探しですか…… しかし、こんな昼間から事件を起こすかな? でも、前回は白昼堂々と強盗をしてたか!
「響君、あれ」
そう言って来夢が指を指す先には、見学客とは思えない怪しい人物が…… 見学客ならこのバックヤードには入って来れないはず……
しかも、オレンジ色のパーカーとかを着てるけど余計に目立つんじゃないか。
「響君、つけるよ!」
「でも、警備局員に連絡した方が良いんじゃ」
「それじゃ、私がここにいるのがバレるでしょう」
来夢とコソコソとやり合っている時だった……
「おまえら何者だ!」
僕と来夢は恐る恐る振り返ると、そこには黒っぽい服をを着た男が立っていた。
「あの…… 警備局の方ですか?」
僕がそう訊いたら……
「警備局が来てるのか!」
という事は…… 警備局員ではなく謎の組織? 僕と来夢は逃げる事も出来ず両手を挙げて男の言う通りに従うしかなかった。
「姉貴、鼠が二匹紛れ込んでたぞ!」
僕達が連れて来られたところにその女は居た。女は、僕達の方を見て、ニヤリと笑みを浮かべた。
「おや、来夢じゃないか! 変な帽子にグラサンなんて変装のつもりかい」
知り合いなのか?
「えっと、誰だっけ!」
えっ、知らない人……
「おまえ舐めてんのか! 忘れたとは言わせないぞ」
「舞龍…… だっけ!」
やっぱり知ってるのか……
「ふん、巫山戯やがって、昔は良く連んでただろう」
まさか、来夢さんも昔は悪だった!?
「変な事言わないでくれる! 貴方と一緒にしないで」
この二人は仲が良いのか悪いのか……
「来夢、そんな事言わないでくれ、舞龍も……」
こいつは誰だ!
「賢人、この女は……」
賢人と呼ばれる男は、舞龍の言葉を制した。一体何者なのか……
「それより圭子はどうした」
「さあね、あんな派手な服でうろついてもらうと困るんだけどね」
派手な服? さっきのオレンジ色のパーカーの奴か。
「姉貴、こいつらどうする?」
「そうだね、あの警備局のお偉いさんと一緒に居てもらおうか」
警備局のお偉いさんって誰だ! まさか、まだ内通者がいるのか! それとも……
来夢はコソコソと何かしてるけど、何をするつもりだ。
「舞龍、今度は何を盗む気なの?」
いや、来夢は何を訊いているのか、それはここに来る前に言ってなかったか。
「教えて欲しい?」
「本館のバッグヤードでコソコソしないと駄目な物なの?」
「ふん、何とでも言いな! 来夢、おまえ自分の立場が判ってるのか」
「判ってるよ! 何を盗むの」
来夢は結構冷静だな……
「まあ、良いだろう、教えてやるよ」
「姉貴! 本当に良いのか」
僕達を連れて来た仲間の男は心配そうに訊いている。
「良いんだよ! あたいが今度狙っているのは風神雷神図の屏風だよ! あれを欲しいという人がいてね」
やっぱりそうか…… しかし、このままでは、僕らもどうなる事か…… その時だった!
『バタン!』
「時空管理警備局だ! おとなしくしろ」
えっ、何故ここに? 僕達は何も連絡していないはずなのに……
奴等も慌ててバックヤードの奥の方へ逃げて行く。警備局員もそれを追って行くが……
「響君逃げるよ!」
来夢が僕の耳元で囁く。ちょっと気持ちが悪いんだけど…… しかし、そんな事を言っている暇はない。
奴等もバックヤードの奥からファスナーみたいな物を使って逃走したようだ。
僕は来夢に手を引かれ博物館の外へ出て来たが、背後から警備局員が追ってくる。
何故僕達を追って来るのか? まあ捕まっても怒られるだけだからと思うけど、来夢は必死のようだ。仕方ない走るか!
その時、背後からタクシーが来るのが見えた。警備局員も追って来るので、僕は迷わずタクシーを停めた。
「来夢さん乗って!」
「でも、お金が……」
「良いから!」
そう言いながら僕等はタクシーに乗った。
「秋葉原まで」
別に行先は何処でも良かった。とにかく来夢は警備局員には捕まりたく無かったようだから。
秋葉原に着いて来夢が訊いた。
「お金、どうしたの?」
「ああ、この時代の一万円札は、今のお札と同じ福沢諭吉なんです」
「だから、普通に使えたの?」
「はい、正確に言えば、記号番号の色が違うかも知れないけど、そこまで見ないでしょう」
「それじゃ、五千円札や千円札も使えるの?」
「いえ、この時代の五千円札は新渡戸稲造、千円札は夏目漱石なので、今のお札は使えないんです。まだ発行されてませんから」
そんな話をした後、僕達は現代へ戻る為タイムマシンへ戻りたいんだけど、人が多くてファスナーが使えない。
「もうこんなに人が多いと落ち着かない! うーん仕方ない、お互い公衆トイレからファスナーを使ってタイムマシンへ戻ろう」
まあ確かに、この大都会で人がいない場所はその辺かな…… そういう事で、来夢は女子トイレから、僕は男子トイレからタイムマシンへ戻った。
「はあ…… タイムトラベルって大変ですね!」
「でも、このドキドキ感がたまらないでしょう」
来夢は呑気にそう言って、僕達は現代に戻って来た…… しかし、そこには来夢の叔父さんが待っていた。
「来夢!」
叔父さんは鬼の形相でこっちを見ている。
「あちゃ……」
今回の件で、来夢はこっぴどく怒られた。しかも、僕までも散々怒られた。何故僕まで……
「いいか、絶対に危ない事をしないように」
そう、言われた時、思い出した。
「あっ叔父さん、警備部長さんのことなんですけど……」
「あっ! あいつがどうかしたのか!」
叔父さんの顔はまだ険しいままだけど、次の瞬間険しさが緩む。
「闇の組織に拘束されているかも知れません」
「何故そう思う?」
「僕等が組織に捕まった時、警備局のお偉いさんと一緒にいてもらうとか言ってたから……」
「そう言えば言ってたね」
来夢が、僕の話に同意した時、叔父さんは渋い顔をしていた。
「判った! あとはこっちで調べるから」
「それと叔父さん、舞龍を覚えてる?」
「ああ、おまえが中学生の頃の友達だよな」
「うん…… 舞龍が組織にいた」
「そうか…… 判った、それも調べる」
叔父さんは、そう言って未来へ戻って行った。
現代に戻って来た響と来夢は、叔父さんに怒られたが、組織の事が少し判った。