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来孫  作者: 赤坂秀一
第二章 闇の組織
14/52

13 北条クリニック

お待たせしました第13話を更新しました。


風邪を引いて熱を出した希美、それを先生を呼び看病をした響。この二人、少しは進展したのかな……

 倉橋(くらはし)って、本当は優しい男の子なんだよね…… 私が風邪をひいた事で、お医者さんを呼んでくれたり、一晩中側にいてくれたり、お粥を作ってくれたり、優しいと言うより忠実(まめ)なのかな、でも私は、そんな倉橋の事が……


「おはようございます希美(のぞみ)さん」


「おはよう……」


 殺風景な私の部屋にはテーブル、その上にはPCと化粧道具がある。その側に倉橋が鍋を持って立っていた。


「具合はどうですか?」


「うん、ちょっと怠いかな……」


「お粥食べれますか?」


 鍋の中身はメールにも書かれていたお粥だった。


「うん、少しだけ食べよかな」


 あんまり食欲は無いんだけど…… 倉橋が折角私のために作ってくれたんだから食べなきゃね!


 倉橋がお粥を装ってくれたのは良いけど、私にお粥が入ったお茶碗を渡してくれません。それどころかスプーンで掬って、ふうふうと冷ました後、私の口元へ……


「えっ!」


 それって、あーんして! って事…… 私は頬が赤くなってると思います。ただでさえ熱っぽいのに、それに凄く恥ずかしいんだけど…… でも、口を開けて一口、うん、美味しい。でも、恥ずかしいやら味がしないやらで、もう、訳がわからない……


「倉橋、私一人で食べれるから、もう……」


 私が照れくさそうにそう言うと彼はお粥の入ったお茶碗とスプーンを私に渡してくれた。


 倉橋も照れくさそうだったけど、お互い顔から火が出るくらい恥ずかしかったんだと思う。でも、このままずっと一緒に居たいかな……


 私が少しずつお粥を食べていると……


「希美さん美味しいですか?」


 倉橋がそう訊いて来た。私はまだ、少し熱があるのと身体が怠い事もあって、正直言って美味しくは感じられないけど、そうは言えないからね、でも、倉橋の気持ちは凄く嬉しい。だから……


「美味しいよ倉橋、ありがとう」


 私がそう言うと……


「それじゃ、僕も食べようかな」


 彼もお茶碗にお粥を装って食べ始めた。なんだか、私に味見させたみたいなんだけど、考え過ぎかな……


 食事も終わり、食器を片付けながら倉橋が言った。


「希美さん、そろそろ病院へ行きますので支度をしてもらっても良いですか? 半ドンらしいので」


「うん…… 半ドンって?」


「土曜日の午後から休みの事らしいです」


「そうなんだ」


「美彩先生がそう言ってました」


 そうか、病院か…… 昨晩先生もそんな事言ってたような……


「それじゃ、僕はお粥を部屋へ戻して来ますので準備してくださいね」


 そう言って倉橋は壁を開き自分の部屋へ戻ってしまった。便利だよね、あれって! 本当は環状線の方のアパートなのに壁一枚で行き来出来るんだから……


 さて、準備だけど…… 服はベッドの側のタンスにあるけど、このまますっぴんで行くのはちょっと…… 取り敢えず、着替えよう。


 私は着替をした後、メイクを始めましたけど、やっぱり面倒だなぁ…… それにファンデの匂いが気持ち悪い。こんなにキツかったかな?


「希美さん、準備出来ましたか」


 あっ、倉橋が戻って来て早々に私を見て言った言葉が……


「化粧はしなくても良いでしょう」


 そりゃあまあ、病院へ行くだけだけど……


「うん、でも流石にすっぴんは…… 無理!」


 すると、倉橋はちょっと考えてから。


「それじゃ、口紅くらいで少しは違うと思いますけど」


 うーん、確かに…… ファンデの香りが気持ち悪いから仕方ない、ルージュだけでアイラインまではいいかな。


「希美さん、タクシーを呼んでも良いですか?」


「えっ、タクシーで行くの?」


「はい、バスじゃ辛いでしょう」


 確かに…… それならすっぴんでも…… いや、やっぱり無理だ!


 そういう事で、私はタクシーで病院へ行く事にした。でも、タクシーってメーターがずっと上がって行くのを見てたら心臓に悪いんだよね……




 僕は希美さんと一緒に北条クリニックに来た。


「あら、(ひひき)君久しぶりね!」


 えっと、この看護師さんは誰だっけ……


「あっ、どうも…… 保険証を」


「あっ、それは受付に出してね! それと体温を測ってね」


 いや、僕じゃ無いんですけど……


「あっ、いえ、患者さんはあちらの女性です」


「あら、響君の彼女さん?」


 はあ…… またこの展開は面倒だ!


 僕は受付に保険証を渡しました。でも……


「あの、ご本人様ですか?」


 いや、保険証の名義を見れば判るでしょう!


「いえ、患者さんはあの女性です」


「では、問診をお願いします」

 そう言われて問診票を渡されたので希美さんのところへ持って行った。


「希美さん、問診票を書かないといけないようです」


「うん、熱を測っているからちょっと待って」


 しかし、患者さんが多いな、前に来たときは十一時くらいにはそんなに多くなかったのに…… と言っても二年くらい前の話だけど。


冬野(ふゆの)さんどうぞ!」


 えっ、もう呼ばれた……


「倉橋、行ってくるね」


 そう言って希美さんは問診票を持ったまま診察室へ入って行ったけど。


「看護師さん、僕達はさっき来たばかりだけど」


「あっ、冬野さんは点滴をするからって美彩(みさ)先生が」


「そうですか……」


「響君は一緒に行かなくて良いの?」


「僕は待合室にいますよ、華奈(かな)さん」


「あら、私の名前覚えていてくれたんだ」


 あっ、そう言えば、自然と名前が出て来た。来た時は覚えてなかったけど。


「一時間くらい点滴が掛かるけど大丈夫?」


 華奈さん、ひょっとして気を遣ってる?


「はい、大丈夫です。看護師さんは中に戻らなくて良いんですか?」


「はいはい、もう戻りますよ!」


 そう言って華奈さんは診察室へ戻って行きました。


 まあ、希美さんが出てくるまで時間があるし、参考書でも見て待つか…… 暇つぶし用に一冊持って来てて良かった。


 それから三十分くらいして、僕は美彩先生に呼ばれました。何故僕が……


「美彩先生、昨晩はありがとうございました」


「ええ、良いのよ。お陰で彼女のお熱も大分下がったみたいだしね」


「それで、どうかしたんですか」


「いや、一人で待合室にいるのは淋しいかなと思って」


 いや、そこまで気を遣ってくれなくても……


「他の患者さんは良いんですか?」


「他の患者? もう診察は終わったわよ」


「まだ、待合室に何人か居ますよ」


「あっ、あれはタクシー待ちの人やお迎え待ちかな、ついでに話し込んでる人もいるみたいだけど」


 病院が社交の場になってる訳か。


 その時、僕のスマホがなりました。こんな時に誰からだろう……


「先生、ちょっとすみません」


 僕は待合室へ戻り電話に出た。電話の主は来夢(らいむ)だった。


『響君、今からちょっと付き合ってもらいたいんだけど……』


 僕は待合室の隅の方へ行き声を潜めて話します。


「今、何処にいるんですか」


『二十三世紀だけど』


 二十三世紀から電話ってどういう事だよ! そうツッコミを入れたいとこだが……


「それで何処に行くんですか?」


 僕がそう訊くと……


『二十世紀だよ! 奴等の動きをキャッチしたから』


 来夢の叔父さんは多分知らないんだろうな……


「良いんですか、そんな勝手な事をして」


『だって、私だって利用されっぱなしは嫌だから』


 やっぱり少しは気にしていたんだ……


「叔父さんには言ったんですか」


『ううん、言ってないよ! 言ったら止められるだろうし』


 やっぱり…… 大丈夫なんだろうか?


「えっと、今病院にいるんですよ」


『病院! どうかしたの?』


「いや、希美さんが……」


『希美さんとそういう関係だったの!』


 何勘違いしてるんだこの人は……


「なに勘違いしてるんですか、希美さんが風邪で熱が高かったから」


『あっ、風邪…… どうして私に言ってくれなかったの? 風邪くらいなら一瞬で治したのに』


 あんたは医者じゃ無いだろう……


「来夢さんに何が出来るんですか?」


『タイムマシンの医療ボックスに入れば十五分くらいで治るかな』


「それってどういう原理ですか?」


『知らない……』


 まったくこの人は……


『それじゃ、部屋で待ってるから』


 そう言うと電話は切れてしまった。


 はあ…… 希美さんには黙っていよう。その後、僕は希美さんを部屋まで送り、自分の部屋へ戻って来た。


「お帰り! 希美さんは?」


「まだ、身体が怠いそうですから」


「それじゃ、今回は二人きりだね!」


 変な言い方するな……


「それで、どうするんですか?」


「勿論、二十世紀に行くよ!」


「ちょっと危険過ぎじゃないですか」


「大丈夫、なんとかなるから!」


 かなり、無計画なんだろうな、大丈夫かな……


組織の新たな情報が入った。来夢と響の二人で乗り込む事になったけど……

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