11 時空管理警備局の内情
お待たせしました第11話を更新しました!
事件は警備局内部まで及んでいるようです。
時空管理警備局内で情報漏洩があっているという事です。この情報が悪用されれば過去も未来も変わってしまうということだけど……
「それじゃ、偽の情報を流してみたらどうですか?」
希美さんからそういう提案がありました。
「希美さん、どんな情報を流すんですか?」
「それは、相手にとって不利になる情報、それを削除しようとした人が犯人です!」
希美さんは笑顔で人差し指を立てて得意気にそう言いますけど、そんなに上手くいくのか……
「でも、それじゃ、その情報を誰が削除するか見張っていないといけないわよ! 誰がスパイなのかも判らないのに」
「そうか……」
そんなにがっかりしなくても、提案としては良かったと思うけどな…… 来夢には否定されてしまったけど…… でも、あんな言い方しなくても……
「それより叔父さん、私に訊きたい事があったんでしょ!」
「あっ、そうだった! おまえが拘束された時、逮捕したのは誰だったのかと思って」
「えっと…… 確か、山田とか言ってなかったかな」
「山田…… 山田颯太捜査官か!」
「さあ、他の人達が山田って言ってたから、詳しくは判らないけど…… それがどうかしたの?」
「おまえが二十三世紀に戻って来るという情報を何処から入手したのかと思ってな」
「その情報も削除されてたの?」
「いや、削除もなにも、この情報は元々警備局で入手したものでは無いようなんだ」
それって…… そんな曖昧な情報で拘束したり、逮捕したり出来るのか?
「未来の世界では逮捕状なしで逮捕が出来るんですか?」
「いや、そんな事は無いよ、逮捕状は必要だ! 必ず裁判所に請求して、逮捕状を発行してもらわないと逮捕は出来ない。緊急逮捕は別だが、それでも後から請求しなければいけない。だから、それは未来でも同じだ」
「来夢さんは、逮捕状を見せてもらったんですか?」
「そう言えば…… 見せてもらってない!」
やっぱり可笑しい……
「山田捜査官は、ちょっと可笑しくないですか?」
「まさか、彼を疑っているのか」
「でも、逮捕状も無しに拘束したり逮捕したりしてる訳ですよね」
「それに、私が戻って来るという情報を何処から入手したのかも気になるわ」
来夢もそこが気になったようだ。しかし来夢の叔父さんは認めたく無いかも知れないけど、行動が可笑すぎる。
「ちょっと待ってくれ! 確かに逮捕状無しに拘束するのは可笑しいが、彼が警備局を裏切るような事をするとは……」
「それじゃ叔父さん、希美さんが言っていた偽情報を流して、彼の行動を監視してみたら」
「しかし…… 捜査官の中に内通者がいるとは……」
「しかし、情報が漏洩したり削除されたりという事は、捜査官が内通者なら容易に情報漏洩や削除は可能なのでは」
「とにかく、偽情報を流してみて、山田捜査官を見張ってみれば解るでしょう問題無ければ白なんだから」
「うん…… 判った!」
来夢の叔父さんは、同じ警備局の捜査官を疑いたくは無いんだろうけど、これは重大なことだ! それに、今回の件はひとりでの犯行では無いはずなので、ひとまず罠に掛かってくれれば……
「叔父さん、今回の件は組織犯罪だよね」
「うん…… しかし、その組織に捜査官が含まれているとは……」
いや、まだ決まった訳じゃ……
来夢さんの叔父さんと話をして一週間が過ぎました。今のところ何の音沙汰もないなかで、私と倉橋は今日は一緒にコンビニでバイトをしています。
「倉橋、あれから何か連絡あった?」
何気なく倉橋に訊いてみたけど……
「いえ、あの話をしてから来夢さんとも逢っていませんから」
「あの時話してた事を実行してるのかな?」
「さあ……」
まあ、どっちにしても来夢さんを拘束した山田っていう捜査官を捕まえれば何かが解ると思うけど……
「でも、来夢さんを知ってる人がやってるんだよね」
「多分……」
メールで来夢さんの名前を使っているんだからそうだよね…… でも、来夢さんって、人に恨まれるような事をしてるのかな……
「おい冬野、響、商品入荷してるから並べてくれ」
「あっ、はい」
そうだ、バイト中だった。倉橋だけじゃなく鷹島先輩もいるんだった。私と倉橋は一緒に商品整理をします。しかし先輩はひとりでレジをしてるので大忙しです。
「倉橋、バイトが終わったら来夢さんのところへ行ってみない?」
「はい、行っても良いですけど、いるのかな……」
「えっ、いないの?」
「一週間見てないから、多分だけど、未来にいるんじゃないかな」
「そうか……」
倉橋とはそこで話は終わってしまった。来夢さんの事はちょっと心配だけど、まあ、大丈夫かな……
バイトが終わり、部屋でゆっくりしている時、いきなりけたたましい音が鳴った。
あっ、僕のスマホか…… びっくりした、誰だ。
「もしもし」
『あっ、響君?』
来夢からだった……
「最近姿を見てないと思っていたけど、今何処にいるんですか?」
『今、二十一世紀にいるよ! さっきまで二十三世紀にいたけど……』
やっぱり未来に戻っていたのか。
「どうかしたんですか?」
『うん、今からそっちに行っても良いかな』
今更、いつも突然部屋に入って来たり、好き勝手にコーヒー飲んだりしてるくせに……
「良いですけど……」
『それじゃ、そっちに行ってから話すね』
こっちに来てから話すって何を? そう思ったけど、来夢は早々に話を終わらせてしまった。何があったのか……
その時、突然壁が開いた!
「倉橋!」
えっ、あっ、の、希美さんだった……
「どうかしたんですか?」
「えっ、やっぱり来夢さんの事がちょっと心配で…… それで来ちゃったんだけど、迷惑かな……」
「いや、そんな事は…… それに来夢さんなら今から来ますよ!」
「えっ、連絡あったの?」
「はい、やっぱり未来へ帰ってたみたいです」
希美さんとそう話してる時、来夢が僕の部屋の壁を開いて入って来た。
「響君、久しぶり! あっ、希美さんもいたんだ…… えっ! ひょっとしてタイミング悪かった? もうしばらくしてから来ようか?」
部屋へ入って来て早々にそんな勘違いをされてしまった…… 来夢は僕達のことをどういう風に見ているのか、希美さんは訳が判らず不思議そうな顔をして僕の事を見てるけど……
「もう、何言ってるんですか!」
「だって仲良く部屋に二人きりでいるんだもん」
「あっ、私は、今来たところなんですけどね……」
希美さんも気付いたのか頬を赤くしながらそんな事を……
「それで、話ってなんですか?」
僕はちょっと不機嫌に訊いてみた。
「あっ、そうそう、そうだった! 山田捜査官を拘束したよ」
「えっ、もう拘束したんですか?」
来夢は何をやらかしたのか…… また変な事をしてなければ良いんだけど……
「それで、どうだったんですか?」
希美さんも気になるところです。
「うん、希美さんの言う通り偽の情報を流したらまんまと罠にハマったよ!」
「やっぱり、彼がスパイだったんですね」
「うん、情報を漏らしたり削除した事は認めてるけど、組織の事とかは知らないの一点張りなんだよね」
知らんぷりを決め込んでいるのか…… 本当に知らないのか? それとも……
「酷いですよね! 重大な事をしてるのに」
希美さんはちょっとご立腹です。
「それで、動機とかは訊いたんですか?」
「叔父さんからはそれだけしか訊いてないから判らないんだよね……」
「うーん、ひょっとしたら他にもスパイがいるとか?」
「いや、それは無いでしょう」
という事は、ここで話は行き詰まったと言うことか……
『ピピッ、ピピッ……』
「あっ、ごめん電話が……」
えっ、電話って誰から…… 未来人に誰が電話を?
「えっ、それ本当なの!」
誰なんだろう……
「うん、判った、言っとくね」
そう言って来夢はスマホをポケットにしまった。
「どうかしたんですか?」
希美さんも気になったようです。
「うん、叔父さんからなんだけどね」
えっ、叔父さん?
「ちょっと待って! 未来から電話とかよく判らないんだけど」
「えっ、時空ネットワークサービスだけど」
「時空ネットワークサービス?」
「うん、時空空間を使って電波を飛ばしているんだけど、それをタイムマシンを経由して私のスマホに届いたの」
言っている事はよく解らないけど、そんな事が出来るとは…… やっぱり、未来の科学力は凄いです。
「それで、何だったんですか?」
希美さんは早く情報を訊きたいようです。
「あっ、そうそう神谷警備部長が行方不明なんだって!」
「えっ、それって、部長さんが組織に拘束されたとか……」
「うん、そうじゃ無くて…… どうも黒幕は警備部長だったみたい」
「それって、どういう事ですか?」
「叔父さんの話では山田捜査官に警備部長命令で情報漏洩と削除を指示してたみたい! でも、山田捜査官が捕まったから警備部長もやばいと思って姿を眩ませたんだろうって!」
はあ…… 未来でもそういう事件はあるんですね……
「でも、それって組織と繋がりがあるってことですよね」
「そうだよね……」
はあ…… 何とも言えない……
結局、山田捜査官は警備部長の指示によりスパイ活動をしていたようですが……