10 撹乱
お待たせしました第10話を更新しました。
ジュエリーショップ3℃で起こった強盗事件! 来夢からのメールだと思っていた謎のメール…… いったい何が起こっているのか……
僕達は謎のメールによりジュエリーショップ3°C前のコンビニに来ている。
「とにかく君達はここを離れなさい。来夢も関わらないように」
来夢の叔父さんにそうは言われたけど……
「あっ、希美も来てたんだ」
「あっ、智ちゃん」
「凄い人混みね!」
「うん、でも私は大学に戻るとこだったの昼講義もあるし…… でも、メールが来るだけでこんなになるんだね」
「まあ、私達もメールを見て来たんだけどね」
えっ、水嶋さんにもメールが来てた!
「智ちゃんのスマホにも来てたの?」
「うん」
「私のスマホにも来てたよ」
この人は?
「未玖にも来てたの」
「うん」
どうやらこのメールは不特定多数の人に送られているようだ。
「でも、来夢って何だろう? 差出人?」
いや、それは……
「…… とにかく講義があるから私は戻るね。倉橋、バイバイ」
「あっ、はい…… それじゃ」
希美さんは僕達に手を振り大学へ戻って行きました。彼女がいなくなるとやっぱり淋しいかな……
「来夢さん、僕も昼休みがもうすぐ終わりますので学校へ戻ります」
「うん、何か判ったら連絡するね」
「はい」
何か判ったら…… 来夢はそう言うけど、過去の世界で事件を起こしている訳だから未来で調査をすれば解るはず! でも、来夢の叔父さんの話では、その情報が削除されている…… しかし、その情報は何処に管理されているのか、何処で削除されたのか…… はあ、僕には判らない…… そんな事を考えていた。
学校へ戻ると神谷さんと龍己が待っていた。この二人最近よく一緒にいるけど……
「倉橋君、何処に行ってたの?」
「えっ、ちょっと……」
「ここに行ってたんでしょう」
そう言って、例のメールを見せられた。この二人にも来ていたのか、やっぱり不特定多数にメールされてるようだ。
「意外と響も野次馬なんだな」
「悪かったな!」
「それでどうだったの?」
「ああ、店の周りは警察とメールを見た人達で溢れ返っていたよ」
「しかし、白昼堂々とは、大胆な奴らだよな」
まったくだ、これがこの時代の人が犯した事なら警察で事足りるだろうけど、多分未来人! 警察はお手上げだろうな……
「ねえ、差出人の来夢って誰?」
「えっ、何それ?」
知らんぷりを決め込むのは大変だ……
「ほら、メールの差出人よ! この人が犯人じゃないの?」
いや、それは無いと、声を大にして言いたいが……
「えっ、何故だよ!」
龍己も訊いている
「ほらここよ!」
神谷さんは龍己にスマホを見せながら教えている。こうして見てると仲が良いな。
「あっ、本当だ! こいつが犯人か」
龍己までがそう決めつけているけど……
「間違いないでしょうね! だって、沢山の人にメールを出すことで事件を撹乱出来るでしょう」
あっ、そうか、犯人の狙いはそこか!
「なるほど、それにしても自分の名前を出すとは大胆だな」
いや、自分の名前じゃないんだけど……
「馬鹿ね、来夢なんて名前が本名とでも思ってるの」
いや、本名です…… この時代では珍しいかも知れないけど、来夢は未来人だから。
「まあ確かに、普通に無い名前だね」
はあ…… この二人はそう思ったようだけど、他の人達はどう思っているやら……
学校が終わり今から来夢のところへ行きます。というか僕の部屋なんだけど…… あいつ、大丈夫かな…… 僕は人がいないか周りを確認してから校舎裏の壁にファスナーのつまみを押し当てて入口を作ります。校舎の壁は柔らかくなりベローンと垂れ下がりファスナーで開けた部分だけ入口が開いた。これを見て僕は、もう何も感じないという事は、もうまともじゃ無いのかな……
「あっ、響君おかえり! 壁から帰って来るなんて成長したね」
「それより、犯人の心当たりはないんですか? おもいっきり利用されてるじゃないですか」
「そうなんだよね…… でも、身に覚えがないんだよ…… ハハハ」
はあ…… まあ、元気で良かった。落ち込んでいるんじゃないかと心配したけど…… 必要なかったようだ。いや、彼女の天真爛漫な顔を見る限りそれは無いか……
「来夢さん、過去の削除された情報って何処で管理されているんですか!」
「あっ、それは時空管理警備局だよ」
「警備局! どうやって削除したの?」
「そうなんだよね…… 厳重に管理されてるはずなのに」
その時、また壁が開いた!
「あっ、希美さんいらっしゃい」
えっ、希美さん、普通に玄関から入れば良いのに……
「倉橋、これって便利だよね! すぐに目的地に行けるから」
希美さん、使い熟してますね……
「それより強盗犯は全てを来夢さんの所為にしようとしてます。許せないです」
いきなり希美さんのスイッチが入ったようだ。
「まずは、どうやって情報を削除したかですよ」
「一応、叔父さんが調査しているんだけど……」
まあ、なかなか真相は掴めないか……
「でも、このメールの書き方って前に見た事あるんだよね」
「どういう事ですか?」
『城南市にあるジュエリーショップ3°Cで強盗事件!!!』
「このびっくりマークを三つも書くのって…… 前にこういう書き方をした人、誰だっけ……」
来夢はこの特長のある書き方をする人を本当に知っているのか?
「びっくりマーク三つ書く人って結構いるんじゃないですか?」
「いや、二つはよくあるけど、三つは私の友人にもいないと思う」
希美さんはそう言っている。
「私の知ってる人では三つ書くのって、一人しかいなかったと思う」
来夢はそう言うけど…… 確かにそういう書き方は珍しいとは思うけど、その人が本当に犯人なのか?
「誰だっけかな……」
「高校の友達とか?」
希美さんはそう訊きますけど、高校の友達なら覚えていると思うけど。
「いや、そんなに親しくなかったと思う。うーん、誰だっけ……」
その時、来夢のスマホが鳴った。
「えっ、誰だろう? もしもし」
『あっ、来夢か?』
「叔父さん? どうしたの」
『ちょっとおまえに訊きたい事があって』
「今、何処なの?」
『二十一世紀の上空だ! おまえのタイムマシンは何処にあるんだ?』
「街から北西方向に小高い山があるでしょう」
『ああ』
「そこの頂上がちょっと平らになって木々が沢山あるから、そこに隠してる」
『そこにもう一機隠せるかな』
「そういうのはサーチすれば解るでしょう!」
『いや、そういうのは苦手でな』
「とにかくサーチして! 私のマシンの右側が空いているから、それに自動操縦なんだから……」
『ああ、判った!』
来夢の叔父さんって、時空管理警備局の局長さんだったよな……
「ちょっと叔父さんを迎えに行って来る」
あの電話の様子から来夢も心配になったようだ。
「う、うん……」
来夢の叔父さんは何しに来たんだろう……
しばらくすると、僕の部屋の壁に切れ目が出来たかと思ったらベロンと柔らかくなり穴が開いて、そこから来夢の叔父さんと来夢が出て来た。
「いや、ちょっとお邪魔するよ」
「あの、どうかしたんですか」
叔父さんは神妙な顔をしている。
「いや、実は……」
「叔父さんちょっと待って!」
来夢はバッグの中から四角い箱みたいな物を部屋の中央に置きました。
「別にそこまでしなくても……」
来夢は何をしたのか?
「叔父さん、注意してた方が良いよ!」
「来夢さん、何をしたんですか?」
「これを置くと、ここの部屋の会話が外に漏れないの」
いや、盗聴されていると……
「叔父さん、それで!」
「あっ、実はうちの警備局内に内通者がいるようなんだ」
「内通者?」
「叔父さん、どういう事?」
「今回の事件なんだが…… うちで管理している情報がかなり漏れていて、普通ではありえないはずなんだが……」
「局内の人が情報を漏洩している……?」
「ああ、しかも、情報の削除もある! これは誰かが漏洩してるとしか考えられない」
「ハッカーに侵入されたとか考えられないですか?」
僕も思いつく所を訊いてみたけど……
「うん、それも疑ってみたんだけど、ハッカーの痕跡らしき物がないんだ」
それって、時空管理警備局にスパイがいると……
「叔父さん、それってやっぱり局内に内通者がいるね」
「うん……」
「それでどうするの?」
「なかなか、公には出来ない。もし世間にバレたら……」
「叔父さんの首は飛ぶわね!」
「いや、それで済むなら苦労はしない」
首が飛んでも良いのか?
「ただ、都合良く情報を悪用されたら、過去も未来も変わってしまう!」
確かにそれは不味いです。どうかしないと……
「それじゃ、偽の情報を流してみたらどうですか?」
希美さんがそう言いますけど、そんな事をして大丈夫なのか、それにどんな情報を流すんだろうか……
強盗事件を起こした犯人と撹乱の為に不特定多数にメールを送った人物は同一人物なのか…… しかも、警備局の中に内通者がいるとは……