プロローグ
春の星空教室で小学生がUFOらしきものを目撃します。
星が綺麗な夜、絶好の観測日和だ。ここは城南市北部にある宇宙観測ミュージアム。今日は小学生を招いて、星空教室が行われている。
「南の空に見えてるのは春の大三角です」
女性のスタッフから説明がありました。星空教室はほとんどがバイトのスタッフで構成されていて、いくつかのグループになっています。
「えっ、大三角って冬と夏だけじゃないの?」
小学生のひとりがそう言うけど……
「ううん、違うよ! 大三角は春にもあるし、秋には大四辺形というのもあるのよ! ほら、あそこに輝いている星がうしかい座のアークトゥルス、その右下にあるのがしし座のデネポラ、それから左下にあるのがおとめ座のスピカ、これが春の大三角だよ!」
「えっ、どこどこ?」
小学生は春の大三角を見つけようと一生懸命です。その子供達が楽しそうに参加している星空教室は小学生を中心に宇宙観測ミュージアムが開催していて子供達はそれを楽しみに、高校生や大学生はその時のバイトの募集を楽しみにしている。何故なら通常のバイトより時給が高いからだ。とは言っても僕は先輩から紹介してもらっただけだけど……
あれ、南西の空にひときは輝く白い星がありますけど、あれってなんだ? あんな星あったかな? しかし、一瞬目を逸らした瞬間、その星は無くなっていた。目の錯覚? いや、そんなはずは、可笑しいな……
「ねえねえ、さっきUFOがいたよ! 北の空にオレンジ色の光を放ってサーっと流れたんだ!」
ひとりの小学生が北の空を指差しながらそう言っている。
「嘘つくなよ! おまえ以外に誰も見てないだろう」
子供達にはよくありがちな言い争いだけど……
「ほら君達、喧嘩しちゃ駄目だよ」
「だってこいつがいい加減な事を言うから!」
「あっ、でも私も見たよ! 南西の空に白く輝く星があって綺麗だなって見ていたら北の空にオレンジ色に光って流れて消えたの」
「あっ、それなら俺も見た! あれって、UFOだったんだ」
いや、それなら僕も見た! 動くのは見ていないけど…… あれはUFOだったのか?
「はいはい、UFOの話はもうおしまいにして、星の観察をしてください」
一人のスタッフさんがそう言った事で、星空教室は再び観測再開です。
「ねえ君も小学生の指導をきちんとしてよ! バイトでしょう」
「はい、すみません……」
バイトの先輩に注意されてしまった。でも、あれは本当にUFOだったのか……? 僕はまた、夜空を見渡したけどそれらしい光はありませんでした。まあ、そんなにUFOなんて簡単に見れるもんじゃないか……
その後も観測は続きましたがUFOらしき光は現れませんでした。
星空教室が終わった後、バイトで同じグループだった人達と居酒屋で反省会をした。
「今日の星空教室も小学生には好評だったな」
「まあ、なんたってUFOなんてゲストも現れたみたいだけどさ、俺は見てないけど」
「なに、見なかったの?」
「俺はそんなの信じてないから見えないのかもな」
「それって、幽霊と勘違いしてない」
「でも、一瞬だったんだろう!」
「まあ、そうなんだけどね」
結構他の人達も見たのかな……
「ねえ、君はどう思う!」
僕の隣に座っていた綺麗なお姉さんに訊かれた。
「そうですね…… UFOとか、あまりピンときませんけど」
僕は思ってもいない事を言ってしまった。僕だってUFOらしきものを見たはずなのに…… でも、その前にこのお姉さんの方が気になる! いくら一緒にバイトをしてたとはいえ、見ず知らずの僕にそんな気軽に声を掛けるか……
その時、僕は誰かに見られているような異様な感じがした。いや、奥のテーブルのところで笑顔で微笑んでいる女の子が僕の方を見ている。僕は何故だか彼女の方へ行こうと席を立ったけど…… 彼女はいつの間にか居なくなっていた。
「ねえ、どうかしたの?」
「あっ、いや……」
僕がその女の子のところへ行こうとした事は他の人には知られたくはない! だって軽い奴だと思われるのは嫌だからだ。というか恥ずい!
「あっ、トイレなら逆方向だぞ!」
えっ、ひょっとして他の人はあの子に気づかなかった、それとも見えてなかったのか…… それって幽霊…… 嘘だろう、これは何かの間違いだ、いや気の所為だ! 大体今日はUFOは見るし…… ひょっとして宇宙人! とかじゃないよね…… 大体そんなのが存在しているかどうかも怪しいところだ。そんな事を考えて食事をしていると、大学生の先輩達は、そんな僕に気も止めず少しだけお酒を飲んで陽気にはしゃぎ出していた。僕もあんな風に何も考えずに陽気になれたらと思う。しかし高校生の僕には、まだお酒の素晴らしさはよく判らないのでコーラや烏龍茶で充分だ。どうせ、あそこまで陽気にはなれないから……
星空教室でUFOらしきものが目撃されたあと、不思議な女の子が目撃されるように…… 彼女は宇宙人?