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魔王勇者vs悪勇者

「きひひ!食らえ!おらおらぁ!」


 悪勇者が剣をふるう度に衝撃波が起きる。もうかれこれ100発ぐらい打ってるぞ?どれだけ魔力があるんだ。



「リドウ、ごめんなさい。また足を引っ張ってしまって」



 俺の腕の中でもう何度目かわからない姫の下がり眉を見る。本当に申し訳なく思ってるんだろうな。



「全然大丈夫だ!姫は何も気にしないでくれ」



 でも、重いですし、と姫が呟く。その間もよけ続ける。これはキリがないな。あの剣をなんとかしないと。



「避けてるだけかぁ?ざんねん勇者あ!」



 誰が残念勇者だ。衝撃波が当たらないのにイラつき始めた悪勇者が挑発してくる。



「シャゼル!!」


「はああああ!」



 上空を旋回し機を伺っていたシャゼルが滑空し、勇者を蹴りつける。



「おっと!あぶねえ」



 間一髪避ける悪勇者。おしいな、しかしその間に姫をエルフの元へ。



「勇者様!後ろ!」


「シャゼル!」

「はい!」


「ぐうう!」



 魔力を足へ流し、悪勇者へ一気に飛び掛かる。剣を持っている腕を払い、悪勇者が剣を落とす。邪魔をしようとした女にシャゼルが飛び掛かり離れたところでやりあい始める。



「姫!これを持っててくれ!」


 

 姫の元へ飛び剣を渡し、すぐさま悪勇者へ飛び、殴り掛かる。



「くぅ!!それ、返せ!」


「悪いが製作者から取り返してもらうようお願いされててな!返すことはできない!」


「知らねええええ!」



 遠目で女僧侶とシャゼルが激しくやりあっているのが見える。僧侶ではなく戦士だったのか?シャゼルと肉弾戦でやりあえるとは…。シャゼルの応援は期待できないか。



「返せ返せ返せ!あれは俺のだああああ!!!」



 対する俺は癇癪を起したみたいな悪勇者の猛攻に防戦一方だ。拙いとはいえ魔力を流していてこれだ。とても楽勝とはいかない。



「お前、勇者として召喚されたんだろ?なぜ悪事を働く?」



 猛攻を防ぎながら問いかける。



「決まってる!楽しいからだ!」



 狂気じみた笑みを浮かべ答える悪勇者。


「勇者の俺が何やってもみんな見て見ぬふりだぜえ!?お前も勇者ならわかるだろぉ!」



 うん、全くわからない。俺…期待されてないから。


そういえばあの小さいおっさん、ガンジだったか?が見当たらない。



 姫を任せたエルフのほうから衝撃音が…。


 姫の方を確認するとエルフのリーダーとガンジがやりあっている。魔法を食らっていて、すぐにでもやられてしまいそうだ。


 いつの間にあそこに?姫が危ない!



「よそ見してる場合かあああ!?」



「ぐっ!」



 姫の方に気を取られてしまい、悪勇者の蹴りを腹部に受けてしまう。



「姫!」


「いかせると思うか?」


「くっ!どけええ!」



 エルフが倒れるのが目に入る、まずい姫の元へ行かないと。


 悪勇者の手は止まらない。


「くっ、シャゼエエル!!」


「魔王様!手が!くっ!離せ、ません!」



 あの男に指一本も触らせたくない。



「きひひ!あいつは人の意識から離れる疎外魔法の使い手だ!俺の隣にいたはずがいつの間にあちらを襲っていて不思議だったろお?」



 そんな魔法があるのか。ってそんなことはどうでもいい。どうにかこいつから離れないと。



「きゃあ!リドウ!」


「姫!!!」


「ぐへへ!」



 ガンジが姫に迫る。ガンジが姫に触れようとしたその時、持っていた剣を姫が振るった。



「ぐええええっ!」



 剣から衝撃波が放出され吹き飛ばされるガンジ。



「あれ…?」


 キョトンとしている姫。



「なんでだ?あれは俺専用だって言ってたのにあの爺ぃ…」



 仲間がやられたことにより歯ぎしりしている悪勇者。この隙に姫の元へと向かう。



「姫!無事だったか!」


「リドウ!えぇ、無我夢中で剣をふるったらあのようなことに…」



 とにかく姫が無事でよかった。これで相手も二人になったことだ。戦いに集中できる。



「無事でよかった」


「はい…」


 姫のキレイな顔に傷でもつけていたら後悔してもしきれなかったところだ。本当によかった。心なしか姫の頬が少し赤いが…気のせいか。それより決着をつけるとしよう。


 姫に木陰に隠れるよう伝え、悪勇者の元へ。



「もういいのか?」


「あぁ、お前の仲間は伸びてることだしな。あとはお前とあの女でおしまいだ」


「きひ!いいぜ、剣なんてなくても俺は強いんだ!勇者の力見せてやるよお!」



 再び悪勇者と肉弾戦を再開する。



「くっ!」


「おらおら!どうした!?西の勇者はこんなもんかぁ!?」



 バカな!?先ほどよりもパワーが段違いに上がっている。



「お前、なんで急に!」


「強くなったかってか?俺のスキルさ!」



 スキル?特殊能力のことか?



「俺のスキルは仲間が倒れる度に俺自身が強くなる!ガンジが倒れたからなぁ、いい感じに強くなってるだろ?」



 みんなは一人のためにってことか?なんて自分本位なスキルなんだ。仲間が倒されることが前提のスキルなんて、俺ならごめんだな。



 「ぐふっ!」


「いいのが入ったかぁ!?」



 最低なスキルだが強さはとんでもないぞ、こいつ。強烈なボディブローをもらい、吐き気に襲われる。



「リドウ!シャゼル様が!」



 腹部の痛みに悶え苦しんていると姫の声が響く。シャゼルがどうしたんだ?



「まお、うさま、申し訳、ごふっ!」



 女戦士に腹部を腕で貫かれているシャゼルが目に入る。



「シャゼル!」


「きひ!お前の仲間も一人やられたな!これであいこだ!」



 まずい、吸血鬼のシャゼルは滅多なことでは死なないがあれは早く吸血させてやらないと死ぬぞ。



「キアラ!そいつはもういい!こっちにきて手伝え!」


「はーい、勇者様ぁ」



 キアラと呼ばれた女はシャゼルの腹部を貫いている腕を抜き悪勇者の元へ小走りで駆け寄る。



「きひ!これで2対1だなぁ?」



 ニヤニヤと汚い笑みを浮かべる悪勇者。



「降参して、後ろの姫とやらを渡すなら許してもいいぜぇ?」



 俺が姫を渡すわけがないので却下だ。


 まだ未熟だがそんなことも言ってられないので全身に目一杯の魔力を流す。



「はああ!!!」



 今流せる魔力すべてを循環させ身体強化へ回す。



「なんだ、やるのかあ!?」


「こいつ頭悪ーい!」



 言ってろ!姫は生け捕りって言っていたがそれも難しくなった。手加減はできない、本気で拳を振りぬく!



「ぐっ!」


「おらぁ!サンドバックだなおい!」


「があっ!」


「ほらほら!こっちだよ!おら!」


「くっ!」



 手数の差もあるが目一杯の本気がまるで意味をなさない。今の身体強化で悪勇者と五分といったところか。それに加えてこの女がやっかいだ。


 この勇者より全然強いんじゃないだろうか。転移の魔法を軽々と使い消えては殴りと、悪勇者の相手をしていると視界の外から攻撃してくる。



「西の勇者よわあーい」


「くそっ!ぐあっ!」



 しかも、悪勇者よりも打撃が重い。相当な実力者だ。シャゼルがやられるわけだ。



「ぐあああ!!」



 女と悪勇者の連撃により吹き飛ばされる。



「リドウ!」



 思わず姫が近寄ってくる。



「姫、ごふっ、駄目だ、出てきたら…」


「でも、でも!」



 姫が心配そうに俺の身体を支え俺の顔を見つめる。



「ちょっとお、いちゃいちゃしないでくれるー?殺したくなるんですけど」


「おい!この雑魚勇者を倒したら相手してやるからおとなしくしてろよ!きひひ!」



 気だるそうに歩いてくる女と悪勇者。



「姫、なんとかするから頼む。今は逃げてくれ…、死なない距離、離れてどこかに身を隠しててくれ!」


「や…いやです!一人で逃げるなんて…」



 泣きそうな顔を見せてくる姫。



「頼む、絶対勝ってみせるから、前みたいに俺を信じろ!」


「でも、リドウ!」


「姫がいたら全力が出せない!行ってくれ!!」


「リドウ!」


「行けぇ!!!」


「うぅ…!」



 姫が一筋の涙を見せるも俺の怒号により走り出す。



「あれまぁ、どうする?勇者様、私おいかけようかぁ?」


「きひひ、そう遠くにいけないだろ。それより確実にこいつを俺らでやっちまおう」


「はーい」


「そう簡単にはやられない!」



 ここでやられたら姫に追いつかれる。気張れ!魔王だろ、俺は!









「ごふっ、ひ、ひめ…」


「勇者様ー、こいつもお腹ぐちゃぐちゃにしてやったー!」


「きひひ、あとはあの姫だけだな、もしかして西国の王女様だったりして!?きひ!」



 くそ………なんて様だ。だめだ………意識が…。



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【修正点】 第3部での拘束魔道具の説明、姫との離れられる距離を100m→1kmへ変更しました。

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