第〇章「ケルボ」
第〇章「ケルボ」
地球から十万光年とちょっと離れたところに「ケルボ」という星がある。
地球とあまり変わらない大きさ(直径13899キロメートル)に、数々のバイオーム、真水は殆どないが、かわりに過鉄水素水(Fe₂H₄O)が星を包み込んでいる。
過鉄水素水とは、鉄分と水分が異常に結合してしまった水のことを言う。
そしてこの星には地球のように太陽のような存在もなく、酸素はほぼ銅や鉄などの鉱物に結びついてしまっていて、大気中に存在するのは窒素と水素であった。
そして今となっては、その星には多様な生物が原生し、人間も存在していた。
皆さんが言いたいことはたくさんあると思う。
何故地球から十万光年とちょっと離れた星に人間がいるのか。それについては、また別の話で話そう。
そして何より、何故その環境で生物が生きていられるのかということだ。
まあ、大気中に窒素と水素しか存在しなかったのはもう昔の話である。
今となっては、過鉄水素水が「ケルボ」を包み、今は地上から上空五十キロメートルくらいまでドーム状のバリアのようなもので覆われていて、そこには酸化銅などから分解した酸素も入っている。
でも、いくつか疑問も生まれる。ドーム状のバリアはどうやってできたのか。酸化銅などの酸化物からどうやって酸素を分解したのか。この星の水にはなぜこの量の鉄と水素が結合しているのか。
星は元々、マントルの約76パーセントが鉄、銅でできていて、大気は水素58パーセント、酸素2パーセント、窒素40パーセント出できていた。
ある日、「ケルボ」におよそ直径4キロメートル程の小惑星群がいくつも衝突し、やがて星は火の海となった。
酸化鉄や酸化銅は高温(5000度)に熱せられ、分解される。
熱で水素が燃え、水ができ、掘り起こされた鉄が水に溶けたのだ。その後、星の温度は低下していき、今の姿へとなった。
そして、ある「天ノ川」に夜空が包まれる日、人類は誕生する。細かいことは不明だが、「オヴェルト半島」で生まれたと言われている。
ただ、いくつか問題もあった。
それは、この星には地球のように太陽がないこと、そして、過鉄水素水は鉄分と水素の過剰摂取になってしまい、とても飲めたものじゃないということ、さらに、太陽の代わりとしてこの星には、各地に紫色のクリスタルのような物体があり、それが何故か熱を放出しているのだったが、その物体からは常に毒素がが出ていたため、近くに行けば待つのは死ということだった。
この話は、そんな「ケルボ」で生まれた英雄たちの物語である。