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TAKAMURA ~異聞、小野篁伝~  作者: 大隅スミヲ
第二部

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余談、常嗣と篁 ~遣唐使たちのその後~

 遣唐使の派遣は、寛平6年(894年)に菅原道真による建議で中止になり、その後907年に唐が滅亡して、遣唐使も廃止となった。


 藤原常嗣は、唐へ渡った最後の遣唐大使となったわけであるが、その後の常嗣はあまり恵まれたとはいえなかった。

 三度目の渡航でなんとか唐土を踏むことに成功した常嗣は、唐の皇帝である文宗ぶんそう長安ちょうあんの都で拝謁し、帰国の途に就いた。


 唐より帰国する際にも、常嗣には災難が待っていた。

 遣唐使船の第一船、第四船は唐に着いた時点で航行不能状態であったため、新たに新羅しらぎ船を9隻雇い入れて、遣唐使たちは分乗した。

 帰りのルートについては、遣唐使内で揉めることとなった。遣唐大使である藤原常嗣と遣唐判官である長岑ながみねの高名たかなで、ルートについて対立したのである。この対立は、最終的には常嗣が折れて長岑の提案したルートで帰るということになった。

 それ以外にも、第一船に乗るはずだった留学僧の円仁・常暁・円載らが、もっと唐に残って勉強をしたいと言って遣唐使船から逃亡。円仁はその後9年間に及ぶ不法滞在しながら仏法を学び、帰国後は慈覚大師円仁と呼ばれるほどの僧となった。また、円載については40年近く唐に滞在しており、帰国の途に就く際に遭難し、死亡している。

 遣唐使船第二船は唐を出た後、南海の島に漂着。現地民の襲撃を受けた。この際、第二船に乗っていた良岑長松、菅原梶成らは協力し廃材を集めて島で船を作り、島を脱出したとの記録が残っている。

 また、遣唐使として唐土へと渡った藤原豊並については、唐で皇帝に拝謁したあと、病に倒れて帰らぬ人となっている。


 無事に帰国を果たした常嗣は、遣唐大使として任を果たしたことにより、参議さんぎ左大弁さだいべん従三位じゅさんみとなった。

 しかし、その一年後に薨去こうきょしている。やはり遣唐大使という大任は、身体にも精神的にもこたえたのかもしれない。


 第三次遣唐使では、小野篁がやまいや家族の介護を理由に乗船拒否(本物語では体を乗っ取られたため)したが、実は乗船拒否をしたのは篁だけではなかった。知乗船事であった伴有仁ら4名も乗船を拒否して処罰を受けている。


 唐へと向かった者、向かわなかった者とそれぞれが数奇な人生を送ることとなったわけだが、本物語の主人公である小野篁は、唐へ行かなくて正解だったかもれいない。

 もし、篁が唐へ行っていたらというアナザーストーリーも考えてみたりもするが、きっと篁のことなので、唐で皇帝に気に入られて、阿倍仲麻呂のように帰国することは叶わなかったかもしれない。


 常嗣と篁というサブタイトルにあるように、今回はふたりの公卿にスポットライトを当ててみた。小野篁を主人公とした物語では、藤原常嗣を性格の悪い人間だと描くものが多いが、私は常嗣という人は苦労の人だったのだろうと思っている。

 篁のように天才肌でコントロールの効かない人間を副使として、さらには度重なる航行不能、難破。やっとのことで入唐して、帰ろうとすれば部下から帰りのルートが違うと言われ、さらには留学僧たちに逃亡されるという始末。

 最終的には、ほぼ難破状態でなんとか帰国できたものの、その頃には体もボロボロになっており、帰国後一年で帰らぬ人となってしまった、常嗣。

 常嗣は、遣唐大使という役目に振り回された中間管理職と言えるだろう。

 そんな常嗣のことを絶対悪として私は書けなかった。

 常嗣は愛されし、憎まれ役なのだろう。

 藤原常嗣は、父も遣唐大使である名門育ちで、遣唐大使として絶対に渡唐を成功させたいという気持ちが強かったはずである。

 ただ、相棒が野狂と呼ばれた天才奇人であり、他の部下や留学僧たちも曲者揃い。そんな連中を束ねて唐へと渡ろうとしたのだから苦労も絶えなかったと思う。

 もし今後、他の物語などで、藤原常嗣の名前を見たら、優しい目で見てあげてほしいと私は思う。


 唐へ行かなかった篁については、吉備真備こと鍾鬼によって篁の身体は乗っ取られてしまったと創作してみた。身体を乗っ取られても、一枚も二枚も上手な篁は最悪の事態を回避するが、流刑となってしまう。次話は流刑地である隠岐編となるわけだが、そこで巻き起こる真備や鍾鬼とのやり取り、そして隠岐の人々との関係などなど、まだまだ小野篁の物語は続く。

 これから先の物語、ある意味ここからが小野篁の物語の本編であるかもしれない。

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