表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/22

そして聖女の騎士に

ご訪問ありがとうございます!

恋人ライルが聖女の騎士として叙任されると聞いたユラル。


急ぎ訪れた大聖堂でユラルは今まさに聖女ルナリアにより聖剣を与えられたライルの姿を遠い目をしながら眺めていた。


輝く金糸のような髪をたなびかせ、聖女ルナリアは鈴を転がすような声で告げる。


「そなたを私の聖騎士に叙任します」


ライルを見つめる聖女の目は満足げで嬉しそうだ。


それはそうだろう。聖女は美形好きらしいから。(教会侍女調べ)


口が悪くて脳筋のライルだが、見目の良さは王宮で近衛騎士にもなれようかという程のものだ。


そんな男に忠誠を誓われて嬉しくない女はいないだろう。


ーーわたしのライルなのに。


ライル、わたしの可愛い駄犬ちゃん……


お願いだから、聖女に誓いを立てないで……


お願い、お願いだからっ……



「はっ、身命を賭して、聖女様にお仕え致します」



あぁぁぁぁ……!


言っちまいやがった!!


「ハイ、オワタ」



その瞬間、聖女がライルの肩に当てた聖剣から光が放たれた。


眩く神々しい光に、聖女と騎士が魂の絆で結ばれた事を知らしめられる。


聖女の聖騎士(パラディン)、ライルの誕生だ。


ユラルはその光景を遠く、昏い気持ちでただ眺める事しか出来なかった。





そしてその後、他にただの正騎士になった者たちの叙任も終えて、式は無事に終了した。


ユラルは魂が抜けてしまったように脱力し、空いたばかりの席に腰を下ろした。


祭壇の所で他の聖騎士達や聖女と談笑しながら去って行くライルをぼんやりと見つめる。


するとユラルの視線に気付いたのか、ライルが振り返り、ユラルに向かって手を振った。

満面の笑みで。


ーー何をドヤってやがるのよ。

アイツは絶対に事の重大さが分かってないわね……


ユラルは何を返す気にもなれず、フラりと立ち上がり、大聖堂の出入り口の方へと向かった。


ーーライルのバカ。アホンダラ。


もうお終いよ。


わたし達はもうお終い。


変わってゆくあなたを見たくはない。


そのうち見向きもされなくなって虚しく別れるくらいなら、


そうなるくらいなら……



俯きながら歩くユラルが大聖堂のエントランスを出た所で、そこに立つ一人の女性に気付いた。


「……あの?」


見慣れない女性だった。

年の頃は二十代前半だろうか。


「本日付けで聖女ルナリア様の騎士となられたライル卿とお付き合いをされているユラルさんですね?」


「え?……ええまぁ今はまだそうですが……」


ユラルがそう答えると女性はニッコリと微笑んだ。


だがその笑みにはユラルを気遣う温かみを感じた。


「突然お声掛けをしてごめんなさい。私はロアンヌと申します。オクレール枢機卿夫人付きの侍女を務めている者でございます」


「枢機卿夫人の……?」


「ユラルさん、夫人がぜひ貴女にお会いしたいと。よろしければご一緒にオクレール邸までいらして頂けないでしょうか?」


まさかの人からのお誘いに、ユラルは内心たじろいだ。


「そ、それはもちろん……枢機卿夫人のお誘いをお断りするような真似は出来ませんから構わないのですが、なぜ夫人がわたしを……?」


ユラルは特別信仰心が深いわけでもない。


男爵家としても枢機卿やその縁者との繋がりも一切なかった。


それを突然(自宅)へ招かれるなんて、意味が分からない。



ロアンヌはまたニッコリと笑みを浮かべてそれに答えた。



「私達、“枢機卿夫人友の会”はあなたを歓迎いたします。まずは夫人からお話を聞かれてみては如何でしょう?」



「枢機卿夫人…友の会?」


誤字脱字報告ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ