四章 2
後片付けを終え、出発の準備は整った頃、凛がバックを開く
「我はバックに戻るが、此処から先は油断一つしてはならぬぞ?」
「はいはい」
「む~。心配じゃの~」
不安げな顔をしながら、バックに入っていく凛。なんだかシュールな風景だ
「大丈夫だって。よっと」
バックのチャックを閉めて肩に担ぐと、ずしりとした重みが、肩に響く
「剣を出せる様になっても、強くはなってないんだな」
「当たり前じゃ。一昼夜で強くなるなど、それこそ化け物じゃよ」
「まあなぁ」
「もっとも、小烏丸を喚べるだけで普通とも言えぬがの」
普通じゃない……か。そりゃそうだわな
「……ま、それはそれで置いといて。出発だ!」
「うむ」
バックを持ち直し、気合いを入れて俺は第一歩を踏み出し……
「………………」
「どうしたのじゃ?」
「……ど、どちらに行けば良いのでしょうか?」
朝でも夜でも樹海は樹海だ、似たような景色が広がるこの森から、俺の力では抜け出せそうにない
「むう。……今、我はおんしの命を握っておるのじゃな。ふふふ」
「な、なんですか、その不審な笑い声は」
「右じゃ♪」
「超嘘くせ〜!」
二時間後
「はぁはぁ……や、やっと抜けれた」
迷い、翻弄されつつようやく抜けた樹海。青い空が清々しいぜ
「我が指し示す道を、おんしが中々信じぬから、余計な時間を食ってしもうた」
「お前なぁ……次は群馬か」
「うむ。六角共が我を待ち構えるとすれば、先ず群馬じゃろう」
「……群馬を避けて行くか?」
「我には、我を追う者と、待ち構える者がおる。要するに挟み打ちの形じゃな。奴らも馬鹿ではない、時が経てば経つほど我らの痕跡は読まれ、迫まれ、遂には身動き取れなくなるじゃろう」
「…………」
「我らに取って有利なポイントは、奴らは我が群馬にある祠を目指していると思っておる所。なればその穴をついてやるのじゃ」
「穴、ねぇ」
「とにもかくにも、急いで群馬に向かってくれぬかの? 着いた後の事は我に任せよ」
「あいよ、姫様」
「ううむ〜、やはりサブイボが出るのう」
バックの中から聞こえる掻き音に苦笑いしつつ、俺は群馬を目指し歩き始めた