第四章 遭遇
チュン、チュンチュン
「……鳥の声で目覚めるってのは、やっぱ切ないな」
路上生活を始めてから、目覚ましといえば鳥の声だった
俺はよいしょと、身体を起こす。所々が痛いが、我慢出来ない程ではない
「起きたかの、剣之助」
既に起きていて、空を見上げていた凛は、その視線を俺に向けて微笑む
「うっ!」
その微笑みに鼓動がワンテンポ早くなる。
いや気のせいだ、勘違いだ、俺はロリの人では無いのだ
「さ、さて、そろそろ行く準備をするかな〜」
「ん? 顔が赤いが、風邪かいの?」
「だ、大丈夫、大丈夫! それより今日は何処まで行く!?」
「む? 変な男じゃの〜。……そうじゃな、今日は群馬に入りたい所じゃが……」
凛は言葉を区切り、思案する
「…………どうした?」
「新潟にある祠は、我すら存在を忘れていた程に廃れた祠じゃ。
よもやそこへ我らが目指しておるとは思うまいが、間の悪い事に群馬にも我の祠がある。恐らく六角どもは我がそこを目指していると思うておるじゃろうて」
「なら待ち伏せしているかもか……所で凛は何で追われてるんだ? てか六角?」
おヤクザ様?
「元は鬼を狩る家じゃったが、江戸時代に入ると、徳川の為に鬼を使役する家に変わった。その性質も武家から忍びへと変わり、徳川を影から護る最強の武術集団へと変わる、それが六角じゃ」
「…………へぇ」
「特異な能力者達を集め、掛け合わせる事により更に特異で強靭な人を生み出す六角は、次第には鬼の力すら己の内に求める様になった。じゃが、鬼の力は莫大じゃ、いくら人知を尽くそうとも人の身で有る限り制御する事など出来ぬ。
そこで六角は、自分らの能力を上げるのではなく、鬼の力を抑える事に着目したのじゃ」
「………………」
「むろん、それも容易な事ではない。何代も世代を重ね、失敗を繰り返した。じゃが、ある時一人の鬼が人間に恋をした。その鬼は…………しかしあれじゃの。人に話を聞いておいて、舟を漕ぐおんしは中々良い度胸をしておるのう!」
ぱこーん
「あいたー!?」
「もう話さん! 行くぞ剣之助!!」
「あ、ああ」