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三章 3

「では行くが……死んではならぬぞ」


「それはお前次第だろうが!」


文句を言うのとほぼ同時に、俺の前髪が散った。 伸びて目に掛かるから邪魔だなと思っていたから丁度良い……


「…………ギャー!?」


五メートルは離れていた筈の凛。それなのに、こん棒がいきなり俺の目の前に現れ、横薙ぎされたのだ


「次は当てるぞ?」


目前の凛が言い放つ


「そりゃ当たるわ!」


見えねぇもん!


「死線を越えること、それこそが己を更なる高みへ導くのだ。

 剣之助よ、次の一撃は今のおんしではかわせぬ一撃。生きたけば子烏丸で受け止めてみせぃ!」


凛は俺の頭上にこん棒を落とすべく、軽々と振りかざした


「や、やめ……やめー!」


「信じておるぞ」



凛は躊躇なくこん棒を俺の頭に振り下……………………………………


「…………はれ?」


目が覚めると、木々の合間から僅かに見える空には、幾つもの小さな光が浮かんでいた


「……夜か」


いつの間に寝たんだ俺は


「てか、さみー」


身体を起こし、周りを見回すと何故か森の中。なんでこんな所で寝て……あっ!


「凛! お前、俺を殺そうと……凛?」


辺りには凛の姿が無く、からっぽの鞄だけがぽつんとあった


「凛?」


あいつ何処へ? ……まさか誰かに連れて行かれた!?


「り、凛!!」


がさがさ、がさがさ


凛を探そうと立ち上がった時、背後から草木が踏み荒らされる音が静かな森に響いた


「ん? ……なんだ、近くに居たのか」


心配させやがって


「意地が悪いぞ、凛……さん?」


振り返ると黒くて逞しい素敵なお方


「……あらま随分毛深くなって」


「…………ウガ?」


「ギャアアアアア!?」


「っ!? ゴアアアア!!」


俺の声に驚いたのか、凛? は仁王立ちになり吠えた


「って熊!?」


なんでやねん! なんで熊やねん!?


「グウゥゥゥ」


熊は警戒しながら近付いてきました。どうします?


1、死んだ振り


2、逃げましょう


3、仲間にしちゃえ


4、


「戦うのじゃ剣之助!」


「それがあったか! って無理に決まってるだろアホー!!」


熊の後ろから凛の声がした。姿は見えないが近くにいるらしい


「こやつは飢えた人食いよ。戦わねば死ぬぞ!」


「ひ、人食い!?」


説明しよう。普通熊は人を恐れ、特別な理由が無ければ避けるが、一度でも人を食べた熊は、人を食料と見る為、恐れよりも食欲を取るのだ!


「なんて、誰に説明してるんだ俺は!?」


「剣之助、おんしに足りぬのは自信じゃ! 自分を信じよ、魔犬を制したおんしはこやつよりも強い!!」


「無理だー!」


逃げるしかねぇ!!


「お前もさっさと逃げろー!」


熊は俺に集中している。今なら逃げられる筈!


「全く、おんしと言う男は……」


凛は呆れた声で呟く


「良いから早く逃げろ! 助けを呼べ!!」


どさ


熊の直ぐ後で何かが倒れる音がし、熊が振り返る


「うわ、転んでしまったぞ。助けてほしいぞ」


凛!?


「な、なにやってんだよ!!」


「喰われてしまう~」


なんてわざとらしさだ! だけど!!


「わ~~~~!!」


「っ!? ゴフ」


俺の大声で、熊は再びこっちへ注意を移す


「今だ凛! 早く逃げ……」


「ゴオオオオオオ!!」


「…………えへ」


熊さんが立ったよ~


「えへへへへ。私はちょうちょヒラヒラ舞うの……」


「馬鹿者! 現実逃避している場合か!? 戦うのじゃ剣之助! 誰かを本当に救いたいならば、おのが力で救ってみせよ!!」


「ちょうちょ、ちょうちょ私はちょうちょ~」


「誰かを……我を救ってくれ、剣之助!」


『私を救っておくれ、信正……』


「っ!?」


刹那、右腕に雷が走る


それは身体ではなく、心に痛みを感じさせた


「……小烏丸」


雷を握り、闇夜の空間を鞘にその名の刀を抜く


「…………あれ?」


気付けば俺の目からは、涙が溢れていた


「やったの、剣之助!」

前の草むらから凛が顔に喜色を浮かべ、飛び出して来やがりました


「り、凛! 危ないから下がっていろ!!」



「大丈夫じゃ、こやつは我らに危害を加えん。鬼と熊は太古からの友じゃて」


凛は熊の側に行き、身体を撫でる。すると……


「きゅ~」


可愛く鳴いた!?


「そ、それじゃ、まさか……」


「おんしにやる気を出させる為にひと芝居打ったと言う訳じゃ。ご苦労じゃったな熊吉」


「ゴフ」


熊吉は頷き、のっしのっしと森の中へ……


「って凛! お前なぁ」


「剣之助も良くやったの。褒美じゃ、我直々におんしの身体を癒してやろう」


紅い唇に妖艶な笑みをうかべ、凛は甘い声でそう言い放った

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