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序章 ホームレスの受難

ホームレス。まさか自分がなるとは思わなかった


大学受験に失敗し、引きこもってみた俺に通告されたのは父さんのリストラ


それを聞き、母さんは別の男を作って逃亡。

 父さんは鬱になってネットゲームに嵌まる


流石に耐え切れなくなって家を飛び出し、派遣社員として寮で働いていたら派遣切り


寮を追い出され、着いた先がこの公園っと


「我ながら凄い転落人生だ」


最近多くなった独り言を呟き、テントを建てる


時刻は午後七時。季節は秋


めっきり寒くなって来た夜の風を避けるべく、俺はテントの中へと入った


「う~さむ。今日は豚骨味にしようかな」


三人は優に寝られるテントの中、取り置きのカップ麺を取り出し、袋を破る


もう数回しか使えないだろうガスボンベをカセットコンロに装着し、後は公園の水道から水を汲みに行くだけだ


俺は鍋を片手にテントを出る


外は真っ暗で、僅かな電灯の明かりが物悲しい


「…………これからどうしようかねぇ」


金はもう底を尽きようとしている。仕事をしようにも身分証が無い


八方塞がり。素敵な言葉だ、まさに今の俺を表している


「ま、何とかなるか」


そう開き直れば明日は明るい。明日には明日の風が吹く今は早く、この飢えた腹を何とかしましょう


「水、水っと」


水道の前に立ち、俺はコックを捻った




ハッハッハッハ


荒い息を漏らし、魔犬が夜の町を走る私を追う


数は三匹。姿こそ普通の中型犬だが、一匹でもライオンを食い殺せる獰猛さと、二本の長い牙を持っている


だがそれは良い。問題は魔犬の後を追う男。六角衆が一人、石兎とその部下だ


戦いとなれば一個小隊を率いり、勇猛の名を欲しいままにするこの男が、追っ手として来るとは……


先に来た雑兵どもとは違い石兎と正面からやり合う事は出来ない


否、私だけならばやる。負けはしない


だが今は己の命よりも大切な物を肩に背負っている


「……もうしばしのご辛抱を」


私は肩に担いだボストンバッグをちらりと見て呟いた


「ガウッ!」


私の意識が一瞬、逸らされた知ってか犬の一匹が私の足を目掛け飛び付いて来る


「ちっ!」


苛立ち紛れの舌打ち。足を引いて牙をかわし、そのまま犬の頭を踏み付けた


グチャリ


頭蓋骨と脳が潰れた音。こればかりは何度聞いても慣れる事は無い


「ワン、ワンワン!」


踏み潰すのに体勢を崩した私に、残りの二匹が襲い掛かった


こいつらに手間を取られては、石兎どもに追い付かれる!


「くっ、畜生どもが!」


使うか? こんな獣如きに? いや、獣如きだからこそ時間など掛けていられるか!


「我が内に眠る八と三の太刀よ!」


夜の闇に右手を突き出す


「六っ! 紫雷、子烏丸一刀!!」


右腕に走る激痛。それは紫色の雷を纏った、烏よりも黒き、飾り付けの無い太刀を手に取った証


私はそれを、闇夜の空間を鞘に引き抜いた




「ラーメン、ラーメン、小池さ~ん」


お湯を沸かして、カップに入れて、三分待てば出来上がり


「俺は一分で食うけどね~」


もう何回使ったか判らない箸を手に取り、悠久に近いこの一分をただ、じっと待


ビシシっ!


そんな音が聞こえそうな鋭い痛みが、突然全身を走った


「ぐわっ!? な、なんだ!!」


次に痺れ。まるで雷か何かに打たれたような感覚だ。いや、実際には打たれた事無いですが?


「い、いやそんな冷静な事を言ってる場合じゃねぇ! な、なんじゃこりゃ~」


痛みと苦しみで、テント内をゴロゴロとのたうちまわる


「ちくしょ~これが新型インフルエンザの威力なのか~」


保険証は先月切れたし、何て俺は運が悪いんだ~


「う~う~あちー!!」


ラーメンが零れ、俺の体を犯す


「あち、あつ!? ぬ、脱げ、脱が、脱がが!」


シャツを破り脱ぎ、テントを飛び出して水道へ駆け寄る


「み、水~!!」


蛇口を捻って水を被ると、温いながら痛みは薄らいでいった


「ふぅ……ん? ……な、なんじゃこりゃ!!」


俺の身体には右肩から左の腰まである、凄まじい傷跡が浮かび上がっていた


これは、おヤクザ様達がサウナで自慢していらっしゃった刀傷と言う物では?


「な、何故? ま、まさか寝ている間にホームレスを狩る若者達に?」


こんな傷を持ってたら、もうサウナに行けないじゃ無いか!


頭を抱え、悩む俺


その俺の耳に異様な音と声が響いた

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